コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
あの後、検査の結果が出たとか何とかで、父と母は医師に連れられ出ていった。
病室には静寂が訪れた。
…検査で何かあったのだろうか、あの医師の表情がとても引っかかる。
なんとなく不安になり辺りを見回すが、 殺風景な部屋はただ不安になるだけだった。
待っているこの時間が酷く長く感じる。 何か時間を潰そうと、近くに置いてあったスマホを手に取ってみると京介からの大量のメッセージと着信が届いていた。
適当にスタンプを送ると即座に、何で学校休んでんの?いまどこ?何してんの?と、質問攻めにされてしまった。
なんだか返すのがめんどくさくなり、後で電話で説明する。とメッセージを送信しそのままスマホの電源を切って元の場所に戻した。
とりあえず横になり、白い天井を見つめる。
窓からは夕陽がさしていて、白い部屋も薄くオレンジ色に染まっていた。
倒れた時は朝だったから、僕は半日近く眠っていたらしい。
それからしばらくして父と母が戻ってきた。起き上がり、声をかける。
「どうだっ…た、?」
両親の表情を目にした瞬間、語尾が震えた。
母さんは泣いていた。目を真っ赤にして。
父さんは、さっきの医師のように暗い顔をして下を向いていた。2人は何でこんな表情をしているのだろうか。さっきとはまるで、別人みたいだ。
何とも言えない不安が腹の底からふつふつと込み上げてきて気持ち悪い。
「ゆき、」
黙っていた父さんが口を開いた。
「来週には、退院できるそうだ」
じゃあなんでそんな顔してるんだよ。
そんな言葉を呑み込み、うん。と返事をする。
「ゆき」
父さんはもう一度僕の名前を呼んだ。
「なに」
言うのを躊躇っているようで、父は口を開きまた閉じる動作を何度か繰り返している。
「父さん、何があったの?」
父の瞳を見つめて僕はそう言った。
何でもないって、大丈夫だって言って欲しかった。そんな言葉を期待していた。
父は1度深呼吸をし、僕を真っ直ぐに見据え告げた。
「病気が、見つかったそうだ」