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ruruha
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#元カレ
まぁ
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「リリー。お前、最近なにやら『音楽』に傾倒しているそうだな」いつもと変わらない静かな朝食の時間のはずだった。
学園が夏休みに入り、久しぶりに家族全員が顔を揃えた朝の食卓。けれど、父の一言によって、胸に広がりかけていた穏やかな心地よさは一瞬で吹き飛んでしまった。
……一体どこから情報が漏れたのだろう。さすがは、この国の政治を実質的に動かす宰相でもある父だ。その情報網はあまりにも抜け目がない。
「ただ楽器に触れるだけでなく、歌まで歌っているとか」
「あ、あの……少しだけ……興味が出てまいりまして……」
「それは、公爵家の令嬢たるお前の将来において、真に必要なことか? すでにガルム公爵家から正式な婚約の申し込みまで来ているのだぞ。今のお前が優先して成すべきことではないはずだ」
氷のように冷たく鋭い声が、胸の奥を深く突き刺す。
何も言い返せなかった。貴族の令嬢としての務めは、家門の名誉と地位をより強固なものにすること。そのために幼い頃から厳しい教育を受けてきた。そこに「音楽」などという道楽が含まれていないことくらい、私自身が一番よく分かっていた。
「必要がないのであれば、やる意味もない。……やめなさい」
その短く無慈悲な言葉が、鉛のように重くのしかかる。
「やめろ」という父の声が、頭の中で何度も、何度も冷たくこだまする。
……そうだ。貴族としての私に、音楽なんてこの先必要ない。
ほんの少し、今だけ物珍しさから興味を持っただけ。
だから……ここで素直に頷いて、諦めればいいはずなのに。
「───お言葉ですが、父上。私は、音楽をやめるつもりはございません」
「……なに?」
父の険しい視線が射抜くように突き刺さる。けれど、私は二度と目を逸らさなかった。
生まれて初めて、私はこの絶対的な存在である父に対して反抗したのだ。
「確かに、公爵令嬢としての嗜みを超える音楽など、不要なのかもしれません。ですが私は……その胸を揺さぶるような素晴らしさに触れてしまいました。もう、それを知らなかった頃の自分には戻れません。たとえどれほど否定されようとも、私は音を奏でることをやめたくはありません!」
重苦しい沈黙が、食卓の空間を支配する。
その張り詰めた静寂を破ったのは、母の優しい声だった。
「まあ……あんなにおとなしかったこの子が、そこまで夢中になれるものに出会えたなんて。私はとても嬉しいわ。自分の本当の気持ちをはっきりと口にできるようになったのも、立派な成長だと思いますよ、あなた」
「そうだよ父さん! リリーは音楽の話をしている時、本当に楽しそうな顔をするんだ! それなのに『やめろ』なんて……あんまりだよ!」
母と兄が、私を庇うように声を上げてくれた。
父はしばし静かに目を閉じ、やがてゆっくりと威厳に満ちた口を開いた。
「……そこまで言うのであれば、私を納得させるだけの演奏をしてみせろ」
「……納得、ですか?」
「そうだ。やはり不要な道楽だと判断すれば、即座にやめさせる。────ちょうど一週間後、国王陛下とともに学園へ視察に赴く予定がある。その場で、私の前にて演奏してみせろ」
「なっ……! 父さん、それはいくらなんでも無茶だよ! 当日は厳重な護衛や関係者で、かなりの人数になるはずだ。リリーがそんな大勢の前で急に演奏なんて――」
「それほど威勢よく口答えしたのだ。お前ならば当然、できるのだろう?」
父の漆黒に若干の青みを帯びた瞳が、私をまっすぐ射抜く。
あんなにも冷たく美しい色をしていたのだと、今更のように思い知らされる。……これまで父の顔を直視することすら恐れていたせいで、忘れていた景色だった。
これは、最初で最後のチャンス。
「落ちこぼれ」としてしか見られていなかった私が、初めて父に“一人の人間”として見てもらえた瞬間だった。
「……分かりました。お受けいたします」
「リリー!?」
「無理をしなくてもいいのよ……?」
ごめんなさい、お母様、お兄様。
せっかく私を心配して止めてくれているのに……。
けれど、伝えたい。
厳格な父上にも、私が出会ったこの音楽の素晴らしさを。私が私でいられる奇跡の音を。
「大丈夫です。一度口にしたからには、最後までやり遂げてみせます。私にとっての音楽の価値を、証明してみせますわ」
⸻
放課後。私は南棟の四階――“楽園”の扉を思い切り押し開けた。
「――というわけで、皆さんの力を貸してくれませんか!?」
コメント
1件
しろのねさん、第16話最高でした…!🌸✨ リリーが父上に「やめるつもりはございません」って初めて反抗したシーン、震えました😭💕 あんなに厳格な父に向かって自分の意志を貫く姿、めっちゃカッコよかった…! お母様とお兄様が味方になってくれたのも涙腺に来たし、「初めて一人の人間として見てもらえた」ってリリーの気持ち、すごく伝わってきたよ。 一週間後の演奏、絶対成功させてほしい!楽園の皆とどうやって挑むのか、次が待ちきれないよ〜!🎶