テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
親友のいる病院からの帰り。バスに乗って駅に。
「…ふぅ〜…」
駅でようやく息が吸いやすくなる。病院へ向かうためにバスに乗り込んだときから
胸がグッっと、なにか太い輪ゴムのようなもので縛られたように締め付けられ
息をするためにしずらくずっと深呼吸だった。それは病院に近づけば近づくほど締め付けていき
病院についた頃には深呼吸をコンスタントにしなくては息が吸えないほどになっていた。
病院の敷地内に入ったら過呼吸の1歩手前になる。
親友のご家族が面会に来ていたら、会うといろいろ気まずいので
顔見知りとなっている受付の人にご家族が来ているかを聞いてから
もしご家族が来ていたら、時間をズラしてから親友に会いに行く。
面会の欄に名前を書いているときから胸が苦しく、意識が薄れ
病院のエレベーターに乗るときも、廊下を歩くときも胸は苦しく
看護師さんたちの話し声が聞こえて、今いるのは現実なんだと思い知り
さらに苦しくなり、病院の機器の電子音なんかが聞こえ、吐きそうになる。
慣れたくなかった道順で、親友のいる病室の前に来て
いないでくれ…
と毎回願いながら病室に1歩足を踏み入れる。
もし病室に入って親友がいなかったら、長い長い悪夢だったんだと笑える。
それかどこかで別の世界線、パラレルワールドの自分と入れ替わってしまって
しばらくこの辛い世界で生きてきたが、きっとどこか、たとえば病院のエレベーターに乗ってドアが閉まり
開いたときに元いた世界線に戻ってきたため病室に親友はいなかった。なんてことになればいいのに。
そしたらそんな話を、元気でいつも通りな親友に話して
「嘘つけ」
と笑う親友に
「いや!マジだから!」
と必死に説明して笑い合う。そんな日常が戻ることを期待していた。
神にも仏にも、ご先祖様にも懇願した。夢でってくれ。パラレルワールドであってくれ。
そしてそんな悪夢から醒めさせてくれ。辛すぎるパラレルワールドから元の世界に戻してくれ。と。
しかし病室にあったのは、重く苦しい現実で、押し潰されそうで、世界がモノトーンに感じて
病院を出て、バスに乗り、駅で降りたとき、始めて世界に色が戻り、息が吸いやすくなった。
「…すうぅ〜…」
鼻から息を吐き出す。胸の苦しさを薄めるために深呼吸を繰り返す。
また夢から醒めなかった。また元の世界に戻れなかった。
まだ悪夢は続くようだ。また苦しい世界線で生きていかなければならないようだ。
淡い期待に今日も手が届かず、また暗く辛い試練ばかりのある迷路のスタート地点に戻された。
駅をとぼとぼ歩く。世界は昨日と全く同じように繰り返されていた。
親友と笑い合っていたあのときとも同じように。世界はまるで
「あのときとなにも変わっていませんよ?」と言っているかのような表情でいる。
友達同士で笑い合う者。仕事へ向かうためにいそいそとスーツ姿で歩く者。
そんないつも通りの世界にいると、なおさら「ここは別の世界なんだ」と思ってしまう。
自分だけがこんなに苦しいなんて、自分より優れていて優しくて、そんな親友がいなくて自分がいるなんて。
そんな親友がいなくて、犯罪を犯しても捕まってないやつががいるなんて。
そんな親友がいなくて、犯罪を犯して、服役して、刑期をまっとうして
でも反省せずに世に出てくるやつがいるなんて。
そんな親友がいなくて、親友の家族は大変なのに芸能人は楽に大金を稼いでいるなんて。
そんなことが頭を駆け巡り、この世界のすべてが嫌になる。
流来が1番嫌だったのが、行き交う人々、老若男女関係なく
歩きスマホをしている人が多かったこと。世界は歩きスマホで溢れていた。
まるでスマホに取り憑かれているかのようにスマホの画面を見ながら歩いている。
取引先とのメールなのかもしれない。上司とのLIMEなのかもしれない。
重要なことかもしれない。ただ、もしかしたらただの友達とのLIMEかもしれない。
好きな人とのLIMEかもしれない。恋人とのLIMEかもしれない。もしかしたら、ただの暇つぶしかもしれない。
ゴミみたいなショート動画を見てスクロールして、また似たような動画を眺めてスクールして
そんなくだらないことをしているだけなのかもしれない。
重要なことだろうが、日常だろうが、くだらないことだろうが、側から見たら同じ。
スマホを眺めながら歩いているという事実だけ。
流来はやるせなくてムカついて、バッグからマスク(仮面)を取り出して顔につけた。
「今日の昼なに食う?」
「ん?あぁ〜…ステーキでいいんじゃね?」
「あぁ。柔らかいやつな」
#創作
むノー
1,051
M.S
711
✦
#マフィア
ゆあ
2,809
「脂甘くて軽いやつ」
「お前脂甘いとか軽いとかわかんねぇだろ」
「頼んます夢天(ゆあ)様ぁ〜」
「え、あぁ。いいよ」
「「っしゃ!」」
「さすが夢天様。財布も懐も広い!」
「意味わかんねぇよ」
と大学生の集団が笑いながら歩いている。中には歩きスマホをしている者もいる。
そんな笑いながら歩きスマホをする大学生たちのスマホだけを
踵落としで地面に叩きつけた流来。歩きスマホをしていたのは2人いたので
もう1人のスマホは回し蹴りで、もちろん手にはあてず、スマホだけを蹴り飛ばした。
蹴られた2人、そして周りにいた大学生も、一瞬なにが起きたかわからず
「は?」
という言葉を発するだけだった。しばらくして状況を把握し
「おい!」
と蹴った流来に声をかけたが、流来はまるでバトルマンガやアニメ、異能力系のマンガやアニメ
異世界転生もののマンガやアニメに1人はいる、仮面を被ったキャラのように仮面を被っており
その仮面も白ベースに青や赤の絵の具がついており、仮面自体の表情は笑顔なので、非常に不気味だった。
「なんだこいつ」
まるでバトルマンガやアニメ、異能力系のマンガやアニメ
異世界転生もののマンガやアニメのキャラのようなセリフを吐く大学生。
「蹴りの練習してただけなのに、そっちが勝手に突っ込んできたんですよ」
「は?」
「なに言ってんだてめぇ」
怒りで殴ろうとした大学生だが、流来が周り見るように手で促す。
そこで大学生は駅構内だということに気づく。中には
「撮影?」
とか言いながら流来たちを見ている人もいた。それを見て半歩踏み出した足を戻す大学生。
「じゃ。また歩きスマホしてたら目の前に現れるんで。そのときはよろしくです」
と言いながら歩き出す流来。
「悪魔かよ」
と言って、スマホを拾う大学生たち。
「うっわ。画面欠けてる」
「オレケース欠けた」
「ヤバ。顔くらい見ときゃよかったな」
「だな。ぜってー犯罪犯すから、見つけたら「オレたちも被害に遭いましたー」とか言って」
「それいいな。んで、MyPipeで「絶対許しません」みたいな動画出してMyPiperの仲間入り」
「いいじゃんいいじゃん」
なんて大学生たちは話していた。流来が大学に着くと、入り口の前で
「あ」
「あ」
杏時(あんじ)と会った。
「杉木(すぎ)くん、おはよ」
「あぁ、おはよう」
挨拶を交わして一緒に校内に入る。
「杉木くんっていっつも早いですよね」
「あぁ…。まあ、そうかもですね」
「いつも真っ先に美術室に行くんですか?」
「まあ、そうですね」
「でも1限から講義ないときもあるじゃないですか。そういうときは」
「あぁ〜…。美術室で寝てるかもっすね」
「え。あぁ。家で寝てたりしないんですか」
「家で寝ると確定で講義飛ばすんで」
「あぁ〜。流来くんて真面目ですよね」
「見た目に反してね」
「いや、そんなことは…」
なんて雑談をしながら流来と歩いていたら杏時も美術室の前まで来てしまった。
「今日1限あるんですか?」
と聞く杏時。
「あぁ。はい。ありますね」
「じゃあこれから講義室に」
「っすね」
と言いながら美術室のドアを開ける流来。杏時もなんとなく流れで入る。
「1限あるときも毎回美術室には寄るんですか?」
と聞く杏時。
「あぁ。そっすね。あ、テキトーに座っててください」
と流来に言われ
「あ、ありがとうございます」
と近くのイスに座りながら
自分ん家(ち)みたいに
と思う杏時。流来は荷物を置いて、キャンバスを乾かす棚に向かっていく。
「絵の具乾いてるか。とか見てるんですか?」
とキャンバスを置いている棚からキャンバスを少し出して眺める流来に聞く杏時。
「そ う で すね。ま、今日で終わるか」
と棚にキャンバスを戻す流来。
「事前に見るのなんか意味があるんですか?講義終わってからでもいいんじゃ」
「ま、そうなんですけど、乾き具合と進み具合を見て
今日中に終わるようだったら、次描くやつをどうしようかって講義中悩めるんで」
「あっ。…なるほど」
「ま、基本絵の具塗り始めたら終わり近いんで、次描くもののモチーフとか決めてますけど。
たまに修正したいと思う箇所や、ガラッっと変えたくなるときもあるので。
昼の青空だったのを夕暮れの空にしたくなったり」
「へぇ〜」
と納得しつつも
ちゃんと講義を聞くという選択肢は端(はな)からないのね
と思う杏時。
「でも、汝実(なみ)が言ってましたけど、描いてるんですよね?いつも。スケッチブックに」
「…」
「汝実」と言われて
あ、汐旗(しおはた)さんか
と苗字に結びつくまで少し時間がかかった。
「まあぁ。描いてますけど、あれはなんというか…練習?なんで。画力上げるための」
「あ、なるほど。そうなんですね」
「はい。ま、もちろん次描くモチーフの練習もしたりしますけどね。角度だったり影だったり。
ただだいたいは画力上げるための練習です」
「そーゆーことなんですね」
「そーゆーことなんです。…どうします?講義室行きます?」
「あ。あ、もういいんですか?
「はい。チェックしに来ただけだったので」
と言いながらも
ま、いつもは道具出したりといろいろしてから講義室行くけど
と思う流来。
「じゃ、はい。講義室行きましょうか」
ということで美術室を出て講義が行われる講義室へ向かった。
講義室に入ると芽流(める)が先にいて、杏時は芽流の横へ行く。
流来は少し離れた位置のテーブルのイスに座る。もちろん明空拝(みくば)はいない。
あいつ、1、2限の講義終わりだろ
と思いながらスケッチブックを出して絵を描き始める。
しばらくして汝実と希誦(きしょう)が講義室に入ってきて1限の講義が始まった。
それぞれ2限は空きコマだったりもしたが、お昼までの講義が終わり、それぞれお昼ご飯へ。
明空拝はお昼まで大学に来なかったので、美術室で1人でご飯を食べた。
「あ。杏時」
大学校内の食堂で希誦が杏時に言う。
「ん?」
「ランニングの話だけどさ?」
「あぁ」
「あ。あの話生きてたんだ?」
と汝実が言う。
「ま、生きてたかはわかんないけど、こないだ思い出した」
「逝きかけじゃないっすか」
と笑う汝実。
「いやなんか、またランニング楽しくなってさ」
「お。それは生まれ変わったからですかい?」
「それはある」
「とのことですが、杏時の中では、ランニングの話生きてた?」
「あ、うん。覚えてはいたよ」
「お。じゃいつがいい?」
「えぇ〜っと…。あのさ?しょうちゃん、時間あるときにでいいから
ランニングウェアとか一緒に見に行ってくれないかな?私わかんなくて」
「ん?あぁいいよ」
「じゃあ、大学の後4人で行く?なんか予定ある?」
「私はないけど」
「私も大丈夫」
「私も平気」
「しゃー!ならみんなでランニングウェア選びじゃい!」
と盛り上がっていた。お昼過ぎに明空拝が大学に来て、美術室で流来と2人で過ごしていた。
流来が絵を描きながら、ゲームをする明空拝と話したり、2人でゲームをしたり。そんな中
「あぁ…。なんかお菓子ほしくない?」
という明空拝の提案で、2人でコンビニへ行くことにした。
「いやぁ〜…うまかったぁ〜…」
「それな?和牛サーロイン、最高っ!」
「たださ、ぶっちゃけ飽きそうじゃね?」
「あぁ〜わかるわ。今度高級蕎麦とか食べる?」
「あぁ〜、ありだな。だたぶっちゃけ、高い蕎麦と安い蕎麦の違いなんてわかんねぇ」
「それな!麺つゆにつけて食ったら味一緒」
「それ」
なんて大笑いしながら話す大学生と
「コンソメ派?うすしお派?」
「のりしお派」
「珍しっ。ふつーコンソメ派かうすしお派の2強じゃない?」
「のりしお派に謝れってかのりしおに謝れ」
「ごめんのりしお」
「素直かよ」
と話しながらすれ違う流来と明空拝。
すると大学生のうちの1人が立ち止まり、振り返り、流来と明空拝を見る。
「今朝の…」
と呟く。
「はあぁ〜あ。飯食ったら眠くなったわ。今朝のあれも思い出したら腹立つし。
カラオケかどっか行かね?ホテルでもいいわ。ゆっくりしたい」
「いいね。賛成。参戦決定!」
「え、この後講義あるじゃん」
「いいよ1、2回くらい休んでも平気だろ。夢天は真面目なんだよ。そーゆーとこだぞ?行こうぜ?」
「あ、でも僕は講義行く、けど」
「えぇ〜…。んじゃ、オレたちだけで行ってくるわ」
「うん」
「じゃ、夢天、またLIMEするわー」
と夢天と呼ばれた子以外は遊びに行った。
「…あの匂い。たぶん今朝のマスクしてた子だよな…」
と呟きながら天夢は大学へと向かった。
コメント
3件
うわ〜…第18話、めっちゃ重くて苦しくて、でも美しい回だった…😭💔 流来の病院での息苦しさとか、パラレルワールド願望とか、もう胸がギュッてなったよ…。親友がいない世界で生きてくしかないって現実、想像するだけで辛すぎる。それなのに歩きスマホしてる人たちへの怒りが爆発するところ、あれは流来の「自分だけこんなに苦しいのに」って叫びなんだろうなって思った。 仮面つけてスマホ蹴り飛ばすシーン、めっちゃカッコよかったけど、それだけ追い詰められてるってことだもんね…。杏時との美術室の会話とか、日常パートとのギャップがまた切なさ倍増させてるよ😢 最後の大学生の「あの匂い」ってセリフ、次回が気になりすぎる!💦