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「でも、この勝負、何したら勝ちになるわけ?さすがに命かけるわけにもいかないだろうし…ねぇ?」
「ん〜、たしかにそうねっ!じゃあ、そこ時間測って!私のマイクを奪えたら勝ちね!わかった?」
「いいわ!ね、里奈?」
「は、はいっ!」
そして…マイク争奪戦が始まった。
といっても、敵側にはララ…幻覚使いがいる。つまり、油断したら幻覚の中へ…
「あ、ちょっと待って。作戦会議させてくれる?」
「え?」
「…ん、まぁ…それくらいは必要よね?いいわ」
「彩って空気を読まないところがあるよな」
「同感」
「ちょっとそこっ!」
彩の厳しい視線が霜月と怜に届く。里奈も少し慌てている。
一時休戦(?)、作戦タイム。
「里奈。勝負はあいつのマイクを取るだけの簡単なこと。でももし、私たちがマイクを取った時、あいつが怒ってどちらかを襲ってくるかもしれない。だから、そのときは私が守る。だから安心して」
「…!安心できました。で、具体的な作戦は?」
「私が高く飛んでマイクを取るから。里奈は気を引いて。わかった?」
「はい!」
再開。
「私はこっちですよぉー」
里奈が気を引く。その間に、彩は高く飛び上がり、マイクを狙う。
「させませんっ!」
ララが前に出る。けれど、彩はララよりもっと高く飛び上がり、愛寿の元へと…
「ちょっと!よこしなさいっ!」
「やだよっ!まだ私負けてないしっ!」
「ああっ!」
すると、マイクが滑り、変な方向…里奈のもとへと…!
「わ、わあっ!」
里奈はギリギリのところでマイクをキャッチし、彩と里奈の勝利…
「許さないっ!私のマイク返しなさいっ!」
愛寿は里奈の方へと視線を向ける。そして、攻撃体制に。なんて諦めの悪い…
「諦めが悪すぎなのよねー?」
「もうー!えぃっ!」
「!」
「危ない」
里奈が攻撃されそうになったところを、彩が間一髪で止める。
「…」
「痛たた…」
「大丈夫ですか?」
彩は高いところからいきなり落ちたとき、足を怪我してしまった…血が出ている。
「すぐ治ると思うから…少なくとも、人間よりは」
「…」
彩は妖怪であるけれど、妖怪ならば誰しもが持っている再生能力が、とても劣っている。それは、過去に何かがあったからなのか、それとも生まれつきなのか…知っているものは誰もいない。
「それより、霜月。あの二人を頼んだわ。仕事でしょ?」
「わかった。後始末は僕と怜がやる」
「ししょー!さ、手当手当」
「鞠。ありがと」
こうしてこの事件は幕を閉じた。
それから数週間経った頃。桜は緑の葉っぱになり始め、初夏の季節になっていた。
そして、そんな日の夕方。里奈は彩の館の前に立っていた。
(この前のこと…お礼言わなくちゃ。助けてもらったんだから)
と、言う思いで里奈は初めてここまで一人で来ていた。
夕方の涼しい風が流れる。背筋がひんやりとする。まるで、ホラー映画のよう…
「そんなところで何してるの?私に何か用?一人なんて珍しいわね」
「ひゃっ!」
いつものパターンで、彩は里奈の真後ろにいた。
「まぁ、中に入って?そろからゆっくりお話ししましょう」
「は、はい…」
〈里奈視点〉
やっぱり一人で来るんじゃなかった…不安だよぉ…
彩さん、妖怪だから当たり前だと思うけど、見た目は私より幼く見えるのに、すごく大人びて見える…
でも、守ってくれたこと、ちゃんとお礼を言いたい…!
「どうかした?」
「え!?いや、なんでも…」
「で、何かしら?私に用があるんでしょう?」
「あの…あのとき、助けてくれてありがとう…ございました…すごく、感謝してます…」
でも面と向かってお礼を言うのって、なんだか恥ずかしいよぉ…
「そう。お役に立てたならうれしいわ。それに、私も里奈に聞きたいことあったし」
「?なんですか?」
「あなたは今、幸せ?」
「えっ」
言葉が詰まる。そんな、急にそんなこと言われても…うーん…
「そんなに悩まなくていいのよ。私はただ、簡単に聞いてるだけ。なんか、現世に戻りたくないのかな〜って思って。だって、里奈、なんだか楽しそうだし」
「…」
戻りたい。そう思わないようにしていた。でも、いざとなったときに聞かれると…
「だから私は考えた。現世と隠世の境界をなくして、自由に行き来できるようになれたらって。もちろん簡単なことじゃないけれど…協力しない?」
「え…」
そんなこと、できるのかな。できたとしても、そんな簡単になるものなの…?
それに、組織の人だって…心の中では、もやもやと霧があるよう。
「今が幸せかどうかは、よくわかんないです。それに、私は別にこのままでもいいかなって。思ったりもして…よくわかんないです」
「…そう。なんだか、里奈といると懐かしい気持ちになるのよね。どうしてかしら…?」
どうしてかな。わかんない。
「じゃあ、もう遅いし…帰りますね」
「そう?暗いけど大丈夫?送っていきましょうか?」
「大丈夫です!」
〈つづく〉