テラーノベル
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自室のドアを閉め、ベッドに倒れ込む。
カバンを横に放り出して、両手で顔を覆った。
「……たまたま会っただけ、なのに」
亮にからかわれた言葉が頭から離れない。
否定したはずなのに、心臓はさっきよりも速くなっていた。
思い返すのは、信号の前で交わした短い言葉。
「気をつけて帰れよ」――たったそれだけ。
けれど、その声音が今も耳に残っている。
妹としての気遣い。
そうわかっているのに。
胸の奥では「それ以上」を期待してしまう自分がいる。
咲は枕に顔を埋め、熱くなった頬を隠した。
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