TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


加賀美ハヤト31歳。

生まれてこの方、ここまで買い物を失敗したと感じた事があっただろうか


「はじめまして、貴方が僕を買った酔狂な方ですか?」


到底受け入れられない目の前の光景に息を飲む

奇妙な縁で手に入れた見目麗しい少年型の人形が、この状況を楽しむように笑っていた





【最近の人形は甘党らしいです。】




あれは、一週間前

仕事の関係で地方の片田舎に赴いた際、気まぐれに古びた骨董品店を覗いたのが始まりだった

レトロブームの昨今こういった店は需要が高い

思わぬ掘り出し物との出会いがあったりするからだ

とはいえ、今や古き良き店を都会で見つけるのは難しいだろう


「なんとも興味をそそられますね」


色褪せた看板にワクワクしながら店の引き戸を開けた


「いらっしゃい」


「こんにちは」


入ってすぐ左にレジカウンターがあり、そこで眼鏡をかけた初老の男性が読んでいた新聞から顔を上げてこちらを見た


「……。」


ベタな表現だが『鳩が豆鉄砲を食らったような顔』とはこんな表情の事をいうんだろう

何故か私の顔を見て固まった男性は、数秒呆けた後急いで謝罪の言葉を口にした


「すまない…若いのが来るのも珍しい上に兄さん、えらい上品な顔しとるからびっくりしたわ」


「はは、恐れ入ります。見せて頂いてもいいですか?」


「ああ、もちろん」



店主の言葉に促され商品を見渡す

一番手前にあったショーケースを覗き込むと綺麗な切子グラスやカトラリー、コレクターが欲しがりそうなブランド食器まで破格の値段で売られていた


『…ジノリにノリタケ、こっちはコペンハーゲンにマイセン!?』


いまいち価値を理解していない所も古き良き骨董品店ならでは、なのかもしれない


「食器好きなのかい?」


「あ、いえ母が集めてたもので」


やっぱボンボンか…という呟きが店主の顔を見なくても聞こえてきそうだ


「えっと奥の方には、何を置かれてるんです?」


「ん?あー向こうは、昔のゲームとか子供のおもちゃとかだよ…兄さんには関係な」


「それは面白そうですね!」


今日一番の声が出た

若干恥ずかしさを覚えながらも湧き上がる好奇心には勝てない私

目を白黒させている店主を置いて宝物を探しに冒険へ出掛ける勇者の如く歩を進めた




「あの店主何者ですか!?結構レア度高めのゲームやらカードやら…」


本物のブランド食器といい見る目があるのか、ただの強運なのか


「どちらにせよ大人買い必至ですね」



ドサリと音をたててカウンターに厳選品を置いた私は、満足気に口を開く


「お会計お願いします」


「長い事悩んでたなぁ〜良いの見つかったかい?」


「ええ!素晴らしい、お店ですね!なかなかお目にかかれない物ばかりでした!」


「面白い兄さんだなぁ、正直最初は、ひやかしだと思ったぜ」


「とんでもない!実は私、玩具メーカーに勤めていまして、趣味としても好きですが仕事としても興味あるんです」


「なるほどね〜」


幾分砕けた雰囲気を感じ、無駄に警戒させていたんだなと苦笑する

店主さん、爆買いすることで許して下さい


「それなら、ほれ…これもオマケだ持ってってくれ」


「え?」


グイッと胸に押し付けられたのはアンティークな革製の旅行カバン

四隅に細かく金細工が施されていて年代物の高価なものだとわかる


「こんな高そうな鞄頂けませんよ!」


「いいんだよ、いっぱい買ってもらったし…コイツもなかなか買い手が付かねんだ」


「ですが…」


「珍しい物に興味あるなら面白いと思うぞ?ま、いらなかったらその時は兄さんが処分するなりしてくれや」


「えー…」





最近の人形は甘党らしいです。【かがみもち・咎人】

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

112

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚