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あれからも、めぐり来る日常は変わらない。
夜になれば、窓際に体を預けて、夜空を眺めている。
最近では、ローレンが僕の部屋に来て一緒に紅茶を飲みながら、他愛もない話をしながら過ごす。ローレンと話している時だけは、あの時のように子供に戻れたように思える。それでも、僕の中では母と共に過ごしたあの場所にき戻りた気持ちは一向に変わっていない。あの男は何を考えているのか、分からない。……なんで、10年以上もほったらかしていた子供を王宮に戻したのか。それをローレンが知っていても、彼は僕の気持ちを優先して言うことは無いだろうし、今更知りたいとも思わない。ただ、怖いのは、現王妃である。腹いせなどをしてこないことを願っている。それに、何故か偉くあの場で怯えていたのはなんでなのだろう。少し気になってしまう。
「なんで、あの人はあの時酷く脅えていたんだろう?」
「それは私めも分かりませぬ。ころん様がこちらにお戻りになってからは陛下の仕事は別の者に任せましたので」
「そうなんだね。……めんどくさい事にならないといいんだけどな〜」
僕はローレンが淹れてくれた紅茶のすすりながら、また窓の向こうに輝く星を見つめた──。
あの事件から、はや1ヶ月半が経った。
最近では、使用人のみんなと一緒に仕事もしている。それは自分からお願いしたこと。前の時から【働かざる者食うべからず】という教え?で生きてきたから、なにかしていないと落ち着かない時がただあったから、こうして、僕がいる範囲だけはやらさせてもらっている。たまに、みんてが申し訳ないって顔をしてるけど。僕は気づいていないふりをして、仕事に励んでいる。
そんなある日。
「それで……」
何故かまた、僕は豪華な装飾品で飾られた部屋に呼ばれた。今回は着ずらい正装ではないために、ストレスを感じることは無い。
しかし、周りを見渡すと、どうやら、みな揃っているようだ。一応部外者の僕を呼ぶ必要はあるのだろうか?そんなことを考えていると声をかけられる。声をかけてきたのはピンクの髪にフローライトの瞳の青年だった。
「話聞いてんのか?」
何故か喧嘩腰で。
イラッとしながらも、僕は笑顔を貼り付ける。
「すみません、少し考え事をしていたのもでしたので、不快にさせてしまったのでしたら、申し訳ありせんね」
「あ”あ”、お前……!」
「さとみ!!!」
「!?……申し訳ありません……」
さとみと呼ばれた青年が僕を殴りかかったその時、陛下が止めに入った。
「お前の兄になんということをする!」
「はぁ、こいつが兄だって?俺たちの兄はななもり兄さんだけだろ!こいつになんの価値があるっ……!!」
「陛下、さとみが大変失礼なことを申しました。ころん様もご不快な思いをさせてしまい…… 」
「ああ、僕は全然大丈夫ですよ。この人たちにすれば、僕は他人同然ですしね」
僕が真顔で告げる。すると現王妃の顔色はますますと悪くなる。自分の過去の罪を深く自覚しているみたいだね。それに貴女がかけた呪いも既に消されていることにも気づいているように見える。だけど、なぜそんなに怯えなければならないのだろうか?僕はそこに疑問を覚える。
それから僕は、陛下の方へとまた視線を戻す。
「それで、お話とはなんですか?僕が使用人の仕事をしていることを咎めるようなことでしたら、これは僕自身の意思で行っている事ですので、まわりに要らぬ罪を与えた場合は、この城から出ていきますから。本当のことを申してもいいのなら、今すぐにでも、この城から立ち退きたいのに」
僕の発言に他の人たちは目をむき出すような表情である。ローレンだけは呆れた溜息を吐いていたけど。
「ころん様、皆さまが驚くような発言はお控えください」
「ええ〜なんで?全て本当のことだよ?」
「そうだとしてもですよ!!!バカ坊っちゃま!」
「ああ!馬鹿ってなんだ!?」
「正直なことを申した迄ですが?ん?」
「チッ……わかったよ。次からは気おつけるよ」
「分かればよろしい。陛下話の続きをお願い致します」
「あ、ああわかった……」
咳払いを挟んで、陛下は本題を話出した。
「ころん。……お前とを願っていたこと叶えてやることはできない……」
「はぁ?それはどういう……」
「そのままの意味だ。お前をあの村へと返すことはできない。もう、お前たちが住んでいた住宅も全て売り払っている」
その言葉に僕は信じられないでいた。
「……んなっ」
「なんだ?」
「ふざけんなって言ってんだよ!!」
僕はとうとう堪忍袋の緒が切れた。
「なんで僕が、お前の都合に合わせて全てを無くさないといけないんだよ!!あの時もそうだろ!母さんではなく、地位が高い現王妃を選んだ。母さんは貴族の闇を知ってる人だから、その場では『かしこまりました』って、言っていたよ。でも、お前がいない場であの人は酷く悲しんでいた。お前に母さんの苦しみがわかるはずもない!そして、今度は僕の人生狂わし、壊すのか?」
「そんなこと……」
「じゃーなんなんだよ!!お前の身勝手な行動で僕たち親子は苦しめられてきたんだ!ああ、わかっているよ、あなたの考えも、それでもわ赦せるわけが無いだろ!」
僕の悲痛の叫びに、誰もが言葉を失い、その場で固まっている。僕はそのままローレンの手を引きく。部屋を退出していく。
ローレンは何も言わずにただ、静かに僕の手を優しく包み込んでくれる。その優しさに涙がこぼれ落ちる。
そして、僕の帰る場所が無くなったのだと実感してしまう。もうこの嫌いな場所しかないのだと、思うと反吐が出る。
(ああ。……死にたいな……)
*
あれから僕は城にいるのが嫌で、城下町行っては、そこで受かったパン屋で働いている。今は、そうしていないと壊れてしまいそうだから。
ローレンも僕の考えに賛成してくれ、今は城下町に二人ぐらいで生活できるほどの家を借りた。ほとんどは僕が一人で住んでいるような感じ。ローレンも仕事がない日や休みの日などは家に帰って来て、一緒に過ごしている。
「ロン。このパン出来上がったか」
「あ、わかりました!!」
今は、城で知り合った文官の一人ヒーリア・ホワイトの実家のベーカリーの仕事を紹介してもらい、働いている。
「ねぇねぇ、ロンくん?」
「ん?どうしたの?ああ、このパン今日売れ切れちゃって。でも、こっちの今日の僕オススメだよ!」
僕は常連の少女にそう言う。
すると、少女は悲しそうやった顔を明るくさせ「なら、私それにする!」と可愛らしい笑顔をこちらに向けながら言う。
僕も微笑む。
今はあそこにいた頃よりものびのびと過ごしている。仕事にもせいが出るしね!
「さぁ、じゃんじゃん売って行くわよ!」
「はい!」
涼しい夜風が頬をかすめる。
「涼しいね〜」
「そうですね。城の方はころん様を必死に探しておりますよ」
そうなんだ〜。っと興味なさげに僕は隣にいるローレンとヒーリアに言う。
「陛下はすごく慌てておいでです」
「……」
そう、あの日。
僕は親しい人たち以外には告げずに城を出た。
何かが僕の中で途切れた。
もう、あの城に戻ることはないだろうな。それでも、父親心からの発言だったのかは、今の僕にでも分からない。
でも、どこかで胸騒ぎがする。
なんてだろう──。