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ほしのはな
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#ご本人様とは一切関係ありません
noa.

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#さのじん
さき
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なんか、弱ってるなって思った。それだけだった。
いつものように名前を呼んだら少しだけ揺れた肩。なかなか振り向かないから、気になってそばまで行って顔を覗き込む。メイクで綺麗に仕上げられた顔も、素顔にはきっと濃いクマが浮かんでいるはずだ。
じっと下から見上げられて、なんだか慣れないアングルに少しだけ戸惑う。疲労が浮かぶ瞳の奥に、何かを求めるように射る強さが見えた気がした。すっと差し伸べられた手の意味を図りかねて、少し考えて、声をかけたのは俺だしなと自分を納得させてその手を取った。
「わっ」
思ったよりも強い力で引き寄せられる。ボスン、とソファの上に落ちたかと思えば、次の瞬間にはなぜか勇斗に抱きしめられていた。
ん?思ってたんと、ちがうな。
「…てっきり枕にされるのかと」
よくて肩、最悪膝でも使われるかと思えば予想外の行動だった。悔しいくらいに、勇斗の腕の中にすっぽり収まってしまう自分。行き場に迷う自分の両手は、なんとなく勇斗の背中に下りた。こんなにデカくて暑苦しい体が、なんだか今だけは小さく感じる。お前より一回りは小さい俺に寄りかからないといけないくらい、今お前は疲弊しているんだろう。自分でも気づけないくらい。いつだって誰かのために全力疾走ができるのはお前の良いところですごいところだけど、たまに心配になるよ。そう言いたいけど、何を分かったような口を、と思う自分もいて、臆病が邪魔をして上手く伝えることもできない。ただ、心配で、大事なだけなのに。こんな簡単なことすら言えない自分が情けなく思う。
「お前あったか」
ふいに耳元で響いた声は少しだけ笑っているような気がした。そのことに少し安心する。
「はいはい、どうせ子供体温ですよ」
そういって見よう見まねでなんとなく勇斗の背中を叩く。できるだけ優しく、そうだ、ポンポンだと言い聞かせながら。そうしたらふっと勇斗の力が抜けたような気がした。服に覆われていない俺の首筋にぴたりとあたたかい感触が触れる。慣れない感触に思わず変な声が出た気がする。
「ひっ、ちょ、くすぐったい」
「言いたかないけどこの前抱っこした子役の赤ちゃんと同じ感触なんだけど」
なんだこいつ、ほんとに元気なかったのか?まさかフリか?と思ってしまうような口ぶり。ムッとして少し体を離そうとするとそれ以上の力でより抱きすくめられて、あろうことか首筋に頬擦りをされた。
「きしょ、ちょ、すりすりすんな!」
吸い付くような肌の感触と、生温かい他人の吐息の温度にぞわぞわと背筋が戦慄き勇斗の背中をできる限りの力で叩いた。昔はよく俺を猫可愛がりしてたけど、そんな時だってこんなこと滅多にされなかったのに。この歳になってこのムーブは、やっぱりコイツ今相当疲れてるのか…?とさっきとは真逆の思考に吸い寄せられる。
「はあ〜、認めたくね〜」
認めたくないって、何をだよ。俺だって赤ちゃんと一緒とか言われても別に嬉しくないんだけど。てかこのハグタイムはいつまで続くの?甘えてくれるのはまあ良いとして、成人男性2人がいつまでもこの状態ってちょっと結構かなりおかしくね?俺の頭の中はそんなことばかりなのに、勇斗は一向に俺を離す気配がない。もしかして、いやまさか、呼ばれる1時間後までこの状態ってことはないよね?と些か不安すら感じる。でも、最初に声をかけた時よりは、少しリラックスしてくれてるような気もする。まあもしそうなら、少しは意味はあったのかな。
このアクセル全開男を、俺はいつだって信頼している。走って走って走りまくって、なまじ体力があるもんだから走る続けられてしまうその姿を見るたび、俺は悩む。もっと休んで良いのに、本当に大丈夫なのか、しんどいって感じられているのかって。こんなの、俺がただ勝手に思ってるだけ。勇斗はそんなふうには思ってないし、思ってほしくもないかもしれない。付き合いが長いからってなんでも知った風な口を聞かれるのだって、本当は嫌かもしれない。優しい勇斗はそんなこと思ってても言わないけど、言わないって分かってるけど、それでも俺の臆病はそんな情けない妄想ばかりを掻き立てる。でも、それでも、俺は思ってしまう。勇斗が大事だから、ずっと幸せそうに笑っていてほしいから。
「…勇斗がずっとアクセル踏んで頑張ってるの、俺は邪魔したくない。でも」
言葉では伝えきれそうもないこの想いが、隙間なく抱きしめられた身体から伝わってしまえばいいのに。
「俺は、お前が大事だから。俺のエゴで、お前のブレーキ踏んじゃうよ。どうしても」
そう。これはただの俺のエゴだ。俺の大事なものに傷ついてほしくない、苦しんでほしくない、いつだって幸せでいてほしいっていう俺のわがままにすぎない。
「それが正解なんだよ。お前のわがままは、俺しか聞けないでしょ」
ふっと小さく笑ってそういう勇斗。あーあ、やっぱりお前は優しいよね。そうやって、俺のわがまま叶えてくれる。どうして勇斗はこんなにも、俺の拙い心の奥まで見透かしてしまうんだろう。
「んー、なんかムカつく」
そうやっていうのが精一杯だった。
「俺は前しか見れないから、それしかできないから。グループのためだとか言っといて、突っ走りすぎて振り返ることを忘れる。俺ばかり気持ちが急いて、お前らがどんな顔してるかなんて、見る余裕もなくなる時がある」
知ってる。でも、そんな勇斗がずっと先頭を切って俺たちを引っ張ってくれたから、俺たち、頑張れるんだよ。
「…でも、お前がいる」
その言葉と一緒に、さらに強く抱き締められた。もう、これ以上は勇斗に溶けてしまいそうな距離。
「お前がいないと、俺は安心して走れない」
ずしん、と心臓が鳴った。喉の奥が焼けるような感覚だった。
ねえ勇斗。俺、いつも頑張るお前に何かしたかった。なんでも良いから、お前にとって意味のある人間になりたかった。そうやって、胸を張ってそばにいられる人間になりたかったんだ。
「何があっても、俺のそばにいるって言って」
コイツは俺の心が読めるのか。長く一緒に良すぎて、常人離れした能力を手に入れてしまったのか。
俺のほしい言葉を、恐ろしいくらい的確に、ど真ん中に撃ってくる。
「……重いよ」
「そうだよ。こんくらい重い重石乗せとかないとお前逃げそうだし」
逃げるわけないのに。
「例え逃げられたとして、お前追いかけてくるんでしょ?」
「当たり前じゃん」
「こわ」
その言葉には、隠しきれない嬉しさが滲んでしまったと思う。
勇斗にとってそうやって繋ぎ止めておきたい人間に俺はなれたんだなって。
「何があっても、勇斗と一緒にいる」
そう滑り出た言葉は驚くほど素直で、自分でも驚いてしまうほどだった。
勇斗が息を呑むような音がしたと思ったら、いきなり体を離されて、信じられないものを見るかのような顔でじっと見つめられた。なんだよ、お前が先に言ったくせに。
「見んなよばか」
そこで初めて、なんだかとんでもないことを言ってしまったと気づく。居た堪れず外した視線を追うように、勇斗はなんども俺の視界に入ってこようとする。
「やば、キスしちゃいそう」
そうやってわけのわからないことを言った。なんかもう元気じゃん。
「絶対ヤメロ」
「じゃあもっかい目見て言って」
「じゃあってなに?接続詞合ってないよ」
馬鹿言え二度も言うもんか。必死に逃れようとする俺の肩をものすごい力で固定して、刺すような目線でじっと俺を見てくる。やめてくれ、怖い。こうなった勇斗は頑固だと知っている。基本的に相手ファーストなのに、時々こうやって何がなんでも譲らないモードになる時がある。なんで今。
キリがないと早々に判断し、早くこの状況から脱するためにも俺は意を決した。
「何があっても勇斗と一緒にいるってば」
よし、言った。ちゃんと目見て言った。よくやった俺。もういやだ、帰りたい。離してほしい。
「うん。やっぱチューする」
そんな俺を労るどころか、重ねるように追い打ちがかかる。
「なっ、なんでだよ!」
俺の頑張りはどうした!?ってかやっぱお前もう元気だよね!?
精一杯の力で勇斗を押し返すけど全然動かない。むしろどんどん押されて、俺の自慢の体幹も呆気なく倒れていく。ぼすんとソファに背中がついた。ちょ、っと、待って。これは聞いてない。
「ちょちょちょ!もう元気じゃん!じゃあもういいよ!」
「いやいや、最後まで責任とってよ」
「もう治ってます!大丈夫ですよ!」
「治療の副作用で胸が苦しいです。どうにかしてください」
馬鹿みたいな押し問答。冗談じゃない、いや、冗談だと言ってくれ。どうしてこんな、見たこともないような目で俺を見てくるんだ。
「〜勇斗!」
思わず大きな声が出た。いくら二人きりだからって、こんないつ誰がくるかもわからない楽屋で、こんな状況は汗しか出ない。
「俺のそばにいる限り、お前はこれを避けて通れないけど?」
怖いくらい真剣な眼差し。驚きと、恐怖と不安と、どうしていいのかわからないのとで、自分の喉の奥から聞いたこともないような音が鳴った。熱くなる顔から、汗が吹き出しそうだった。
「…そこは俺の範囲じゃないでしょ…」
そうだよ。間違いすぎる。いや、勘違いだと言ってくれ。俺は、きっと違う。
「お前だよ、ずっと前から」
その言葉の意味をわかりかねて、いやそんなわけないと自分に言い聞かせて、そうしたら何故だか悲しくなって。わけがわからなくて、視界がじわりと濡れる感覚がした。
「ありえない。あっちゃいけない」
「なんで?ありえちゃってるんだけど」
馬鹿言うんじゃないよ。お前は、この世で一番いい旦那になるし、良い父親になるんだぞ。そんな未来を、絶対に遠ざけちゃいけないんだ。
「お前はいつか結婚して絶対いい旦那になって良い父親になるでしょ」
「良い旦那にはなるよ、将来は国民の父親目指してる」
何馬鹿なこと言ってんの。疲れてるからって、血迷いすぎだ。
「馬鹿じゃないの」
思ってること全部、勝手に口に出てしまう。
「馬鹿だよ。お前が好きでどうしようもない馬鹿」
きゅっと心臓を握りつぶされたようだった。苦しくて、眉間に皺が寄ってしまう。
そんなの嫌だ。俺は、勇斗には世界で一番幸せになってほしいのに。
「観念して、仁人」
揺れる視界いっぱいに勇斗の顔が広がった。まつ毛が触れてしまいそうな距離。唇に感じた熱だけがやけにリアルで、熱くて。こんなの耐えられない、と現実から目を背けるように瞼を閉じた。
嫌だ、こんなの、跳ね返さなやきゃ。何すんだバカって怒鳴らなきゃ。じゃなきゃ、俺のみたい勇斗の幸せな未来が崩れてしまう。そう思うのに、どうして俺はこの手を振り解けないんだろう。
唇の熱が離れて、ゆっくりと瞼を上げる。目の前にある勇斗の顔は、唇の熱が溶けたようなどろりとした温度を纏っている。
「言ったじゃん。逃げられないって」
吐息が触れる。知らない勇斗の声。
「こう言う意味とは聞いてない」
「全部だよ。何があってもって言っただろ」
言ったけどそうじゃないでしょ。
「詐欺だ」
そういって涙が溢れた。こめかみを伝って流れていくのを、勇斗の節くれだった指が追いかける。
「そうやって戸惑っている気持ちごと、お前の全部俺が貰うから」
やめろ、だめだ、そんな目で、声で、言わないでほしい。
俺はどうやったって、お前を拒否することができないんだから。
「俺もずっと、仁人と一緒にいる」
そうやって俺に容赦なくトドメを刺すくせに、何かを必死に願うような瞳で見ないでほしい。
ぐっと近づく距離。もう一度、と問いけかけるような熱い息。何もかも、熱くて張り付くようで、勇斗が吐く息でしか呼吸ができないかのような錯覚に陥る。もう、だめだ。逃げられない。ここでなきゃ、息ができないかもしれない。馬鹿みたいだ、でも、跳ね除けることもできない。
その瞳に見つめられることが耐えられなくて、俺は白旗を揚げた。ゆっくりと瞼をおろし視界をシャットアウトする。唇を硬い指の腹で撫でられて、次の瞬間にはまた熱い感触が乗る。さっきよりも鮮明で、生々しくて、体が固まってしまうようだった。感触を確かめるように、勇斗の唇が何度も押し当てられては離れていく。そのうち湿った感触に唇を突かれて、驚いて目と口が開いてしまった。
「んっぅ!?」
その一瞬の隙に勇斗の熱い舌が俺の口の中に潜り込んできた。とんでもない刺激にパニックになり慌てて勇斗の胸を押すけどビクともしない。勇斗は薄く目を開いて、無遠慮に俺の口内を弄くり回している。舐められたことがない場所を我が物顔で舐められて、背筋が震えるような感覚が怖くて余計に涙が溢れた。ちくしょう、ふざけんな、こわい、ぞわぞわする。
「仁人、かわいい」
わずかにできた唇の隙間からそう囁く。毒のような粘度の声。全身がぞわりと震える。
「ん、や」
「こんなに許しちゃって、かわいいね」
いつものイジリと全く違う性質。とにかく重たくて甘ったるくて、どうしていいかわからない。
「やめ、こんな」
「お前の舌気持ちいいね、小さいのに柔らかくて」
「っ!」
「ここが楽屋じゃなきゃ、もっとできたのに」
そういってもう一度口付けられた。今度は触れるだけの短いキス。
「言っとくけどこれが全部じゃねーよ?ほんの一部よ、覚悟しといてね仁人」
そう言って腕を引いて体を起こされる。向かい合う形でソファに座らされれば、最初に声をかけた時とは別人のような表情の勇斗がいた。
「信じらんない、アホ、バカ」
「うん、ありがと」
「なんで?まじで信じらんない、」
ショートした思考回路では同じ言葉を繰り返すことしかできない。最早逃げる気力も削がれて、ただただ勇斗に向き合うことしかできない。
「大丈夫。これから、いやってほど思い知らせるから」
やけに嬉しそうな勇斗の声。俺はただただ聞こえないふりをして、今は油を差し忘れた壊れたブリキのような体をなんとか元に戻すことだけを考えた。
コメント
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初めまして。拝見させて頂き、🩷💛の関係性にときめきました🥰真っ直ぐで自分に正直な🩷さんと、リアリストで、相手のことを中心に考える💛さん。お互い必要で大事。+独占欲(🩷)最高です。素敵なお話ありがとうございます😭
言葉に表せる語彙力がないのが悲しいですが… とっても最高です! 切ないけどトキメいて、キュンとして、2人の気持ちが伝わってきて、幸せがジワーっと広がって…大好きでした!!
こんにちは、美月ゆめかです🌸 読んだよ〜!!「もう逃げようがなく」、もうね、最初から最後まで心臓ぎゅうぎゅう掴まれっぱなしだった😭💕 仁人の「勇斗に幸せになってほしい」って気持ちと、勇斗の「逃げられない」って執着が交差する感じ…尊すぎて泣く!! 特に「お前がいないと安心して走れない」からの仁人の覚悟シーン、エモすぎて何回も読んじゃった…! この第1話で既に沼確定、続きが待ちきれないよ!! 久遠さん素敵な作品をありがとうございます✨