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大森side
藤澤「今日は何食べようかなぁ〜」
大森「涼ちゃんはいつもの『きのこのアヒージョ』でしょ」
藤澤「たまには違うのも頼もうかなって」
大森「そう言って毎回頼ん、で……」
藤澤「だってあそこの……って元貴??どうした?」
俺と涼ちゃんは互いの家に近い行きつけの個室のある料理屋に行こうってなったから近くまでマネージャーに送ってもらい、涼ちゃんと喋りながら歩いていたら道の反対側に知った奴がいた。
帽子を深く被っていても俺にはわかる
大森「……若…井……」
今日は用事があると言って先に帰った用事がこれだったのか…………
隣に居るやつは…………だれ……?
藤澤「え?若井?どこ?って、も、元貴大丈夫?!」
大森「……大、丈夫」
藤澤「でも顔色が」
大森「大丈夫って言ってるじゃん!!」
咄嗟に出た大声に周りが振り向く。
勿論、若井も。
やってしまった
気がついた若井がこちらに来ようとしてる
やめてくれ
女と腕を絡めたままこっちに来るな
大森「涼ちゃんごめん、俺、帰る」
藤澤「ちょ、元貴!!」
この場から今すぐに離れたい
その一心で走った
後ろでまだ涼ちゃんが何か言っていたけど振り向くなんて出来ない。
俺は若井から離れたかった……
久しぶりに走った
とにかく足を止める訳にはいかない
若井が追いかけて来ることはない
わかっていても俺は夢中で走った
大森「はぁはぁはぁ……くそっ」
鍵穴に上手く鍵が入らない
手が震える
ようやく開いた扉を勢いよく開け、直ぐに鍵をした。
やっと落ち着けると思うと、背にした扉にもたれかかったままズルズルと座った。
やってしまった……
若井から俺は逃げた
あんな行動とったのは間違いだった
若井に変に思われたかもしれない
今まで通り何も想っていない様に装えば逃げる
必要性はなかったのに、若井の隣に女が居る事に動揺してしまった……
大森「最悪だ……何もかも」
言葉を声に出した瞬間、涙が溢れた
泣きたいだなんて思ってもないのに
♪♫♫〜
その時、携帯が鳴った
画面には「藤澤」
出ない間に切れたけどまたかかってくる
出たくなくとも出ないと涼ちゃんの事だ、俺が出るまでずっと鳴らしてくる気だ……仕方なく俺は涼ちゃんの電話に出た
藤澤「やっと出た!ハァハァ……元貴大丈夫?」
大森「……りょうちゃ…………ごめん」
藤澤「今、どこ?!」
大森「……い、え」
藤澤「行くから!待ってて」
プツン ツーツー
僕が返事をする前に切られてしまった。
まあ、焦っているからなんだろうけど
なんだか、その涼ちゃんの焦り具合に、ふふっと笑いが込み上げてきて少し落ち着きを取り戻せた。
本当はこのままひとりで居たいけど、涼ちゃんのお陰でちょっと落ち着いたし、多分泣いていた事は声でバレてる。
顔洗って涼ちゃんを迎えよう。
ピンポーン……ピンポーンピンポーンピンポーン
大森「ちょ、りょう」
藤澤「ハァハァハァハァ……も゛、どぎっ!!、ハアハア……」
大森「開けるから待って」
大森「はい、水」
藤澤「ハァハァ……あ、りがと……」
俺が渡した水を涼ちゃんは一気に飲み干し、それでもまだ息は上がってはいるけどさっきよりは落ち着いたみたい。
藤澤「ふぅーーー」
大森「大丈夫?」
藤澤「うん。もう大丈夫……元貴こそ……大丈夫?」
大森「あー……うん。涼ちゃんが来てくれたおかげで冷静になった」
藤澤「元貴ってば、僕を置いて走って逃げるんだもん」
大森「……ごめん」
藤澤「……そんなに……若井と会いたくなかった?」
大森「……」
藤澤「若井の……隣見た?」
大森「……ちゃんとは見てない……女だってのは……わかった」
藤澤「……そう…………元貴は何もしないの?」
大森「え」
藤澤「若井の事好きなのに元貴は何もしないのかなって」
大森「涼ちゃんも見たじゃん……女連れてんの……俺、流石に女にはなれないし」
藤澤「でもっ…………」
涼ちゃんが言いたい事はわかる。
俺は若井が好きだ。
でも俺は若井との今の関係が壊れるのが怖い……下手に壊れるくらいなら最初から何もしない、したくない。
だから若井に俺の気持ちを伝える気はない。
大森「さっきは急だったから取り乱したけど……もう大丈夫。涼ちゃん、俺は今のままでいい」
藤澤「…………わかった……どんな答えでも僕は元貴の味方だよ」
大森「……ありがとう、涼ちゃん」
若井にはパートナーが居るのをこの目で見たんだ。
諦めなきゃ……
大森「……涼ちゃん……お願いがある」
藤澤「ん?」
大森「……コマンド……頂戴……」
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挿絵のアップバージョン
(大した絵ではないんですが、見にくそうだったので拡大しました。笑)
コメント
17件
わぁ~この作品最高ですね!もっくんらしいグループに対する配慮とかがちょっと現実味があってリアルでめっちゃ没入できました(*´▽`*)続きが楽しみです!挿絵も最高ですね(*´ω`*) あと文中に鍵穴が鍵垢になっていた気がします...勘違いだったら申し訳ないです😭
ちょっと待った…挿絵の…クオリティの高さ…。物語だけで十分感情移入してしまうのに…あああこの時点で泣きますよ…。(単純な脳)
うぉぉぉぉぉぁちょっと待ってください、挿絵最高すぎます! 若井さんに女、りょつにコマンドを求める大森さん。次のお話も楽しみです!