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自分___いや、俺が男だから


性同一性障害者とかではなく、骨格や顔付きが女性っぽいから勘違いされやすい。

あのんに言ってみようかな

……離れて行きそうで、怖いな


「『あのん、手術…いつ?』」

「『3週間後!急にどうしたの?』」

「『……いや、気になっただけ』」

「『そっかぁ』」


また誤魔化してしまった

失敗するかもしれないと言われている手術だから、3週間の内に伝えておかなきゃ


〔あのんの病室〕


「あのんの余命は3年なの。」

「『……お母さん……さすがに…嘘だよね…?』」

「それまでに、やりたいことをやってほしい」

「『……無理だよ、』」



〔次の日〕


「『ひおり〜!おはよ〜!!』」

「『…おはよ』」

「『???』」


まだあるから、


〔5日目〕


「『ひおりおはよ〜〜!』」

「『……おはよ』」


まだ、あるから



〔10日目〕


「『…ひおりおはよ〜!!今日の朝ご飯久しぶりのお肉だったね〜!』」

「『……ね』」

「『……ひおり…』」


……まだ、まだある…



〔15日目〕


「『…ひおり…?』」

「『……………』」


まだ、大丈夫…



〔20日目・手術日前日〕


「『…ひおり…明日____』」

「『………』」

「『…ひおりも…皆と一緒だったの…?』」

「『…へ、?』」



結局、この3週間で言えなかった



 



  




〔手術日当日〕


「『…ひおり、私……死にたくない…』」

「『……あのん、ずっと話せなくてごめん』」


今日こそ、絶対言うんだ


「『______自分ね、男なんだ』」

「『…そっかぁ』」


「『ひおり、男の子なんだ』」

「『…うん』」




「『___じゃあ、結婚してください』」

「『…え』」


何を言うかと思ったら…マジかよ…

ビックリしすぎて口が閉じない


「『急でごめんね。でも、私はひおりと結婚したい』」


「『…自分にとっての あのん は、嫌いな相手』」

「『………ぇ、?』」

「『凛としてるあのんが嫌い』」

「『自分にだけ元気に接してくるあのんが嫌い』」

「『毎朝挨拶してくるあのんが嫌い』」

「『全部嫌い』」


これは全部本心……多分。

…あのんに今までしてきたことを後悔なく過ごせるよね


「『……やだ、ヤダ…!!』」

「『ひおりはそんな事言わない!!!』」


…違う、これは自分


「『ひおりは…私がずっと話してても何も言わないで聞いてくれる、優しいひおり!!』」


……違う


「『ひおりじゃない…!!』」

「『違う!!!』」

「『…!』」

「『これは全部俺!!お前に指図されようがされまいが全部俺なんだよ!!!!』」



ごめんね、あのん


君より先に、いかなきゃだから



「『…今日で、死んじゃうかもしれないんだよ…?』」

「『…知らねぇよ』」





…ごめん














あのんside


〔手術後〕


「あのん!!!」

「……お母さん…?………私…生きてる…」

「そうよ、生きてるの、!!」

「…そっか」



病気が治った


生きてきた中で、これ程までに嬉しいことは無かったぐらい嬉しかった


けど、涙は出なかった


得意だった笑顔も、何も出なくて


嫌な予感と、悲しい気持ちでいっぱいだった



「ひおり……ひおりは…?」

「…ひおり…?ごめんなさい、お母さんその子わからないわ…」

「……っ」



嫌な予感と私の想像が当ってなきゃ良いけど…


〔ひおりの病室〕


「ひおり…!!!!」

「…あら、あのんちゃんじゃないか」

「おばあちゃん!!ひおりは?!」

「ひおり君なら__」

「そこにいるじゃないか」


ひおりが普段ゲームをしているソファを指差さすおばあちゃん

扉開けたらすぐそこにあるソファなのに、気付かない筈がないと思いながらも指差された方をを向く


「『……』」

「ひおり…!!」


ひおりを見つけた瞬間、ひおりに飛びついた

 

「ごめん、ひおりの気持ち全然考えなかった…!!」

「病気も治ったんだよ?!」

「…ほら、私も生き____」

「『…話してもらってる途中にごめん』」

「『………俺、君の言うひおりじゃないよ』」


ひおりが何を言っているのかわからなかった


「…へ、?」


「『君の言うひおりは、俺じゃない』」

「『確かに名前も同じ。顔も、手足も、髪型も、全部一緒』」

「『でも、中身が違う』」

「……え?」


中身…?中身って何……?


「『俺と、君が言うひおりは、心臓を入れ替えてるからね』」

「『君の言うひおりが、記憶を消してほしいと医者にお願いしたんだって。』」

「『だから今の俺がいる。』」


この人は何を言っているんだろう


「…なんで…?」

「結婚しようって…、頷きかけてたじゃん…」

「私といるの…本当に楽しくなかったのかな…」


もっと一緒に話したかった


「『俺に聞かれても、ひおりのことはわからないよ』」


もっと一緒に走り回りたかった


「『記憶を消してってお願いしたのは、ひおりなんだから』」


もっと喧嘩したかった


「知ってる…知ってるよ…」


もっと一緒に、ご飯を食べたかった


「『なら、部屋戻りな』」


もっと一緒に…、


「…ヤダ」


もっと……


「『ヤダって言われてもなぁ』」


…この人はひおりじゃない


ひおりじゃないけど、ひおりなんだ


なら、一緒に死んじゃえば


難しい事とか、全部関係無くなる


    ・・・・

「なら、ひおり君にお願い」

「『なぁに』」

「一緒に、死んでほしい。」


「『…俺が、ひおりの代わりってことね』」

「…うん」


「『良いよ』」

「『それが望みなら』」


一瞬、本物のひおりが見えた気がした


「『6階のトイレの窓から落ちよう』」





「…ひおり…怖いよ……」

「『…俺がいるから、怖くない』」



私はひおりが好き


ひおりは、…わからないけど


この人はひおりじゃないけど


ひおりが一瞬でも見えたから、それで良い


「『…俺の最期は、ひおりを演じなきゃなんだね』」

「良いって言ったでしょ」

「『…そうだね笑』」


ねぇ、ひおり


何も考えずに色々言ってごめん


私の気持ちばっかりぶつけてごめん




私は、ひおり君と一緒に


堕ちました





















〈昨日、夕方4時30分に〇〇市耳元病院で入院していたあのんさん、ひおりさんの遺体が発見されました〉

〈死因は自殺とみて______〉



「…自殺…」



「あのんは、最期まで俺のこと大好きなんだね」









END

この作品はいかがでしたか?

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コメント

3

ユーザー

あのんの病気は治療法が少なく、タヒぬ確率が多かったあのんが生きれたのは、あのんの病気を治す為に使う予定だった人の臓器と、ひおりが使うはずだったひおり君の臓器を〝ひおりが〟入れ替えた為。自分(ひおり)が死ぬかもしれない状況であのんにひおり君の臓器を渡したのは、「俺よりも生きてほしかった」「結婚破棄してごめん」という暗示。 ひおりは誰よりも優しい男の子です。

ユーザー

急にひおりとあのんが仲良くなったのは、「この人になら何でも話せそう」という勘。 ひおり君→会ったばっかりのあのんを何でも受け入れ、せっかくひおりと入れ替わったのにタヒを受け入れたのは、入れ替わったとしてもひおりの身体なので、ひおり君の本当にしたいことをひおりが邪魔し、あのんとしたかった〝心中〟をひおり君の身体でひおり自身が実装しました。

ユーザー

ひおり=今まであのんと暮らしていたひおり ひおり君=記憶を無くし、心臓を入れ替えた後のひおり。 最後の台詞は、ひおり君の前の身体にひおりが入れ替わったから。 最初は ひおり⇒⇒あのん だったが、最期は ひおり⇒⇒⇒⬅⬅⬅⬅あのん みたいになってます(?) あのんはメンヘラ、ひおりはサバサバしてるけど依存体質。

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