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「宜しい。そして報告その2。担任の寺沢先生は人生終わっちゃいました♡」
「ムグッ」あまりに衝撃的な話題で、根岸は食べていたパンを、喉に詰まらせかけた。
「兄貴ッ、ジュース飲んで、ジュース」
紙パックのアップル・ジュースで喉に詰まりかけたパンの塊を流し込むと、根岸は激しく咳きこんだ。
「大丈夫ですか?根岸さん」
36号が根岸の顔を覗きこむ。
「ゲホッ。ら、らいじょうぶれす。ゲホ」
根岸が咳きこみながら答える。
「ぐ、具体的には、どういうことです?」
「簡単に言うとですね。先生は出勤途中に、道を極めた自由業の方と事故を起こしてしまいました」
「え?誰とです?」
根岸が聞き返す。
「背中に刺青が入った、反社会的な職業の方々です」36号が説明する。
「アイ、アンダースタンドです」
「姐御ったら、遂にヤ○ザをけしかけていたわ。キャー怖〜い」
「私はけしかけたりなんてしていませんよフリーダ」36号が言う。「先生は赤信号で停車していた極道さんの車に後ろから追突したのです」
停止している相手にぶつかったということで、過失の割合は10∶0で、先生は100%悪いことになってしまった。
「おまけに、現場に到着したお巡りさんが、先生の呼気からアルコールを検出しました。昨晩飲んだお酒がまだ体内に残っていたようです」
道路交通法では、呼気1L中のアルコール濃度が0.15mgから0.25mgの間なら90日間の免停。0.25mg以上なら、一発免許取り消しとなる。
そして、保険の問題。被害者救済の観点から、事故の被害者に対する保険は支払われても、事故を起こした加害者には保険金は支払われない。飲酒・酒気帯び運転は、重大な保険契約違反だからだ。
「つまり先生は、壊れた車の修理や自身のケガの治療を自費で行わなければなりません」
「ああ。そりゃ先生も困りますね」根岸が頷く。
「それだけではありません。被害にあった極道さんは、事故の後遺症でムチウチ症になってしまったとか、事故のケガのせいで仕事ができなかった間の補償をして欲しい等、今後も先生に接触してくるでしょう」
「うわぁ。怖っ」
「おまけに、生徒の手本となるべき教師が、酒気帯び運転で事故ですからね。都の教育委員会も、それなりに厳しい罰を先生に課すことでしょう」
「事実上、先生は人生が詰んじゃったんだね」フリーダがポツリと言う。
「根岸さんが何度助けを求めても無視されてきたように、今度は先生が周囲から見放される番です。どうです根岸さん、少しは気分が晴れましたか?」
「……」
根岸は返事ができなかった。
今朝、36号が宣言した通り、悪魔の攻撃は圧倒的で、一方的で、ターゲットになった者たちは耐えることができないのだ。