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はじめに
この作品は《二次創作》であり、
実在する人物・団体・作品とは一切関係ありません。
☆本編第41話・42話を視聴し衝動書きしたものとなりますので、 当作品は中度の残酷描写(=公式の展開から予想される程度の手術情景)を中心に据えています。
☆公式ドラマCD発売前に書いた作品ですので、公式の描写と大いに矛盾する点がございます。
また、当作品は犯罪行為・自傷・自殺行為を助長・推奨するものではございません。
以上を予めご了承の上、お進み頂くようお願い申し上げます。
❌転載、シェア等禁止❌
❌読後クレームお断り❌
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───大統領も無茶を言う。
死者の能力を活用しろ、だなんて。
確かに理論上不可能ではないけれど、それにしたって突然で。言葉足らずで。
「……折角なら、もう少し説明が欲しかったな。」
と、つい不満を零してしまうのも無理はない……はずだ。
「まあ、逆に助かったかもしれないけど」
ふと、あなたを見やる。
ぼろぼろで、意識のないまま、ただ波打つ心臓の鼓動だけのある、あなたを。
目も開けず、口も動かさず、僕の言葉なんてひとつも聞いちゃいない、あなたを。
「───ようやく、あなたに再会できるかもしれないんだから。」
ほんとうは。
能力を司るパーツだけをもらって。あとは全部、できるだけ、あなたをあなたのまま使いたかった。
「……人間って、脆いんだね。」
“うん。本当に……脆いね。”
過去のあなたの言葉を反芻しながら、慎重に歩を進めていく。
ただ、それにも限界があるのだと。あなたの身体そのものが、けたたましく鳴るサイレンのように、ひたすらに僕の奥のほうを刺してくる。
「まいったな。思ったより損傷が激しい」
メスを入れる手がひとりでに躊躇した。
こういう一瞬の隙に、果たしてどれほどの価値や、可能性があったのかも知らず。
……止まっている暇はない。
あなたの身体は、もはや手術に耐え切れる程の体力も残っていないらしいのだから。
大丈夫。“黒ガヴ”の移植さえ成功すれば、きっとあなたは動けるようになる。
以前のように、きっと。
「……ああ、そうだね。約束したはずだ。あとは僕に任せて、って。」
───そう。ついでに、あなたの夢も叶えてあげられる。
「この能力さえ手に入れば、あなたは、遂に夢見た最強の生物になれるんだよ。」
そんなの、嬉しいに決まってる。
あなたがずうっと語っていた理想に、願いに、夢物語に、他でもないあなた自身がなれるのだから。
きっと僕のこと、今までよりもっと認めてくれるはず。そうしたら───。
「そのためにも、最善を尽くさなきゃね」
くく、と笑いを零しながら眼鏡をなおす。
輝かしい未来へ向かおう。勿論 、あなたと一緒に。 最強になったあなたと、僕で。
「手術は成功したよ。」
自分でも驚くほどの、冷淡な声が響く。
「───成功した、けどね。」
手術台に横たわったあなたの腹部には、ちゃんと僕の移植した”ソレ”がついている。
ただ、代償と言うべきか。
「……あと少しだったのに。」
ほんとうは。
能力を司るパーツだけをもらって。あとは全部、できるだけ、あなたをあなたのまま使いたかった。
「……仕方ない。途中でダメになったパーツも多いし、もう少し調整しようか。」
大統領からの提供品は、死者だった。
死者はふつう、蘇ることはない。
だって機能が停止して、もうとっくに固まって、腐り落ちてしまっているのだから。
どんなにきれいに保存していたって、もう何日も、何ヶ月も前に死んでしまった死骸なら、復活の見込みなんてゼロに等しい。
だから、特定の必要な部位だけ頂戴して、だれか生きた身体に移植するのが、最善の活用法だと思っていた。
でも、まだ。
“たった今、死んだ死者”なら、間に合うかもしれない。
間に合わせる。間に合わなかったら、また別の策を考えるだけだ。
「───あなたを本当に失ってしまうなんて、嫌だからね。」
たとえどんなにぼろぼろでも、たとえ出来栄えが脳みそひとつになっても。
それでもいい。あなたがいい。
───“あなた”でなければ意味がない。
「あなただって、もっと“マーブル”な方が嬉しいでしょ?」
あなたの身体は、驚くほど簡単に崩れた。
引っ張っただけで“ずるり”と抜け落ちる脚なんて、流石の僕でも初めて見たと思う。
「これは……想像以上だな。」
同じように、左腕も。
───あなたの利き腕なんて、いちいち覚えちゃいないけれど。大抵の人間はふつう、右利きの方が多いらしい。
「まあ。その“ふつう”如きが、あなたに適用されるとは到底思えないけど。」
どうせ、お釈迦になってしまったならそれまでだし。僕は気にせず、この調子で、ダメになってしまった部分を探して取り除いてあげればいい。
「安心してよ。そのぶんだけ、新しい身体をつけてあげるから」
───きし、と台の軋む音。
すっかり暗くなった手術室。色覚の鈍ったモノクロの視界で、泥のように濁ってしまったあなたの瞳を見下ろした。
おはよう、僕の永遠の友達。
「おはよう、――さん。」
愛を込めて。
“あなた”とは似ても似つかぬ、
僕だけの傀儡のあなたへ───。