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コメント
1件
めーーっちゃ好きですーー😿💗
紫桃
「余裕」
◯無理矢理要素
◯緑黄要素
🌸「…遅い、」
6件目の不在着信。昨日も、一昨日も。
就業時間は23時。
締めの作業は長くても40分。
家に帰ってくるには20分もかからない。
なのに現在時刻は23時30分。
呆然とLINEのトーク履歴を遡り、インスタのリールに飛んで、気を紛らわせる。
流れてきたのは大学の同期バカップル。
仲良く手を繋いでイルミネーション?
こっちの彼氏ときたらあんなんただの照明だなんてノンデリ発言多くてやんなっちゃう。
4コ歳上の彼氏って、もっとお金持ちで、優しくて、甘えさせてくれて、大人っぽい人だと思ってた。
でも、アイツは子供っぽくて、常に金欠で、意地悪だし、甘えたらキモがるし、全然理想とはかけ離れてる。
それでも、大好きなのは間違い無くて、ふにゃって笑うところが好き、俺が疲れてたら黙って気を遣ってくれるとこが好き、眠くない夜にドライブ連れて行ってくれるのが好き。
でも、帰ってくるのが遅いのは大嫌い。
さらに20分経って、23時50分。
ガチャリと鍵が鳴った。
築32年のボロアパートは建て付けが悪く、ドアが開くときに少しだけ玄関の床が揺れる。
📢「ただいまー、」
随分とまあ遅いお帰りのようで。
たいそうお疲れのようで。
🌸「…、おそい」
📢「あ?お前まだ寝てなかったのかよ、」
🌸「いや俺大学生よ?どこのどいつが日回る前に寝るの」
📢「大学生なんてまだまだガキだろ、」
「早く寝ろよ、大きくなれねーぞ、?」
そう言って悪戯っぽく笑ってから、靴を脱ぐ。今日は彼のお気に入りのスニーカーらしく、丁寧に靴箱に戻す。
🌸「…いるまちっちゃいもんね、寝てなかったの?笑」
📢「毎日女と遊んでたからな、笑」
🌸「最低、そういうの嫌い、」
言葉の通りだった。
俺はそういう冗談がガチで通じない面倒臭いタイプだと思う。自分でも。
マジで本気にするし、本当に嫌。
考えるだけで吐きそうになる。
📢「あーそ、」
🌸「…は、?」
でもこうやって嫌がったら、いつもなら笑ってごめんって言って、キスしてくれるから、いるまだけはいつも許してた。
でも今日はなんか違う。
📢「嫌いなんだろ、?」
「はいはい、わかりました。」
🌸「何その反応、うざ、」
📢「いやお前がウザ笑」
🌸「っ、フツー遅くまで待ってた恋人にそんなこという、?」
「誰のおかげであったかいお風呂とご飯があると思ってんの、?」
📢「別にいらねーって何度も言ってんじゃん」
それは事実だった。
何度断られても俺が勝手にしてるだけ。
でも、それでもなんだかんだ必要にされてると思ってたし、なにより、喜んでくれてると思ってた。
🌸「あっそ、じゃーいらないのね、」
頭が熱くなって冷静な処理なんてできなくて、机の上に置いていた晩飯を全てゴミ箱に投げ入れる。
📢「は、?」
🌸「…、」
心配して欲しかった、
宥めて欲しかった。
俺が悪かったって、俺が間違ってたって
ごめん、傷つけたねって。
📢「食いもん無駄にすんなよ、」
「金ねーんだってば、大切にしろ」
🌸「…、」
望んでた言葉とは相反する、俺への謝罪も、慰めも、なんにもない。
ただの正論。今はとっても欲しくないもの。
🌸「…あーあ、」
「いるまなんかと付き合わなきゃよかったっ!」
「歳上のくせに金ないし、夜遅くまで仕事でつまんないし」
「もっと俺のこと甘やかしてくれる人と付き合えばよかったっ、」
📢「…、そーかよ」
🌸「…、」
怒声でも良かった。
ただ、俺に向けられた感情を今は感じたくて、ガキくさくて、アホらしい。
🌸「…チビだし、短小だし」
📢「短小はちげーけど、」
🌸「…、」
「しーらないっ!ハゲろ!ジジイっ!」
📢「おーおー早く寝ろクソガキ」
むかつく。余裕そうにひらひらと振られる手が。
🌸「…」
いつもならただでさえ狭いシングルベッドにふたりで眠っていて、寝相の悪い俺は落っこちそうになってるのに、今日は落ちなかった。今日は窮屈じゃなかった。
リビングではソファで足をはみ出して寝てるアイツ。涎なんて垂らしちゃって、だらしない。
いつも通り朝食を作る。
朝食は俺担当。アイツは料理だけは下手くそだから。
でも今日は作ってやんない。
だってどうやら俺なんていらないらしいし。
今日に限ってパンは焦げるわ、油をひくの忘れて卵はフライパンに張り付くわで最悪。
苦味が強い食パンにいちごジャムを乗せて最後の一口を終える。
ルーズリーフにペンケース、スマホにモバ充、iPod。
必要なもの一式は昨日からもうセットしてある。それを今朝も確認してから家を出る。
チャリで10分。
このボロアパートにしたのは俺の大学が近くて、スーパーも周りにたくさんあったから。
アイツの職場はバイクで飛ばしたら20分かかんないけど、俺がチャリで行ったら結構距離がある。
それでも、付き合いたての頃はいつも飛ばして帰ってきてくれたし、美味しいって言ってご飯も一緒に食べてくれてた。
2年も経つと、倦怠期とやらもなくなるのかなとか思ってたのに、遅れながらの倦怠期に思い悩まされるなんて。
ひとり食堂でB定食を食べてるとき、ふと肩をたたかれる。
👑「ぉわっ、!らんらん浮かない顔っ!」
🌸「あ、今見たくない顔ランキング第1位優勝おめでとうみこと」
👑「ぅえっ、!笑、なんでぇっ、!」
🌸「何でちょっと喜んでんだよ、笑」
👑「喜んでへんよっ、!傷ついてるっ!」
🌸「昨日彼氏とイルミネーション見に行ってたのに?」
👑「んへへ、そうやね今はおれ無敵かも、」
🌸「うわうぜーーーーー、」
👑「まあまあそれはそうとっ、!」
「らんらんはなんでそんな浮かない顔してるん、」
🌸「別に?なんもねえよ、」
👑「えー、かくしごと?」
🌸「…みことはガキだからわかんねぇよ、笑」
👑「あ、そっか〜」
「らんらんの彼氏さん歳上やもんな、」
🌸「…ん、まーね、」
👑「社会人なんやろ、?生活リズムとか合わんくない?」
🌸「まあ、でも俺大学生だし、そこら辺は自由だしな、」
👑「あーそっか、!たしかに!」
🌸「…まあ、あっちからも多少歩み寄りがあってもいいと思うケド、」
👑「あーでも、まあそれはお仕事してるとなあ…」
🌸「…うん、」
👑「あ、それよりっ、!」
🌸「…それより、?」
それよりなんていう無遠慮な言葉に少し苛立ちつつも同期の話に耳を傾ける。
👑「らんらん、きすまーくってどうやってつけるかわかる、?」
🌸「げほ、っ…、っ゛」
突然の中学生男子トークにお茶を吹き出す。
話を持ちかけた張本人は汚いと言わんばかりに怪訝そうな顔でこちらを見つめ、服をさっさと振り払う。
失礼なヤツだなと思いつつ、まあ面白そうな話題ではあるので乗ってやる。
🌸「はぁ?お前そんなのも知らねーの?笑」
👑「え、ちがうんよっ、!」
「きすまーす、なんやからさ、きすしたらつくとおもうやん、っ」
「やから、すちくんにきすしてたんやけど、ぜんぜんつかんくて、」
「すちくんになんでつかないの?って聞いても可愛いねって言ってそれきりやしっ、!」
🌸「うっわつまんねーーーーーーーー」
でろっでろに溶かされたあっまいチョコに砂糖を大さじ35杯くらいを加えたようなくどいくらい甘ったるい惚気話に嫌気がさす。
あーあ、こんなんなら聞くんじゃなかった。
泣きっ面に蜂。切り傷に塩?だわ。
👑「んぇ、つまんなくない!」
「おれはこまってるのっ!ねえ、らんらんつけ方知っとるんやったら教えてよっ!」
🌸「はぁー、」
「ほら、手首かしてみ?」
👑「!、はいどーぞっ!、」
学食の隅っこ、B定食の残骸を横目に、同期の手首に唇を軽く押し当てる。
🌸「……ん、っ、」
👑「ぅ、♡゛、なに、すわれとるかんじ、
する、んやけど、っ、」
🌸「、ぷはっ、こうすんの、しばらくこうやって一点を吸わなきゃつかねーよ」
👑「すごぉいっ!ほんまに赤くなったぁ!らんらん天才や、っ笑」
目を輝かせて自分の手首を眺める同期。
あーあ俺何やってんだろ。
👑「…、ねえ、らんらん。」
先ほどよりもピリついたような、真剣な雰囲気で語りかけられる。
何だか嫌な予感がしつつ、返事をする。
🌸「?、どした?」
👑「…いっこだけ、お願い聞いてくれる?」
🌸「なんだよまどろっこしいな、言ってみ?」
👑「首につけるから、首貸して、っ」
先程の予感は見事的中。
いくら友人でも超えてはならない一線はある。
🌸「絶対ヤダ」
👑「…えーーっ!!なんでっ、!」
🌸「やだわ、なんでお前につけられなきゃいけねーんだよ、」
「やられるなら俺だっているまに、」
👑「!、え、ならwin-winやんっ、!」
🌸「…は?」
我慢しようと思ったが思わず溢れた言葉は止まらず、そのまま口から出ていってしまった。きらきらの瞳をこちらに寄越し、そのまま言葉を続ける。
👑「きすまーくって、大切な人にするんやろ?」
「らんらんにキスマークついてたら、らんらんの彼氏さん、絶対焦るやんっ、!」
🌸「!、…、」
言葉に詰まった。同期は楽しそうな、でもどこか核心を突くような瞳で俺を見つめてくる。
焦るアイツ。
そういえば、長らくみていなかったかもしれない。付き合ってから初めてのデート。ドライブデートで奮発してオープンカー借りたのに大雨は降るし、貸し出し時間過ぎて金足りなくて割り勘になるし。余裕なんてなくて、子供っぽくて、そんなとこが好きで。
余裕をなくして、俺を「ガキ」なんて笑えなくなるアイツ。 昨日ゴミ箱に捨てた晩飯よりも、ずっと重くて、ドロドロしたものが、腹の底からせり上がってくる。
🌸「…わかった、いーよ」
👑「!、んふふ、っおっけー、っ」
「じゃあ、ちょっと失礼するな?」
同期が椅子をごそごそと動かして、俺の隣に寄ってくる。 学食の騒がしい声、カレーの匂い、誰かの笑い声。 そんな日常のど真ん中で、俺は髪をかき上げて、恋人でもない男に頸を晒した。
👑「、っん、゛っ、」
🌸「……っ、♡、んぅ、」
熱い吐息と、皮膚を吸い上げられる奇妙な感覚。 アイツ以外にこんなことされるなんて、久しぶりだった。
不思議と嫌な感じはしなかった。
これでアイツが俺の事を見てくれるなら、なんだっていいと思ってしまっていたんだと思う。
👑「ぷはっ、♡、…できたぁ。めっちゃ綺麗に赤くなったよ、っらんらんっ、」
みことが満足げに笑って、スマホのインカメで俺の首筋を映し出す。 そこには、自分でも引くくらい、鮮やかで、毒々しいソレが刻まれていた。
🌸「げ、」
👑「げってなによ〜っ、!笑」
🌸「…満足したならさっさと行けよ。午後の講義遅れるぞ」
👑「!、あっほんまやっ、!」
「じゃー、いろいろありがとぉらんらんっ!これで今夜すちくんにつけてみるっ!」
無邪気に投げかけられた笑顔は俺にはない可愛さがあった。
🌸「……、」
23時20分
秒針の音がやけに大きく聞こえる。
首元の一点だけがやけに熱い。
🌸「…おそい」
23時40分
20分前より、さらに静かになった部屋。 昨日、ゴミ箱に捨てた飯の匂いがまだ残っている気がして、胸がムカムカする。
襟元をわざと緩めて、髪を耳にかける。 アイツの視線が一番最初に、ここに落ちるように。
罪悪感なんて、もうとうの昔に捨てた。 俺を「いらない」って言ったアイツに、一生消えない後悔をさせてやりたい。 焦って、怒鳴って、俺を奪い返してよ。
……じゃないと俺、本当にどこかに行っちゃうかもよ?
…あ、揺れた。
24時30分
結局、帰ってきたアイツにはおかえりの一言も投げかけず、俺は先にベッドに潜り込んだ。
背中を向けて、目を閉じる。 薄いカーテンの隙間から街灯が差し込んで、俺の首筋を、静かに照らしていた。
脱衣所から、ドライヤーの音が止まる。 数分後、湿った匂いと共に、ベッドがぎしりと沈んだ。
📢「…おい」
🌸「ん、……なに、寝かせてよ」
「明日も早いんだから、」
寝ぼけたフリをして、さらに布団に潜り込もうとしたその時。 ガバッ、と布団を力任せに剥ぎ取られ、肩を掴んで仰向けにされた。
🌸「っ゛、…なに、痛い、っ」
📢「なに、これ」
風呂上がりの、まだ少し濡れた髪から雫が滴り落ちて、俺の頬を濡らす。 黄金色の三白眼は、見たこともないくらい冷たくて、暗い。
アイツの指先が、首筋に刻まれた赤黒い跡を震えながらなぞった。
📢「誰にされた?」
🌸「…さあ、いるまには関係ないでしょ、」
その瞬間大きく見開かれた瞳は俺をしっかりと捉えて、それから手首を力ずくで押さえつけられて思わず痛みが声として溢れた。
📢「…相変わらずお前の冗談おもんねーな」
🌸「っ、゛いっ♡…、」
きちんと慣らされていないナカは、アイツの大きなモノを受け入れるにはあまりに窮屈すぎて、必然的に呼吸が浅くなる。
一気に切り開かれた衝撃で歪んだ視界に、苦しそうな表情のアイツが見えた気がした。
🌸「ん゛っ♡ゔぅ゛ぅ♡♡ほぉ゛ッ♡♡~~~っ♡♡♡」
📢「、っ汚ねぇ声、」
🌸「お゛ぅ゛♡♡んぉ゛っ♡はーッ…♡♡ぉお゛ッ♡♡♡フーッ♡フーッ…♡♡」
「っ、ぐす、…、ッ゛」
📢「、っ…、」
🌸「、っ…、ぅ、♡゛…、」
嫌だ、何でキスしてくんないの。
何で頭撫でてくれないの。
耳にもちゅーしてよ。おでこにもして。
大好きって言って。愛してるって。
こういう時しか言ってくれないじゃんか。
🌸「、っ…、ぐす、もぉ、やだ、」
「こんなん、ぃや、…、ぐす、っ」
📢「…、」
🌸「…、っ、なんで、きすしてくんないの、」
📢「…は、?」
🌸「、っ…、きすして、っ」
「さみしい、ぐす、っ」
📢「…おまえ何言ってんの?」
「自分が何言ってんのかわかってる?」
🌸「?、ん、ぅ、…゛、」
📢「俺のこと嫌なんじゃねーの?」
「もっといい相手見つけたから、こんなとこにこんなんつけてんじゃ…、」
🌸「…、これ、みことの実験台、になっただけ、」
「…あと、いるまが構ってくれなくて寂しかったから焦らせたかった、」
📢「…、っ、クソ」
いるまはガシガシと自分の濡れた髪を掻き乱して、そのまま俺の胸元に崩れるように突っ伏した。 さっきまでの威圧的なの温度が、一瞬で情けないくらいの熱を帯びた後悔に変わる。
📢「…毎日めっちゃ焦ってるわ、こっちはさ。」
「職場のクソみたいなやつらに言われてんだよ、『お前みたいな金ねー歳上のどこがいいんだよ』って。『そのうちもっと好条件な相手に乗り換えられてすぐ捨てられるぞ』って、」
🌸「……え、」
📢「…周りの評価とかどうでもいいけど、おまえのことだけは違うから。」
俺の胸に顔を埋めるいるまの肩が、微かに震えている。 あんなに大人ぶって、余裕そうに俺を小馬鹿にして笑ってたアイツの、剥き出しの劣等感。
俺を失うのが怖くて、必死で、空回って。 ……そんな理由で、俺にあんな酷い態度取ってたの?
🌸「、ふは、っ…いるまかっこ悪っ、笑」
📢「うるせぇな、かっこつけたいんだよ、おまえの前だけでは。」
🌸「…ばかだなあ、そんかことしなくても、ずっといるまはかっこいいよ、」
「ねぇ、いるま。きすして。もっと、いっぱい愛して、?」
📢「…今度こそ泣いても知らねぇからな」
そう言いながらも、いるまは俺の唇に、今度は壊れ物を扱うような、とろけるほど甘いキスを落とした。 黄金色の瞳には、もう暗い嫉妬なんてなくて。 ただ、俺を求めて堪らない、必死で愛おしい熱だけが残っていた。