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1.院瀬見カザノ
「こちら院瀬見、練馬駅付近にてカメムシの悪魔討伐完了。処理を頼む」
院瀬見、と名乗る女は無線機を手に何かを喋っていた。
「この後の予定は…っと」
院瀬見が腕時計を見ながら公安本部に入って行った…。
「院瀬見ィただいま戻りましたァ〜」
少々気だるそうに報告する院瀬見はどかっと自分のデスクのイスに座った。
「院瀬見ちゃんお疲れ〜!」
歳上同期である姫野が院瀬見の頭に缶コーヒーを置いた。
「カメムシの悪魔、銃の悪魔取り込んでたー?」
姫野が90度に体を傾けながら聞いた。
「早川から借りたやつ、反応しなかったぜ」
借りたやつ、というのは銃の悪魔の体の一部である弾のことだ。取り込んでいればいるほど強く反応するはずだったのだが…
「そっかぁ…残念だなぁ〜」
姫野はふくれっ面をした。
「あ、そうそう!京都のさ、誰だっけ…天童ミチコちゃんだっけ?さっき院瀬見ちゃん宛に電話来てたよ」
「マジで?折り返すか」
京都公安に所属する天童、黒瀬は院瀬見の仲の良い友人である。京都と合同での仕事があったとき知り合い、仲良くなった。
「天童か?どうした、なんかあったか?」
電話の相手─天童の声は、姫野からは聞こえない。だが、かなり仲がいいことは見ているだけでもよく分かる。
「あ?馬鹿だなお前。んなのあるわけ─…あるか、早川もそうだったな。いや違うそれ私じゃねぇよ。あぁ。…は?んだー うっせーな死ね!」
そう言って、院瀬見は笑いながら電話を切った。丁度そこにコベニが帰ってくる。
「えっいっ…いっいま誰かケンカしてた…?えっ大丈夫…?」
「コベニちゃ〜ん、あれは院瀬見ちゃんなりの挨拶なんだよ〜?」
「ひぁ!?えぇっ!?そうなんですか!?」
悪魔の返り血で血まみれになっているコベニはキョドキョドしている。
これが彼女…院瀬見カザノの日常だった。
2.魔人を捕まえよ
「院瀬見ちゃん、新しい任務だよ」
その日の午後、院瀬見の上司であるマキマが地図を持ってきて指さした。
「この辺りを縄張りとしている魔人がいるの。捕まえようとしたら逃げられちゃって。院瀬見ちゃん一人で行ってきてくれる?」
「えぇ…面倒くさ…なんで私が…」
「院瀬見ちゃん」
「…はい」
断ったら殺されそうな物言いに気圧された院瀬見は、任務を引き受けるほかなかった。
「何様のつもりなんだよアイツ…」
本部を出た院瀬見は、そのまま歩いて目的地へと向かった。院瀬見は正直、マキマを良いように見ていなかった。人に指示されるのが嫌いな性分なので、謎に上から目線な態度が気に食わないのだ。
「でもまぁ、私を公安に引き入れたのマキマだしな。嫌いだけどな、我慢しねぇとな」
院瀬見は小さく舌打ちをし、さっさと歩いていった。
「デビルハンターの気配がするね。それも雑魚じゃないみたい…楽しみだなぁ」
木の上にいる影がぼそりと、そう呟いた─。
3.魔人見っけ
「ここか」
人気のない薄暗い森に来た。カラスの群れが飛んで行き、なにやら不穏な雰囲気を醸し出している。
「おい悪魔ァ!どーせどっかに隠れてんだろ!?さっさと出てこい!夕方4課全員で飲み行きてぇんだよ!!」
辺り一面に響くような大声で叫ぶ。
するとそのとき。
「誰?うるさい。勝手に入ってこないでよ」
頭にツノが生えた少女が立っていた。座っていた木から軽やかに飛び降りる。
「てか、君の飲み会事情とか知らないし。ちなみに、あたしは悪魔じゃなくて魔人だよ。どこぞの雑魚と一緒にしないで頂きたいね」
「へーそうかよ。すみませんねぇ」
院瀬見は半分聞き流した。
「まずは自己紹介しよっか。戦うときの礼儀だよね。あたし、花の魔人。よろしくね。あなたは?」
「私の名前は…」
院瀬見は一度言葉を切る。
「教えねーよバァーカ!」
そして、最高の笑顔で煽り立て、魔人に飛びかかった。
ドゴ!!
飛び蹴りを食らった魔人は反動で後ろに吹っ飛ぶ。土煙が消えた先には頬に鋭い傷ができた魔人の姿があった。
「雑魚と一緒にするなって言ったか?ハン、その割には弱っちぃじゃねぇか!」
「うわぁ凄いね!今まで戦ってきた子の中で一番強いかも!楽しいなぁ!」
「お前に”子”なんて言われる筋合いはねぇんだよクソガキ黙ってろ!」
院瀬見は大声でまくし立てる。
その言葉が、魔人には聞き捨てならなかったようだ。
「やだなァその言い方」
「あ”ん?」
「あたしは少なくとも貴様より数百年も生きてんだ。たかが二十年かそこかしかの奴に言われたくはねぇんだよな」
口調が変わった。
(怒るとこういう口調になるんだな。なるほど)
「なーんか嫌になっちゃった。君にはここで死んでもらうね」
そう言うと、魔人は右手を振りかぶり、カマのようなものを出した。
「随分とちゃっちい玩具だな」
院瀬見は鼻で笑った。
「そうかな。なめてもらっちゃ困るよ」
いつの間にか、院瀬見の右腕には深い傷ができていた。
4.花
「…は…?」
「君ィ、そこに悪魔いるでしょ。気配的に幽霊かな」
魔人は院瀬見の目線のはるか上から喋りかけた。
「…誰から聞いた?」
「誰からも聞いてないよ。君は幽霊の右手を借りてるね。その幽霊の魔力が溜まってる右手をなくしちゃえば、君はただの弱い人間でしかなくなるんだよ」
「ガキのクセによく考えてんのな」
院瀬見は血が滴る腕を押さえ、立ち膝をしながら喋り続けた。
「はぁ…いい加減ガキってさぁ。ほんと癪に障るからさっさと死んでくれないかな」
そう言うと魔人はまた別の形の鎌を生み出し、院瀬見の脇腹に突き刺した。
「ぐ…ッ…!!」
「痛いねぇ〜、分かるよぉ。でもどうせすぐに死ぬんだしさ。大丈夫大丈夫」
院瀬見は逃げようとした。だが、動けない。
(動け馬鹿!!そんな強い相手じゃねぇだろ!!)
魔人がどんどん近づき、トドメを刺そうとした。
その瞬間─
「はい、ストップ〜」
「!?」
突然の出来事に驚き、院瀬見は目線を上げる。
姫野だ。姫野が魔人と院瀬見の間に割り込んでいる。気配を感じさせずに近づいてきたのだ。
「悪いけど、この子私の仲間だから」
「へぇ〜、まさか公安のデビルハンターだったとは!こんなチンピラが!」
「黙れ」
立ち上がって殴りかかろうとする院瀬見を姫野が押さえた。
「はいはい、手ぇ出さないの。傷が深いからね〜」
院瀬見の肩をぐっと押して無理やり座らせたあと、魔人の方を振り返った。
「ゴースト」
院瀬見が顔をあげたときには、既に魔人の首は繋がっていなかった。
5.任務完了?
「よっし!任務完了!」
何が起きたのかよく分からず、院瀬見はただ、地べたに座って姫野を見上げる。
「院瀬見ちゃ〜ん、ゴーストはよく考えて使い分けないとダメだよ〜?」
「うるせぇ」
同期だが、性格は正反対の二人。院瀬見は姫野から目を逸らした。
「ねぇ院瀬見ちゃん!最近、新しい子がいっぱい入ってきたでしょ?今日新人歓迎会やるんだって!」
「知ってる」
「院瀬見ちゃん行く?」
「報告書出したらな」
「んじゃあ早く終わらせてね!先行くけど!」
「そこは待ってろよ」
院瀬見と姫野は二人並んで本部へと帰っていった。
続
長くなりました…皆さまいかがでしたか?
大体1話分でこのくらいの量となります…
「クッソなんでこんな読ませよる」っていう
方も…そう言わずに読んで頂けたら
とても嬉しいです¨̮
お勉強になります!!(保証なし)