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他界隈失礼致します
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私は捨て子でした。悲しい子供、虚しい子供、そんな風に屋敷の外では言われていたのかもしれません。そんな私を拾ってくださった執事長には大変感謝しております、だから、その恩返しをすべく此処で忙しく働いている。
旦那様の為なら、旦那様の為ならば、この榊が何でも致しましょう。
ただ、未だにあの光景が目から離れない。
時は遡り、私がまだ執事として一流なんて程遠い時の、そんなお話です。
ある普通の屋敷の朝、旦那様から
「部屋に来るように。」
「かしこまりました。」
いつもの様に一礼して返事をすれば、背中に冷や汗が滲む。
知らぬ間に何かやらかしたか?なんて思い肝を冷やしていれば、後ろから父が
「怒られるような事では無い、安心しろ。」
「…承知致しました。」
父が言うならきっと違うのだろう、そう考え、朝の支度へと取り掛かった。
一通り朝の業務を終わらせれば旦那様の部屋の前へ行き、深呼吸をして、3回扉を叩けば中から
「入れ」
「失礼致します」
ドアをガチャと開け、一礼をした。
そこには父と旦那様が、本当に何があったんだろうか、
「何か御座いましたでしょうか…?」
そういえば、旦那様が父にあれをという、
父が準備している途中、旦那様と対面になるように椅子が置かれた、それに首を傾げていれば、旦那様が座れ、と言うので失礼致しますと返し着席する、本当になんなんだこの空間、なんて思っていれば父の準備が出来たようで、旦那様にある物を渡せば、目の前テーブルにとても鋭利なナイフと革製のシーツが目の前に出された、
「これは……?」
「ナイフとそれを入れるシーツだ、」
どうしてこれを?、という感情が顔に出ていたのか見透かすように旦那様が
「……なぁに護身用だよ。」
「左様ですか…」
最近は物騒な事が多いからな。と言われナイフとシーツを受け取り、腰へとしまった。
「……ッ?!」
「じっとしろ。」
急に白いレースのあしらわれたハンカチで口を塞がれた、ゆっくりと世界が黒くなる、なんだ?!と思えば後ろから父の声で静止の声がかかった。
え?、俺殺される?、折角素敵なものを貰ったのに。旦那様の声で父に向かいあとは頼んだよ。と言っているのが最後に聞こえた。
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目を覚ませば自分の部屋では無い父の部屋で寝ていた。
「……?」
「起きたか、立てるか?」
目を横にすれば父が居た、上記のように尋ねられれば、はい、と返事をしてベッドから立ち上がり、父の顔を見上げた。
「さっきは悪かったな、乱暴なことをして。」
「いえ、構いません、では、私は業務に…」
「待て。」
はい、と言い、停止すれば
「地下室に行くぞ。」
「地下室ですか……?」
この屋敷には地下へと続く階段がある、封鎖されていて旦那様と一部の執事、メイドしか出入りを許されていない場所。小さい頃この屋敷でかくれんぼをした時に地下へ続く階段で隠れていれば父に見付かり大層叱られた。どうして?、と言う間も与えずに父に地下へと続く階段に連れて行かれた。
緊張する、この数十年間入っては行けないとされていた場所へ踏み入れるのは如何せん勇気がいる。
「怖いか?」
「……少し。」
まぁ、そうだよな、と全てを知っているような顔をしている父、一体この先には何が待ち構えているのか、普段はシャンデリアが輝いている煌びやかな部屋とは違い、この先は薄暗く、冷たい雰囲気を纏っている、そんな雰囲気に身震いしていれば、父から
「さっき貰ったナイフを持て。」
父の言われた通りナイフを持った、大丈夫、大丈夫、なんて先程から自分に言い聞かせてはいたが遂にそれも限界のようだ、怖い、先程の言葉で全てを察してしまったから、一気に顔から血の気が引く。
こんな顔をしては行けない、仕事、仕事だから、私はこの家に仕える単なる執事、大丈夫、大丈夫だから…冷や汗が止まらない、そんな俺を見兼ねたのか、階段を少し降りた踊場の所で父が。
「ネス、これを付けなさい。」
目隠しを渡してくれた、父なりの気配りなのだろう、付けようと思っても手が小刻みに震えて結べないのか、それともこの爪の長い手袋のせいか、どっちにしろ中々結べない俺を、父は落ち着け、と言い、目隠しを結んでくれた、世界は真っ黒で聴覚からでしか得れない情報はドクドクと脈打つ自分の心臓の音がうるさいという事だけだ。
階段を父に手を繋がれゆっくりゆっくりと進めば、地下室の扉が開く音、異臭と、叫び声とガンガンと鉄と鉄が叩かれる音しか聞こえない、此処はまるで地獄だ___。
父と自分の足音と叫び声が鳴り響く空間を歩く、実際は1分程だろうが、今の俺には酷く長く感じた。
この永遠と続くような真っ直ぐな道を進めば、複数の叫び声が段々と減り、1つになった、その叫び声は酷く響く部屋、広い部屋。嗚呼、やっぱり。
俺は今“何か”に馬乗りになっている、その“何か”は叫んでいるし、人肌を感じる。
「ネス、手に持っているナイフを両手に持って高く挙げなさい。」
いつの間にか父ではなく、旦那様が近くに居る、
嫌だ、逃げたい、けど命令、旦那様の命令は絶対…。
そう、旦那様の命令は絶対だから。
「そのまま勢いよく振り下げなさい。」
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
思い切りナイフを振り下げ、ぐちゃ、なんてこの屋敷には相応しくない音が聞こえた、顔にはぺちゃ、と間違えなくナイフを引き抜いた時に下から飛び散った何かが顔に付着した、手が震えている、
叫び声ももう聞こえない。
「ありがとう、ネス。
____ご苦労様。」
旦那様から発せられたその一言が怖くて、もう自分は用済みなのでは無いのかと、そう思った途端俺は逃げ出していた。
目隠しをした状態で地下室を出て、自分の部屋に付属している洗面台へ逃げ込んだ、何で此処を選んでしまったんだろう、下を向いていれば視界が明るくなった、目隠しが取れてしまったのだ、恐る恐る鏡を見れば、執事に似ても似つかない血濡れたタキシード、血色の悪い顔に凝り付く血。
「あぁ、ああ、ぅ゛ぁあ゛ぁぁああ゛あぁぁ゛!!!!!」
俺は発狂した、それからのことは余り覚えていない、唯、次の日は休みを貰った、それだけは覚えている。
それから月日は流れ、現在。
今日も今日とて、朝の準備をしていた、すると旦那様から
「大きな荷物が有るんだ、処理を頼んだよ。」
と言われた、
「かしこまりました、いつ頃処理致しましょう?」
んー、と悩む旦那様にアーリーモーニングティーを提供すれば、
「朝の業務が終わってからで良い。」
「かしこまりました、処理が終わりましたら直ちに旦那様に報告致します。」
ぺこ、とお辞儀をすれば旦那様から
「いつもありがとう。」
もう今の私に目隠しなんて必要ない。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
あとがきチックなもの(読まなくてOK)
最後まで読み進めて頂き有難う御座います。
私や俺になっているのは執事モードかメンタル的に限界が来て俺になっているの二択なので間違えではありませんので、ご承知置きを。
ここからは雑談なのですが。
目隠しのする理由を調べてみたら、
【正義の象徴】【法の公正】
という意味があるらしいですよ、さぁ、旦那様に加担しているネスさんには公正という文字が本当にあっているのでしょうか?、それとこれとはまた別の話ですね。
また、処刑される人間も目隠しをされるのはご存知の方が多いかと思います、何故目隠しされるのかと言うと諸説あるのですが、目を閉じる代わりや儀式的、伝統的な意味合いも込めて目隠しをするのだとか、例外として近代に利用されていた皆様ご存知フランス革命で主に使われた処刑方法、ギロチン、ギロチンでは見せしめという意味を込めて処刑をするので目隠しは無いのだとか、怖いですね。
それではまた出会う機会があれば何処かでお会いましょう、さようなら。
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