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「・・・そっか、この本は、ぼくが自分で破いちゃったんだね・・・」
そうすまない先生は、破れた本に触れた。自分で破いた記憶もない。けれど、自分の事が書かれている本が破れていることは、変わりない。
それに、何故か“破いた”と言うのにストンと落ちるかのようにあまり驚かなかった。
「・・・ありがとう、教えてくれて、それじゃあ」
と、すまない先生は魔法陣の元へと向かおうとする。すると、
『いいの?あの子たちのところ戻って』
その言葉に、すまない先生は足を止めた。
『かつての君は、沢山の人を看取って、救ったはずの世界を何度も滅ぼされ、心が壊れた。君は、また同じことを繰り返すのか?それなら、誰にも会わず、いつか来るかもしれない“世界の終わり”まで閉じこもってしまえばいいのに』
そう、魔導書は問いかける。それに、すまない先生は頭を横に振り、答えた。
「・・・確かに、かつての僕はそれで心を壊してしまったのかもしれない。けれど、“僕”は、彼らを見届けたいんだ。彼らが起こす“奇跡”をこの目で見てみたい。これが、かつての僕なのか、今の僕なのかは分からない。けど、“これ”だけは、この気持ちだけは、“今の僕”の願いだ」
と、すまない先生は前を向き、魔法陣へと足を進めた。魔法陣へと近づくと、すまない先生の体が緑色に光り、その場に静寂が訪れる。それを見届けていた“世界の記憶を写す魔導書”は本を拾い、それをしまう。
『そう、それが“君”の答えなんだね。これだから、人間は面白い。“神に作られた僕でさえ、思いもよらない結果を起こすんだ”・・・どうか、君たちの旅路が良きものであることを心から願うよ。“英雄・すまない”』
その呟きは、まとめられた本達にしか聞こえない。小さな呟きだった。