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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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教室のドアがガラッと開いた。

直後、転校生と思われる生徒が教室に足を踏み入れる。女子だ。長くサラサラとした髪をなびかせ、落ち着いた様子で歩く。…横顔だけでも思わず、「綺麗だ」と、思ってしまった。僕はすっかり、視線を釘付けにされてしまう。みんなも同じなのか、誰も何も言わずに、ただ転校生を見つめている。静かな空間だった。

ようやく口を開いたのは、「彼女」だった。

「……こんにちは。」

おっとりとした口調で、彼女は言った。

「自己紹介、よろしく。」

隣にいた山田先生がそう言うと、彼女はこくりと頷き、口を開いた。




「岡野 千里です。」



「────え?」


岡野……だって?

ドクンッ、と心臓が跳ね上がる。

いやいやまさか、たまたまだろう。だって、そんな、僕が〝殺した〟、「岡野大河」の娘が転校してくるなんて……。そんなアニメやドラマや小説じゃないんだから、そんな事あるはずない。うん。たまたま。たまたま同じ苗字なだけ。僕は必死に僕を説得するも、一瞬で「たまたま」という可能性は潰れた。



「母も父も死んでいるので、親はいません。ちなみに父は人を轢き殺しました。そんな父の娘ですが仲良くしてくれる方はよろしくお願いします。」



クラスの雰囲気が凍りつく。

隣にいた先生までも、顔がひきつっている。

だってふつう、転校初日でこんな自己紹介をする人がいるだろうか。いや、今はそんなことどうだっていい。


彼女の名前は岡野千里(おかのちさと)、父と母は他界、しかも父親は人を轢き殺して死んでいる、だって?こんな偶然あるのか?

いや…偶然なんかじゃない。

彼女は、僕が殺した〝岡野大河〟の娘だ。

僕の勘が、そう言っている気がする。

彼女は先生の指示のもと、僕とは反対側の、廊下側の1番後ろの席に座った。良かった、離れた席で。席まで近くなったら、授業中も、授業どころじゃなくなってしまう。

「え〜それでは、本日から岡野が転校してきたということで…」

山田先生がなにか喋っているが、僕の耳には入ってすらいなかった。視線だけを千里に向けて、彼女をジッ、と見つめていた。

そんな僕の視線に気がついたのだろうか。


「あっ…」


千里と目が合った。


美しい瞳で、思わず見惚れそうになった僕だが、よくよく考えれば、転校生の女子を見つめているただの変態野郎に過ぎない。それに、見つめすぎていてなにか思われちゃ困る。とりあえず、彼女には関わらないようにしないと。僕はニコッ、とぎこちない笑顔を作って、スっと彼女から視線を逸らした。

気まずさより、焦りの方が勝っている。今のでなにか思われただろうか…。


「おいおい!!」

HRが終わるなり、隆雄が振り返って僕に話しかける。

「転校生、めっっっっちゃ可愛くね!?」

目をキラキラさせながら、興奮したように言う。いいなぁ、そんなふうに思うだけで。僕の置かれている状況と交換して欲しいくらいだ。

「岡野千里ちゃん……だっけ?」

「うん、そう言ってたね。」

「メッッチャ可愛いけどさ……。ちょっと変わってるよな?」

「変わってる、って?」

「いや、だってふつう転校初日、しかも自己紹介で『父親は人を轢き殺しました』とか言うか?ふつう。いや、ジョーダンか?」

「冗談じゃないよ…」

「へ?」

「あっ、いや!なんでもない…」

反射的につい本音が出てしまった。

そうだよな…。傍から見れば可愛いっちゃ可愛いけど少し変わったヤツだ。

ていうか、変わったヤツ、で済んだら良いんだけどさ…。

「それと、「岡野」……って、どこかで聞いたことあるような。…なんだっけ?ニュース?お前から聞いたような気もするけど。」

!?

嘘だろ嘘だろ嘘だろ!?

僕が岡野大河の事を隆雄に話しただって!?そんなわけない。絶対に誰にも僕のことは話さないって決めたんだ。隆雄にだって、事故の詳細は一度も伝えたことがない。やっぱりニュース……?新聞?それともやっぱり、僕が伝えてしまったのか?とにかく誤魔化さないと。

「いやぁ。でも岡野なんてそのヘンにいる苗字だしさ…」

「お前知り合い?」

「ししし知り合いだってぇ!?千里と僕が!?そ、そんなわけないだろ!」

「そ、そうか?そんな焦らなくても。」

「お前が僕と岡野が知り合いとか───」



「私がどうかした?」

やっぱり君は、█████忘れてる。

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コメント

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ご高覧頂きありがとうございます! 投稿長らくお待たせ致しました🙏💦 次回投稿も頑張りますので是非読んでください!

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