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「彩〜?いるか〜?」
「何かしら〜?あ、今日は霜月なのね」
「?この前の事件の記録をするから、記録帳。どこにあったっけ?」
「ああ、記録帳ね…これかな?ちょっと待ってて」
「それ」
「ああ、これか…そういえば、懐かしいことばかり書いてあるわよね〜?たとえば、霜月がここにやってきたばかりのこととか…そうそう、あの人に勝負を申し込んだこととか…」
彩が笑う。霜月は恥ずかしそうにしている。
記録帳と呼ばれた本は、恐ろしく年季が入っており、いったい何百年前のことまで記録してるのか…
「恥ずかしい…」
「まあまあ、ちょっと思い出してみましょ?時間は恐ろしいほどあるんだから」
「…」
「浅斗紅真!勝負しろ!」
広い山の中で、霜月の声が響いた。
霜月が浅斗紅真と呼んだ男は…とても長身だった。靴は履いておらず、裸足だ。
「えぇ〜?またぁ?怪我するから危ないって、昨日も言ったのに。懲りないんやなぁ」
「…!」
「あと…そこの嬢ちゃん。見てんのバレバレやで?どしたん?前に出でくればええやろ?」
「…わかった」
黒い服に身を包んだ少女ー彩は、ひっそりと前に出る。
「毎回毎回…私の庭で決闘するのやめてくれる!?何回言ったらわかるわけ?」
「またそれか…」
「おかげでいたずらもできやしない…」
「それは別に?こっちも仕事だしなぁ」
「そうだよ」
「隠世一危険な妖怪のことを、見張ってるんやで?」
「…」
彩はそっぽを向く。紅真はなんだか物足りなさそうに見ている。
「さぁ。始めよう。浅斗紅真!今日こそは勝つ!」
「いやいや…何度も言ってるけどなぁ。俺に勝つなんて無理やで?ま、気が済むまでやったらええわ。怪我だけは、せんといてな」
「彩。審判頼む」
「はぁ…?」
呆れる彩を放っておき、霜月は戦おうと術を出そうとする。
「はぁ…しょうがないなぁ?嬢ちゃんと、二人でええよ?」
「は!?私も?」
「うんうん。だめか?」
「だ、ダメじゃないけど…めんどくさい…」
彩は面倒くさそうに前に出てくる。
一方、紅真は日光を遮るように手を顔に置いている。
「はぁ〜。やっぱ俺暑いのと朝は苦手やし、また今度ってことで〜」
「あっ!待て!」
「ここまで来て逃げるんじゃないわよっ!」
必死に呼び止めようとする霜月と彩を背に、紅真は「くくく」と笑いながら山を降りていった。
「はぁ…またか。あいつとはまともに勝負ができない。そこで」
「そこで?」
「彩。協力しろ。返事はYESかはいで」
「拒否権ないじゃん…で?何すればいいの?只働きはきらいよ?」
「わかった…あいつが壊した屋敷の窓塞ぐから。ちょっとあいつを呪ってくれ。たとえば、大事なものをなくすとか、転びまくるとか」
「…ん〜。わかった。じゃあ、あいつをここに連れてきて。写真か実物見ないとダメなのよね〜?」
「はぁ…」
彩の呪いの発動方法。それは、相手の目を見て、心で念じること。それは、実物か写真、またはものすごくリアルな絵。なのだが…
「あ」
紅真は…
「どうしたんや〜?」
「ちょっとしゃがんで。届かない」
「はいはい〜?これでええの?」
じ〜っ
「…」
「そんなに見つめてどうし…あ、札剥がすなって!」
「…❤︎」
紅真は、キメラ。そして、魅了眼の能力を持っていることを…
「忘れてた」
と、いっても、彩も狂わしの瞳の持ち主。さぁ、この二つが合わさったらどうなるのか…
…いや、彩の瞳はあくまでも狂わせるのが専門。魅了はおまけ。ということは…
「ちょ…あー…ほんま、めんどくさいことになったなぁ…」
「彩…ごめん…」
紅真の魅了眼は、たったの0.5秒見ただけでも惚れてしまう。そして、彩はかなりの時間その瞳を見ていた。証拠に、彩はなんだかぽーっと…
「これは…魅了の力が強すぎて、くらっときすぎたんやな…ちょっと邪魔するでー」
「いやここ彩の屋敷…」
「なーんてことがあったわよねぇ〜?」
「…」
「あのときの霜月は今よりも戦闘に積極的だったし」
「組織に入りたてだったから、強くなろうと…」
記録帳に記録をしながら、思い出話をしていた二人は、なつかしそうにしていた。
バタン
「お、久しぶりやなぁ〜?」
「噂をすれば、浅斗紅真!」
「?いや、最近妖怪が活発だから、組織の方から見張りに行けって言われたんやけど…」
「あぁ。なるほど。よかったわねー、霜月、また勝負してもらえば?」
「…いや、遠慮しとく。それより…」
霜月がさらに年季が入っているような本に手を伸ばす。表紙には、五芒星の印が付いている。
「…!霜月、その本は…」
「え?」
ばひゅん
その本から光が出、その光が落ち着いた後、その場には誰一人いなかった…