テラーノベル
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早熟期Ω──それがオレの第二性。大っ嫌いな俺のバース性普通は高校で診断されるはずなのに、小学校の高学年でわかった。初めてのヒートが来たその時に
子どものオレにはヒートもΩも意味がわからなかった。ただ、二週間も続く苦しくて熱い地獄のような時間だとしか思えなかった
そう──二週間。
本来なら三ヶ月に一度、長くても一週間で終わるはずのヒートがオレの場合は二ヶ月に一度、二週間も続く。嫌でたまらない時間だ
抑制剤をもらって、薬に頼って押さえ込んでいた。けれどODを起こしてからは、母さんたちに控えるよう頼まれ、別の方法を探すことになった
でも、手遅れだった。ODが引き金となり、薬剤性の臓器不全を発症。フェロモンを体外に放出する臓器は、完全にぶっ壊れた
蛸嶋家のなかでも産まれ損なったうえにΩとしても欠陥だらけ──出来損ないだ
でも今はこの壊れた身体を十全利用しよう
指先がふれたのは触り慣れたゲームのコントローラーでもキーボードでもなくて、初めて入ったラブホのシーツだった
樹──オンラインでの自称は“たこわさ014”、他称は“いっくん”
ベッドの端に腰かけ、足先で軽く空気を探る。視線の先には“たこわさ893”がゆっくりと上着を脱いでいた
その動作が妙にゆっくりで、どこか慣れている。それを見て思わず笑みが漏れた
「やっぱ、893って遊び慣れてるんだな。……期待してもいい?」
軽く言ったつもりだった
けれど、その声はほんの少し震えていた。本人ですら気付かないほどに
893は答えず、ただ歩み寄ってくる。その瞳には、ゲーム中によく見せる意地悪な色が揺れていた
指が頬をなぞり、髪をかき上げ、静かに唇を奪う。
深く、浅く、試すように──けれど乱暴ではないキス。それだけで、慣れない葵の背筋に、ぴりりと電流のような快感が走った
「……気持ちいいとこ、もっと教えてよ」
耳元で囁く声は、キスだけで感じている自分を嘲笑うかのようだった。葵は、逃げるように視線を逸らした
「知らないな、そういうの。オレ、別に……慣れてるってほどじゃないし」
嘘じゃない。けれど真実でもない
燻る熱を発散するため、一人で処理することはあっても──誰かと触れ合ったことは、一度もなかった
柔らかく、けれど確かに二人の体重で沈んでいくマットレスの感触
その上で交わる、熱と身体
フェロモンともバースとも無縁──ただの一夜の夢
触れられるたびに息が乱れ、唇が重なる。胸元からこぼれる小さな声すら、まるで愛されているかのように響いた──偽りでしかないのに
快楽は静かにけれど確実に葵の身体を侵食していく快楽は、静かに、けれど確実に葵の身体を侵食していく。
満たされたい──けれど、満たされたら戻れなくなりそうで怖い。優しくされたら、壊れてしまいそうだった
「ゴムとかいい。女でもないし、優しくしなくていい」
「あの大人しいいっくんがそんな事言うんだ」
優しい前戯のせいで、愛されてると勘違いしてしまいそうになる。それが嫌だった
何度も、何度も、深く突かれる
熱に浮かされた身体は、どれだけ手酷く扱われても快感を拾ってしまう
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