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りんは中学二年生の男子生徒だ。
幼なじみのいぶきとは家も近く、小さい頃からよく遊んできた。週末にはゲームをしたり、コンビニに行ったり、公園で話したり、何をするでもなく一緒にいることが多い。
けれど、その日はいぶきが学校に来なかった。
朝のHRが終わったころ、りんは先生に小さな声で尋ねた。「いぶき…どうしたんですか」
先生は「体調不良らしい」とだけ答えた。
授業中も落ち着かず、ノートをとる手が何度も止まった。昼休み、机に突っ伏していると、胸の奥がじんわりと重くなる。
放課後、りんは思い切っていぶきの家に向かった。心配で、じっとしていられなかった。
いぶきの家の前でインターホンを押す。ピンポーン。…返事はない。
もう一度、少し長めに押す。でも、静まり返った玄関の向こうからは何も聞こえない。
「…いぶき、ひとりかな」
りんはそう思った。いぶきは昔から体調を崩すと、動けずにベッドにうずくまっていることが多かったから。
不安そうにオドオドしながら待っていると、カチャ、とドアの鍵が回る音がした。
そっと開いたドアの隙間から現れたのは、パーカーのフードを深くかぶったいぶきだった。
顔は少し青白く、唇も乾いて見える。ほんのりと震えているようだった。
「だ、大丈夫…?」
りんが声をかけると、いぶきは「ちょっとお腹痛いだけ」と力なく笑った。
いつもなら明るくて騒がしいいぶきが、今日は落ち着きすぎていて逆に不安を感じた。
りんは手に持っていたゼリー飲料やスポーツドリンクを差し出した。「これ…差し入れ」
「ありがと」
いぶきは小さな声で言い、ドアの隙間から手を伸ばして受け取った。
しばらく黙ったまま二人で立っていたけれど、このままじゃ迷惑かもしれないと思い、りんは「じゃあ、また明日ね」と言って帰ることにした。
いぶきはドアの隙間から、小さく手を振ってくれた。
次の日の朝、学校に行くと、廊下の先にいぶきの後ろ姿が見えた。
「おはよ!」
りんが声をかけると、いぶきは「おはよ…」と振り返り、かすかな笑みを浮かべたけれど、声には元気がなかった。
心配になって視線を下にやると、いぶきのズボンのあたりに赤い染みが見えた。
まさか、と胸がドキリとする。いぶきは気づいていないらしい。
僕には姉がいるから、女の子の事情は少しわかる。
でも、いぶきは一人っ子だし、男だからきっと戸惑っているんじゃないか。
りんは思いきって、自分が着ていたジャケットを脱ぎ、いぶきの腰に巻いてあげた。
「これ…つけときなよ」
「ありがとう…」
いぶきは心のこもっていない、どこか遠くを見ているような声でそう言った。
普段なら「いいよ、大丈夫だよ」って断るいぶきが、何も言わずにジャケットを受け取った。それだけで、どれだけ辛いか伝わってくる気がした。
教室に着くと、いぶきの周りには友達が集まってきた。
「大丈夫?」「昨日休んでたじゃん、心配したぞ」
みんなが口々に声をかける。
その中で、一人のクラスメイトがふざけていぶきの腹をポンと叩いた。
「おいおい、元気そうじゃん!」
いぶきの肩がピクリと揺れる。顔が一瞬ゆがんだ。
りんは横でそれを見て、胸がギュッと痛んだ。
昼休み。
いぶきは机に突っ伏していた。肩が小さく上下しているのが見えて、しんどそうなのがすぐにわかった。
昼休み前、いぶきは小さな声で「一緒の椅子にすわって…」と言った。
りんはちょっと驚きながらも、いぶきの後ろにそっと座った。
教室の片隅で、二人きりみたいな小さな空間。
りんはそっと手を伸ばし、いぶきの背中からお腹のあたりを、優しく撫でるように擦ってあげた。
いぶきの体は少し震えていて、触れた手のひらから緊張が伝わってくる。
昼休みの後半になると、りんはふと気づいた。
いぶきの体温がどんどん冷たくなっている。背中も、腕も、信じられないくらい冷えている。
「…このまま放っとけない」
胸の奥で小さく決心が生まれる。
「いぶき…保健室、行こ?」
りんが耳元で言うと、いぶきはゆっくりと顔を上げ、小さくうなずいた。
廊下に出ようとして、いぶきは椅子から立ち上がろうとした。
その瞬間、いぶきの足元が崩れるように力を失った。
「…っ!」
いぶきはそのまま床に倒れそうになった。
周りには誰もいない。静まり返った教室と廊下の境目で、りんは一瞬、不安で体が固まった。
でも――次の瞬間、考えるよりも先に体が勝手に動いていた。
「いぶき…!」
りんはいぶきの体を抱きかかえると、そのままお姫様抱っこの姿勢にした。
いぶきの体は驚くほど軽く、そしてとても冷たかった。
倒れた拍子にフードが少しずれて、青白い顔がよく見えた。
「大丈夫だから…大丈夫だからね…」
りんは心の中で何度も繰り返しながら、ぎゅっといぶきを抱え、保健室へと歩き出した。
足は震えていたけれど、それでもいぶきの重みをしっかりと感じていた。
いぶきは小さく目を閉じて、りんの胸の中で微かに息をしていた。
廊下を歩きながら、りんは頭の奥でずっと考えていた。
どうしていぶきはこんなに具合が悪いんだろう。どうしてズボンに血がついていたんだろう。
でも――確信に変わる思いが、胸の奥で小さく灯った。
「…いぶき、生理なんだ」
姉の体調不良の時と、いぶきの今の様子が、驚くほど重なって見えた。
りんは歯を食いしばりながら、いぶきをお姫様抱っこしたまま、保健室まで駆け足で向かった。
いぶきの体はずっと冷たくて、軽いのにとても重く感じた。
保健室に着くと、辺りをぐるりと見回したが先生の姿はなかった。
「先生…いない…」
焦りと不安で胸が詰まりそうになる。
ベッドの横にいぶきをそっと寝かせる。
震える指で毛布をかけてあげた時、ふと壁にあるホワイトボードに目が留まった。
「先生は休みです。困ったら、自分達でしてください」
黒いマジックの文字が無情に見えた。
「自分達で…って…!」
りんは息を呑むと、すぐ近くの棚に駆け寄った。
戸を開けて、中を漁る。絆創膏、包帯、体温計、消毒液…違う、違うんだ、今必要なのは――。
ごそごそと手を動かしていると、箱の奥に見覚えのあるものがあった。
姉が使っていたのと同じような袋。
――ナプキンだ。
「よかった…!」
胸をなでおろしたのも束の間、体が固まった。
(どう渡したら…傷つけずにすむんだろう)
いぶきは男だ。ずっと男として生きてきた。
なのに今、自分がナプキンを渡すということは――いぶきに「女だ」と突きつけてしまうんじゃないか。
言葉を選びきれず、手の中のナプキンを強く握りしめた。
「りん」
背中から聞こえた声に、ハッとして振り返る。
ベッドに横たわるいぶきが、今にも泣きそうな目でりんを見つめていた。
声が震えている。
「俺って…女の子の日…きた?」
その言葉に、りんは一瞬息を呑んだ。
驚いた。でも、流石のいぶきも気づかざるを得なかったんだ――。
目線を落とすと、ベッドの白いシーツに赤い染みが広がっていた。
りんはゆっくりいぶきのそばに近寄った。
言葉より先に、手を伸ばしてナプキンを差し出した。
「……付け方、大体わかるよな?」
小さな声でそう聞くと、いぶきは恥ずかしそうに、でも確かにうなずいた。
「そっか…」
りんは震えそうになる手で、いぶきの背中をそっと押した。
「トイレ…行っておいで」
言いながら、精一杯の笑顔を見せた。
いぶきは黙ったまま、ゆっくりと体を起こし、ナプキンを握りしめてトイレの方へ歩き出した。
背中が小さく見えて、胸がぎゅっと締めつけられる。
いぶきはトイレから帰ってきた。
ナプキンを手に持って歩いてくる姿は、小さく見えた。顔色はまだ青白く、足取りもふらついていた。
りんはその間、ベッドのシーツを外し、水道で洗っていた。赤い染みはなかなか落ちなくて、手は冷たい水でかじかんでいたけれど、「これくらいしかできない」と必死だった。
「おかえり」
「…うん」
いぶきは短く返事をして、またベッドに横になった。
昼休みが終わる少し前、保健室のドアが開いた。
担任の先生だった。
「いぶき、体調悪くなったのか?」
いぶきは弱々しくうなずいた。りんはその隣に座っていた。
先生の顔が急に険しくなったのがわかった。
そして先生はゆっくりと歩み寄り、いぶきの顔を覗き込む。
次の瞬間、先生は小さく舌打ちをした。
「……チッ」
りんは息を呑んだ。背中を冷たいものが走る。
先生は何の前触れもなく、いぶきをベッドに押さえつけた。
「なっ…!?」
驚いて目を見開くいぶきの口に、無理やり氷を押し込む。
「や…やめっ…!」
いぶきは頭をふり、必死に抵抗したけれど、先生の大きな手には勝てなかった。
「やめてください!!」
りんは先生にすがりつき、制服の袖をつかんだ。必死に引っ張った。でも、相手は大人で力も強い。
りんの手は振り払われてしまった。
「っ……!!」
りんは振り返り、廊下に出て誰かを呼ぼうとした。
ドアノブを握ると、カチャ…動かない。
鍵がかかっていた。
「どうして…!?」
声が震えた。
ベッドのいぶきを見た。
涙がこぼれていた。顔を横に向けて震えている。
先生は低く冷たい声で言った。
「騒ぐな。こうでもしないと止まらないんだよ」
「やめて…お願いです、やめて…!」
りんは泣きそうな声で何度も叫んだ。
でも先生は無表情のまま、もう一つ氷を手に取った。
いぶきの顔は苦しそうで、泣きながら震えていた。
りんの頭の中は真っ白になった。
(僕が…僕が守らなきゃ…!)
震える足で、もう一度先生に飛びかかる。
先生の腕をつかみ、全力で引っ張った。
「いい加減にしろよ、お前!」
先生は怒鳴り声を上げ、りんを乱暴に突き飛ばした。
りんは床に倒れ、肩に鈍い痛みが走った。
それでも、立ち上がろうとした。
目の前でいぶきが泣いている。苦しんでいる。
りんは震える声で言った。
「お願いだから…やめてよ…!
いぶきはもう…つらい思いしてるんだよ…!」
声が震えていた。でも必死に叫んだ。
保健室の中は冷たく静まり返っていた。
いぶきは涙をこぼしながら、小さな声で助けを求めていた。
その声が、りんの胸を深く深く刺した。
りんは必死に先生を止めようとした。
でも、大人の力は圧倒的だった。
先生はりんのほうに体を向けて、ゆっくりと歩いてくる。
「やめて…!やめてください!」
りんが声を震わせて言うと、先生は冷たく笑った。
そして――先生の手がりんを突き飛ばした。
「っ…!」
りんの体は床に投げ出され、背中を強く打った。息が詰まり、痛みと苦しさで体が動かない。
いぶきはベッドの上で咳き込んでいた。
顔は真っ青で、唇も紫色に近い。
氷を無理やり口に押し込まれたせいで、お腹を押さえて小さく震えている。
先生はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ、いぶきに手を伸ばした。
ズボンを乱暴に引き下ろされ、いぶきの下着も引きずりおろされる。
冷たい空気が触れるたび、いぶきの体が小さく震えた。
血の色がはっきりと見える。赤く、鮮やかで、どこか悲しげな色だった。
いぶきは必死に抵抗しようとしたけれど、体に力が入らない。
氷のせいでお腹の痛みが増しているのか、手でお腹を押さえて丸まろうとするが、それすらうまくできない。
先生は無理やりいぶきを立たせた。
いぶきの太ももをつたって、どろっとした血が足元に垂れ落ちる。
ポタ…ポタ…
生理の血がシーツにも、床にも赤い染みを作っていく。
いぶきは顔を伏せて泣いていた。
両手でお腹を必死に押さえているけれど、血は止まらず流れてくる。
先生はそれを見て、なおも楽しそうに笑った。
まるでいぶきの苦しむ姿を見て喜んでいるかのように。
それが10分ほども続いた。
りんは床に倒れたまま、朦朧とした意識の中でただ見ているしかなかった。
いぶきはもう抵抗する記憶も気力も残っていないようだった。
ただただ、お腹をかばうように押さえて、震えている。
ピークのような痛みがきたのかもしれない。
いぶきの体が一瞬強張り、お腹を強く抱え込む。
そして――
ドバッ…
赤黒い血が一気にこぼれ落ちた。
太ももをつたって、床に広がる血の量が増える。
いぶきの顔は苦痛でゆがんだまま、でも声も出ない。
そのとき、廊下にチャイムが鳴った。
4時間目を告げる呼び鈴だった。
先生は顔をしかめ、最後にいぶきを突き放した。
そして何事もなかったように制服を整え、保健室を後にした。
4時間目が終わるころ、別の先生が保健室に入ってきた。
倒れているりんと、半裸で血まみれのいぶきを見て、すぐに声を荒げた。
りんもいぶきも、そのときのことははっきり覚えていない。
ただ――サイレンの音と、救急車の赤いランプが保健室の窓に映っていたのだけは、しっかり覚えていた。
冷たい空気と血の匂いが、ずっと鼻の奥に残っていた。
昨日の夜からお腹の奥がずっとシクシクと痛んでいた。
ベッドに横になっても痛みは弱まらず、むしろ体を動かすたびにキリキリと刺すように痛む。
朝、制服に着替えようとしたけれど、体に力が入らなかった。
冷たい汗が背中を伝って、気づけば視界も少し霞んでいた。
結局、学校に行くのを諦めて、母さんにも言えずに一人で部屋にうずくまった。
布団の中でじっとしていると、どうしようもない不安が胸をしめつけた。
「これって…もしかして」
そう思ったとき、胸の奥がきゅっと縮んだ。
昼過ぎ、インターホンの音がした。
体は動かしたくない。でも、玄関までゆっくりと歩いた。
ドアを開けると、そこにはりんがいた。
小さい頃からずっと隣にいてくれた幼なじみ。
「大丈夫?」
りんの声を聞いただけで、涙が出そうになった。
「ちょっと…お腹痛いだけ」
無理やり笑ったけど、顔はきっと引きつっていた。
りんが差し入れをくれた。ゼリー飲料とスポーツドリンク。
ありがとうって言いたかったけど、喉の奥から声がうまく出なかった。
次の日、学校に行った。
体はまだ重いし、お腹も痛い。でもずっと休むのは怖かった。
「おはよ」って言われて、小さく「おはよ…」と返した。
笑えなかった。なんでこんなにしんどいんだろう。
ふと視線を下げたとき、自分のズボンに赤いものがついているのに気づいた。
「…まさか」
胸が潰れるように苦しくなった。
けれど、声を出す間もなく、りんが自分の腰にそっとジャケットを巻いてくれた。
「…ありがとう」
声は震えていた。
教室に入ると、周りのみんなが寄ってきた。
「大丈夫?」「心配したんだぞ!」
その声は嬉しかった。でも、体が本当にしんどかった。
そのとき、クラスの一人がふざけて俺のお腹をポンッと叩いた。
「元気そうじゃん!」
「っ…!」
お腹に響く鈍い痛み。声をあげそうになったけど、必死に笑ってごまかした。
お腹の奥がギュッと痛んで、背中を丸めそうになった。
昼休みになって、りんに言った。
「…一緒の椅子に座って」
誰にも聞かれないように、小さな声で。
りんは驚いた顔をしてたけど、何も言わずに俺の後ろに座ってくれた。
りんの手が背中からお腹に回って、優しくさする。
それだけで少し楽になった気がした。
でも、昼休みの後半になると、体がどんどん冷たくなっていくのがわかった。
お腹もどんどん痛くなっていく。
「…このままだと、本当にやばいかも」
そう思ったとき、怖かった。
「保健室…行こ?」
りんが言った。
俺はうなずいた。
でも椅子から立ち上がろうとした瞬間、足に力が入らず崩れ落ちた。
視界がグラッとして、床に倒れそうになるところを、りんが抱きとめてくれた。
りんは俺をお姫様抱っこのまま保健室まで走ってくれた。
恥ずかしかったけど、それ以上に苦しくて必死だった。
先生はいなかった。
りんはベッドに俺を寝かせてくれた。
りんがナプキンを探してくれているのが見えた。
俺は力なくベッドに横になったまま、体を小さく丸めた。
「りん…」
声が震えた。
「俺って…女の子の日きた?」
自分で言っていて、涙が出そうになった。
ベッドの下に、赤い血がポタポタと落ちているのが見えた。
りんがナプキンを持って近づいてくれた。
「付け方、大体わかるよな?」
うなずいた。
りんはそっと背中を押して、「トイレ行っておいで」って言ってくれた。
俺は震える足でトイレに向かった。
戻ってきても顔色は戻らなかった。
体はまだ冷たくて、お腹の痛みも続いていた。
りんは俺が寝ていたベッドを洗って干してくれていた。
ありがとうって言いたかったけど、声が出なかった。
昼休みの終わり頃、保健室のドアが開いた。
担任の先生だった。
「いぶき、体調悪くなったのか?」
俺は弱くうなずいた。
でも先生の顔が急に暗くなった。
「…チッ」
先生は舌打ちをして近づいてきた。
「やめて…」
りんが必死に止めてくれた。
でも先生はりんを突き飛ばした。
次の瞬間、先生の手が俺をベッドに押さえつけ、口に冷たい氷を押し込んできた。
「や…めてっ…!」
頭を振って抵抗したけど、力が入らない。
氷の冷たさで体が震える。お腹の奥がズキズキと痛む。
先生はズボンと下着を乱暴に引き下ろした。
冷たい空気が当たって、足の間から血が垂れるのがわかった。
恥ずかしい。怖い。誰か助けて。
でも声は出なかった。
先生は無理やり俺を立たせた。
足元に血がポタ…ポタ…と落ちていく。
生理の血の匂いが自分でもわかって、涙がこぼれた。
お腹を両手で必死に押さえる。
でも痛みがピークに達して、体が震えた。
「やめて…っ」
言葉にならない声が喉からこぼれる。
そして――
ドバッ…
赤黒い血が一気に流れ出た。
太ももを伝い、床に広がる血。
お腹が痛い。苦しい。恥ずかしい。
頭が真っ白になる。
チャイムが鳴った。
4時間目の始まりを知らせる音。
先生は俺を突き放し、そのまま保健室を出て行った。
そのあと、どのくらい時間が経ったのかも覚えていない。
ただ、保健室に別の先生が来て、救急車の赤い光が見えたのだけは、今もはっきり覚えている。
お腹の痛みと、床に広がった血の色だけがずっと頭から離れなかった。