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さこ吉
1
#小野篁
꒰ঌソラ໒꒱
23
#歴史上の人物
🌟金剛力士象🐘
14
——時は5世紀末のブリタリア。
ケルト民族とゲルマン民族(アングロ・サクソン)の闘争が激化するブリテン島。
エロスが現れたのはウェールズの戦争のど真ん中だった。
南西部に位置するウェールズは険しい山々や渓谷が多い地帯である。右に左に兵士に囲まれたエロスは逃げ場がない。おびただしい数の槍や放たれた矢がエロスを襲った。
不思議とドッグのブラックライダー服には突き刺さらなかった。
エロスはその隙に小高い丘の上に逃げた。苔の生えた森の奥に逃げ惑った。そこにエロスは祭壇のような大きな岩に突き刺さっている剣を見つけた。
後方からは敵が何十名と追ってくる。
エロスはいとも容易く剣を抜き取りバイクを騎馬代わりにして兵士に応戦。
どれくらいの時間が流れただろう…白バイのガソリンは切れピクリとも動かなくなった。
「やはり自然には勝てないな。馬の方が遥かいい」バイクを乗り捨てエロスは応戦する外ない。主人の居なくなった馬に飛び乗りエロスはやむなく戦場へと後退させられた。
刻々と荒野は大勢の死者で埋め尽くされていった。
《G.B.及びU.K.=イギリス》 アングロサクソン人とはゲルマン民族の一派で今日のデンマークとの国境に近い西ドイツの北部に住んでいたアングル人サクソン人の総称である。彼らは5世紀中頃から北海の荒波を越えてブリテン島に侵入、ヨーロッパ全域に及ぶゲルマン民族の移動の一部であった。ローマ帝国は衰えブリテン島のローマ軍は5世紀のはじめに本国へ引き揚げている。5、6世紀のブリテン島は今とは違って至る所にナラやカシワやブナの深い森に覆われていた。アングロサクソン人はブリテン人を追いつめながら侵攻を続け彼らは森を切り開いて開拓しブリトン人を征服した。侵入者達を指揮した強力な首長達は部族の王となり各地に小さな部族国家を作った。これらの小国家はしだいに統合され6世紀末にはおよそ七つの王国となりやがて9世紀前半ばにウェセックス王国が全イングランドをほぼ統一した。こうして今日のイングランドはケルト系民族のブリテン人にかわって北方民族のアングロサクソン人が増幅していったのである。
闘いが一段落ついた今静かな野営の広場。エロスは軍隊に歓迎された。
エロスの後ろから蹄をかつかつ鳴らして隊長の馬が挨拶した。馬上の男は先刻までの戦いによほど疲れたか脚は重くゆっくり降りた。
「ざんっ」甲冑の音が重く地面に反響した。
「貴方のお名前は」隊長は胸に手をあて挨拶と供に尋いた。
「エロス」
「…アーサー」発音が悪くて隊長にはそう聴こえたらしい。
「聞こえないのかっ何でアーサーなんだよっ」
「これからも我が軍に貴方の力をお貸し下さい。アーサー」
最初に会ったこの隊長こそアーサーの最期を看取るべディヴィアだった。年は五十近く百の兵部隊を率いる勇士である。
「俺エロスッ」聞いてんのかっ。
「アーサー貴方こそ我が民の王にふさわしい…」べディヴィアは腰を屈めて深々と敬意を表した。
「あっそっか俺ヘルメットかぶったままだった…それでよく聴こえなかったんだな」エロスは直ぐさまヘルメットを脱いだ。
長い黄金の髪毛がざんと下りて迸る汗が光に透けて輝いて見えた。べディヴィアは予想外に可愛い少年のようなエロスを見て動揺した。
「ど、どうして私ともあろう者が男の彼にときめくんだ…ま、まさか…そんなっ」顔を真っ赤にするべディヴィアだった。
女が男装して戦争に参加するなど考えられない時代。隊長は彼女を完全に男と決めつけてた。確かにエロスのライダー服は最新の鎧姿に見えなくもなかった。
フルフェイスのヘルメットは騎士の胄そのものだ。少年のような顔を見てべディヴィアはこう言った。
「髭は未だのようだな坊や」べディヴィア少しからかうようにエロスの顎に指をあてた。伝説ではアーサーは十五歳で石に突き刺さった剣を抜いたとされる。
「今度は何でガキ扱いなんだよっ俺はもう大人だぞっ」
「しかし子どもとは言え王位を継ぐ者だけが抜き取る事が出来る剣を手にしてる…やはり貴方は」疑いない眼を向ける。
「俺エ…」その時ひとりの兵士がテントの中に飛び込んで来た。
「隊長っ敵はどうやら引き揚げて行くようですっ」
「そうか…我が軍の勝利と新しいアーサー王の誕生を祝おうっ」
こうしてアーサーは王として迎えられた。王の誕生と勝利を祝う宴が始まった。
「はっ俺こんな事してらんない…ベラを捜すんだった」我にかえったエロスは宴席を抜け出し湖の畔を歩いていた。
すると真っ暗な闇の空から一筋の閃光…湖の中に隕石が落下した。
「どっかーんっ」大きな爆発音と共に地震のような揺れが辺りに拡大して森の樹々や獣や鳥たちが俄か騒ぎだした。
「おわっすっげーっ水が干上がってるっ」よく見ると湖の底にはよろけて立ち上がろうとする犬の影。
「ヤバい…ドッグだ」そのおどろおどろしい姿に脅えるエロス。
「やっと見つけたぞっがるるるるっ」ドッグは襲いかかるようにエロスに飛びかかり押さえつけた。
「離せっ馬鹿犬めっ」神にバカと発言が許されるのはエロスぐらいである。・・・鹿だけに。
「なんだとっバカはどっちだっ歴史を変える気かっ」
「まだ何も変わってないよ」
「…とにかくっ」本当にそうか。本当にそうか。
「ベラは何処にいる」
「この時代ではローマだっけかな…あっ」つい口が滑って後悔する犬。慌てて口を押さえるが、
「もう遅い…にやり。明日大陸へ行くぞ」時既に遅し。
「ったく世話の焼ける奴だ」
「ドッグも連れてってやってもいいぞ」
「言われなくてもついて行くっ」犬は「ぼんっ」剣に変身した。
「ドッグ…何にでもなれるんだな」
「男以外はな」喋る剣。
柄頭の部分が犬の装飾になっていた。犬は地上では魔法で何にでも変身できた。
ある時ドッグは女に変身してフランスではジャンヌダルクになった事もある。
だがベラの呪いでドッグは地上では女のエロスと愛し合える男にだけはどうしてもなれなかった。
ベラは魔法は使えないが催眠術だけは得意とする。ドッグは不覚にも刹那ベラの瞳を覗き込んでしまい催眠術にかかってしまったのである。以来ドッグは催眠術でエロスにかかった呪いも解けない状態にあった。エロスは男装は得意でも変身の魔法は使えないのだ。
剣になった犬を手にぶつぶつ独言を言いながら歩くアーサーを見つけ不振に思ったべディヴィアが声をかけた。
「アーサー王何を独りで…」アーサーの手にする剣を見て驚いた。
「おおっそれはっ…聖なる剣がふたつも」
「これ?ああ、さっき湖で拾ったんだ。こっちは戦場で拾ったというか…もういらないからこっちをやるよ。結構頑丈に鍛えてある」 当然後方の剣が伝説の聖剣エクスカリバーだった。
「そうですか…いや私はそっちの犬の頭を象った剣の方が…」
「だって…交換してやろうか」俺は別にかまわないよ。
「だめだっ」ふざけんなっ。
「どうする?本当は犬だってバラそうか」俺は別にかまわないよ。
「どうせ信じない」
「じゃ黙っとく」剣とこそこそ喋るエロスは周囲から見たら挙動不審の変人に映ったに違いない。
「この剣もそう悪くないな」聖剣を貰い受けたべディヴィアは不思議と身体が緊ってくる心持ちだった。大勢の騎士たちが負傷して何らかの故障を持っていても彼だけは怪我ひとつなく長い戦場の刻をやり過ごすことができた。
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