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36号が言った通り、午前の授業は何事も無く終わり、昼休みになった。
4時限目が終わると同時に根岸は教室を出て購買へ向かうと、パンと紙パックのジュースを買い、昇降口へと向かった。
「兄貴はどこで昼ごはんを食べるの?外?」
胸ポケットの中からフリーダが聞く。
「ここだよ」
「え?ここって昇降口じゃん」
「そうだよ」
「教室でちゃんと座って食べようよ」
「教室にはアイツ等が居るだろ?それに、アイツ等に何かされなくても、大勢の中で一人で食べるのは精神的にしんどくてさ……」
「Oh……」
フリーダが言葉を失う。
「ネットで便所飯って言葉を見つけてさ。流石にトイレの個室でごはんを食べるのは抵抗があってね。で、気付いたら、ここで昼ごはんを食べるようになってた」
「ボクに元の力があれば、超絶美少女に変身して、兄貴のクラスに転入して、一緒に昼ごはんを食べるっていう、ラブコメな超裏技が使えたんだけど……」
「ハハハ。魔力の無駄使いなんか、しなくてもいいよ」
根岸がパンの袋を一つ開ける。「チキンが好きだって姐御が言ってたけど、ハムカツも食べてみるか?」
「わ~い。ん……ちょっと待って。今、姐御が屋上に来いって 」
屋上に通じるドアは、普段は施錠されている筈だったが、根岸がドアノブを回すと、カチリと音がしてドアが開いた。
36号がテレパシーで根岸に話かけた。
「開けたら直ぐに閉めて下さい。飛び降り事故防止のため、屋上ドアにはセンサーが付いていて、勝手に開けると職員室でアラームが鳴るようになっています。今は、私がセンサーを無効にしていますが」
36号の説明を受け、根岸は屋上に出ると急いでドアを閉めた。
「御二人とも、午前中はお疲れ様でした」
「あ、お疲れ様です」「姐御お疲れ〜」
「御二人ともお昼ごはんはまだなのでしょう?食べながら私の話を聞いて下さい」
「はい、じゃあ失礼します」
根岸は屋上の床に座ると、袋を開けたハムカツ・サンドを千切ってフリーダに分け与えた。
「わ~い。兄貴ありがとー」
フリーダが両手を使って受け取ると、ハムカツを抱えるようにして食べ始めた。
「フフフ。仲良きことは美しきかな」
36号は独りごちると、少し口調を変えて説明を始めた。
「先ずは報告その1。白身君は今日の夕方、退院するそうです」
「今日の夕方ですか……早いなぁ」
「まぁ、手首にヒビが入っただけですし、学校の授業に遅れてしまうことを恐れているのでしょうね」
「大丈夫だって兄貴。アイツが何かしてきたら、今朝みたいにラジコン作戦で姐御に操って貰って倒せばいいんだよ」
ハムカツをモグモグ食べながらフリーダが言う。
「ああ、そうです。フリーダの言葉で思い出しました。」36号が掌をポンと打つ。「今朝、根岸さんの肉体を操ってみて判りました。根岸さん。貴方、絶望的に筋肉量が足りていません」
「絶望的……ですか」
あまりの言われように根岸の顔に縦線が入った。
「はい。ですので、これから毎日お風呂に入る前に腕立て伏せ50回、腹筋50回、スクワット50回をノルマとして下さい」
一呼吸置いた後に、36号はニッコリ微笑んだ。
「やってくれますよね?」
「よ、喜んでやります。やらせて下さいっ」
36号の圧に負けて、根岸が確約してしまう。
「呼吸を乱したり、汗ばむことがなくなったら10回ずつ回数を増やしていって下さい。100回出来るようになったら、回数は増やさずに負荷をかけることで筋肉を育てていきます」
「Mの一族の無限筋トレ地獄キター」
フリーダが囃し立てる。
「それから基礎体力も付けていきましょう土日休みのどちらか天気の良い日には、最低5kmを走って下さい」
「は、はい」
「自主的にトレーニングするのが苦手だというのなら、今から運動部に入部するのもいいですね。私のお勧めは、陸上部の長距離走か、柔道部です」
「す、すみません。柔道部だけは勘弁して下さい」
根岸が泣きを入れる。
「白身君が、居るからですか?私が思うに、根岸さんが白身君より強くなれば、貴方のイジメ問題は完全に解決するように思えるんです」
「鬼だ。発想が鬼畜過ぎる!」フリーダが唖然とした。「それが出来るんなら、苦労は無いよ姐御ぉ」
「私は鬼ではなくて魔神ですよフリーダ。ああ、でも、うん。少し私が辛辣だったかもしれませんね」36号が自分のミスを認めた。
「失礼しました根岸さん。柔道部入部の件は忘れて下さい。で・す・が・筋トレに関しては約束通り今晩からお願いしますね」
「は……はひ」根岸が頷く。
駄目だ、悪魔からは逃げられない。