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男の子と別れたあと、特にすることもなかった私はベンチに腰掛け、満開に咲く百合の花を眺めていた。

まだこの場所が残っていたことに驚き、複雑な気持ちになった。

そういえば、あの男の子の笑い方…。誰に似ていたんだろう。大事な記憶が無くなったみたいに苦しくも悲しくもなくなった。

それからは、ぼーっと空を眺めたり百合の花を眺めたりしていた。

気がつくと辺りは暗くなっており、慌ててすぐ近くに置いたはずの自転車を見た。

なかった。自転車がなかった。

途端に恐ろしいことを考えた。私がぼーっとしている間に誰かが自転車を盗んだのだろうか。だって男の子と別れたときはまだあったのだ。そう考えるしかほかはない。それに私は自転車の鍵をかけ忘れていた。どうせ近くに置くし、すぐに帰るつもりだったから。

もしかしたらと思って公園の隅々を探したけれど、自転車が見つかることはなかった。

仕方なく歩いて家に帰り、お母さんが帰宅するまでリビングでテレビを見ることにした。

テレビをつけるとそこには太平洋戦争の、戦時中の国民の生活の様子が流れていた。

『ぜいたくは敵だ!』『欲しがりません勝つまでは』などといったスローガンの看板が街中に立てかけてある。

私はふと、これらを見たことがある、と思った。社会科見学で見たのかな…?と思ったが確かあそこは『特攻資料館』だ。そんなものはなかった気がする。

そこで一気に鳥肌が立った。

「特攻…資料館…?」

口に出して呟いてみる。別にそれ自体はどうでもいい。ただ、『特攻』という言葉に妙に聞き覚えがあった。

そのとき、キーンと頭が痛くなった。私は咄嗟に違和感を覚えた。きっと何か大事なことを忘れているのだ。絶対に忘れてはいけないことを、私は今確実に忘れてしまっているのだ。そう直感的に思った。

でもどんなに頑張っても思い出せない。悔しくなって必死に思い出そうとすると頭が痛くなる。

もうどうすればいいのか分からず、ただただ泣きじゃくるしかなかった。

あの花が咲く丘で君とまた出会えたら。(創作)

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