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2人の会話を聞いているのが苦しくなって、意識を逸らそうとした脳裏にふと元貴の声が響く。
過ごしていた
あの夏の思い出は
今でも瞼の裏で生きてる
切なくもあたたかい、大切なものを愛しむようなフレーズ。
元貴が瞼の裏に思い描く、その懐かしい夏の情景には。
若井がいるんだ。
「………え、涼ちゃんどしたの?!」
若井の声にハッと意識を取り戻す。
「あ、ごめん何…」
若井に視線を向けようとした時、反対側から伸びた手が顎を掴み、強引に顔を逸らされた。
眉尻を下げた元貴と目が合う。
「ごめん、ちょっとボーっとしちゃった」
誤魔化すように笑うと、元貴の手が顎から離れておれの目元に触れる。
濡れた感触に、初めて自分が涙を流していることに気がついた。
「え………」
驚いて自分の手で頬を拭う。
おれは一体どうしてしまったんだろう。
「若井ごめん。…りょうちゃん、こっち来て」
元貴が立ち上がり、おれの手を取る。混乱する頭では何も考えることができず、促されるままにのろのろと腰を上げた。
手を引かれて2人で打ち合わせ用の個室に入ると、椅子を引いておれを座らせてくれる。
元貴は椅子に座らず、おれの前に片膝をついて屈む。 両手をまとめて包むように握られる。
不安そうにおれを見上げる元貴に、また新たな涙が湧いてきてしまう。
「さっきの俺が怖かった…?怒ってる?」
さっきのって、スタジオのこと?怒られるべきなのは俺の方なのに。
「なんで、そんな、優しくすんの?…若井、みたいに、おれの、ことも、怒れ、ば、いいでしょ…」
喉がつかえて途切れ途切れに言葉を搾り出す。
両手を握られているから涙を拭うことができず、顔を天井に向けて目をギュッと瞑る。
「りょうちゃんには怒れないよ、俺」
元貴の困ったような声。
どうして。若井には言えるのに。どうしておれにはあんな気を遣って話すの。おれが弱いから?落ち込むと引きずるから? おれが、
… 親友じゃないから?
頭の中で考えたことが、どうやら声に出てしまっていたらしいと気づいたのは、元貴の目が見開かれたから。
しまった。
でも、もういいか。
恋愛要素が…出てこないぞ…?
と自分で書きながら焦っております。
でも、出します。
どうにかします。