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「花月ちゃん、動くの辛いと思うから全部僕がやってあげるね。」
お風呂に入るなりお世話をしてくれる気満々の琉生くん。確かに鞭の跡がヒリヒリと痛んで、腕を上げるのも辛い。
「熱くない?沁みる?」
「ちょっと沁みるけど大丈夫だよ、ありがとう。」
「ううん、どういたしまして。じゃあ頭流してくね。」
誰かに洗ってもらうというのは久しぶりでとても気持ちがいい。年下の男の子に洗ってもらうのに、ドキドキしてる。
「人の髪の毛洗うの初めてだから、なんかドキドキしちゃうね!」
「私もなんかドキドキするよ。誰かとのお風呂は久しぶりだからすごく楽しい。」
「喜んでもらえてるなら僕も嬉しい!」
12歳とは思えないほどのシャワーテクニック。美容師とかそういう路を選んだら絶対活躍できる気がする。
「李仁くんね、親に棄てられちゃったの。」
「え……?」
「李仁くんのパパとママはね、外資系のお仕事してて厳しい教育をしてたの。李仁くんは1人っ子だったから跡をつがなきゃいけなくて……必死に頑張ってて、若き天才って言われていたの。でもね、小さいころから仕事場の人間関係を見てたから汚れた人間とか上辺だけの人間を見てきて嫌になっちゃったの。だからパパとママに反抗しちゃったの。『私は人形になるために生まれたんじゃない。こんな汚い世界に生きていたくない。』って。でも……『子どもは親のためにいきるものだ。できない人間は要らない。』って言われちゃったの。それで李仁くんは気づいちゃったの。自分が大事にされてきたのは家族だからじゃない。後を継ぐためのただの道具だから……。皆の目は自分に向けられていたんじゃなくて、家柄とか地位とかお金とか……自分以外のモノだったんだって。それで、自分には存在価値がないって思っちゃったの。心が無くなってしまったの。」
そんなに重たいものを抱えていたのか……。それなのに私は都合のいいことばかり言って……簡単に、捌け口になりたい、だなんて言って……きっと偽善者に見えたよね。橙さんのこと……何も理解できていなかった。
「その後、路頭に迷っているところをキズちゃんに発見されたの。それで、黒鬼院様と契約したの……って、花月ちゃん、どうしたの!?目の中にシャンプー入った!?」
「ううん…ちが…う…私…とんでもないこと…しちゃった……。橙さんに……あやまらなきゃ……。」
「花月ちゃんみたいに向き合ってくれる人がいるだけで、きっと李仁くんは救われてる。だから、自分を責めないで。」