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#極道
鷹槻れん

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歩きながら恐る恐るお二人のお顔を見比べてみたけれど、健二さんは戸惑う私を時折振り返り見ては笑われるばかり。修太郎さんはそんな健二さんとは対照的に、素知らぬ顔で澄ましていらして……。でも決して私の手はお放しになられなかった。
こちらを一向に見ようとしてくださらない修太郎さんに焦れて、私はそっと絡められたままの修太郎さんの手を引っ張る。
「あの……しゅ、塚田さん?」
一応健二さんの前ではあるし、何となく職場モードで苗字をお呼びしたら、健二さんにクスクスと笑われてしまう。
そんな健二さんを一瞬睨み付けると、修太郎さんが「日織さん、いつものように修太郎と……」とおっしゃった。
確かにお二人とも私のことを先ほどから下の名前で呼んでおられるし、恐らく今はお仕事中ではないからそれでいいんだとは……思う。思うけれど、やはり高橋さんだとずっと思っていた方の前で――ましてや仮にも許婚である健二さんの前で――その呼び方でいいのかな、とか考えてしまって、私は思い切れずに躊躇する。
さっき、修太郎さんに肩を叩かれたときは、咄嗟のことで思わずお名前を口走ってしまったけれど、あの瞬間、私は健二さんの存在には気付いていなかったのだ。
どうしていいか分からず、思わず立ち止まって、オロオロと視線をさまよわせたら、「日織さん。今更そんな鯱張らなくても大丈夫ですよ。俺、兄さんから聞いてお二人のことは概ね知ってますし。その俺がいいって言ってるんですから堂々と呼んでやればいいんです。貴女がそんなだから兄さんだって俺に対して――」と続けようとしたところへ、修太郎さんが「健二、要らないことは言わなくていい」と遮っていらした。
(私がはっきりしないから、修太郎さんが健二さんに対して何かしてしまっているのでしょうか?)
修太郎さんのお顔を下から見上げてみたけれど、修太郎さんは何もおっしゃらなかった。
***
「ほら、予約の時間が近いですし、あの人は待たせると後が怖いので、急ぎますよ?」
腕時計をちらりと見られた健二さんが、膠着したままの微妙な空気を断ち切るように、そうおっしゃった。
言うなりさっさと歩き出してしまう彼の後に続いて、修太郎さんが「行きましょう」と手を引いてくださる。
(いつも飄々としていらっしゃる健二さんを、こんな風に慌てさせてしまう人って、一体どんな方なんでしょう?)
ふとそう思って修太郎さんの方を見たら、彼も同じことを思われたのか、パチリと視線が絡んだ。
さっきからなかなか私の方を見てくださらなかった修太郎さんのお顔を見て、何だか照れてしまう。
色んなことに一杯一杯で今まで気が回らなかったけれど、スーツ姿の修太郎さんはとてもかっこ良くて……。
私は修太郎さんに手を引かれて歩きながら、絡み合った視線を彼から外せなくなる。
「……日織さん」
そんな私から先に視線を逸らされたのは修太郎さんで。
「そんなに見詰められると照れてしまうのですが。……ひょっとして、僕の顔に何か付いていますか?」
照れ隠しか、視線を上方にかわしながら鼻の頭を掻かれる修太郎さんの仕草が愛しくてたまらない。
私はいそいそとかなり先を歩かれる健二さんをチラッと盗み見てから、修太郎さんの手をほんの少し引っ張った。そうしてちょっと背伸びをすると、それに気付いた修太郎さんが気持ちかがんでいらした。
私はそんな修太郎さんの耳元に、早口で「修太郎さんのスーツ姿、凄くかっこいいです」と告げる。
修太郎さんは一瞬固まったようになられてから、「……ちょっ、その不意打ちは……ずるいです」と耳まで真っ赤になさった。
「日織さん、兄さん、早く来ないとエレベーター来ちゃいますよ?」
そんな私たちに、早くもエレベーターホールに到達した健二さんが声をかけていらして……。
私は修太郎さんと顔を見合わせる。
健二さんの方へ歩を早める寸前、今度は修太郎さんが私の耳に唇を寄せて、「日織さんも今日のワンピース、とてもお似合いです。あまりに可愛らしくて、逆に脱がせてしまいたくなります」とおっしゃった。
今度は私が、修太郎さんの吐息を感じた耳を押さえて真っ赤になる番だった。
コメント
2件
初々しい2人🤭
ああ、もうこの回めちゃくちゃ良かった…!健二さんの前で修太郎さんのことどう呼ぶか悩む日織さんの心情、すごく伝わってきたし、あの耳元で「脱がせたくなる」って不意打ち反撃される修太郎さん、ずるいわ〜こっちまで照れる!普段ああいうこと言わなそうな人がたまに見せるギャップに弱いんだよな。ラブコメとしてのドキドキ感、しっかり味わわせてもらいました!続き楽しみにしてます🔥