南と春香は、倉庫の裏手で並んで座っていた。
春香が持ってきた飲み物をふたりで分けながら、笑い声がぽつぽつと響いている。
「南ちゃんって、意外と真面目なんだね」
「えっ、そうですか? 春香さんこそ、話しやすくてびっくりしました」
そんな軽いやりとりの中、入口の方から足音が近づいてくる。
南がふと顔を上げると、ひろと恒が並んで歩いてくるのが見えた。
春香も気づいて、ぱっと顔を明るくする。
「あ、ひろじゃん。久しぶり!」
その声に、ひろは一瞬だけ足を止めた。
表情は変えない。
でも、目がほんの少しだけ揺れる。
恒はそのまま歩き続け、作業台の方へ向かう。
春香の声にも、ひろの反応にも気づいていない。
ひろは、ほんの少しだけ間を置いてから歩き出す。
春香の前を通るとき、声を返す。
「……うん、久しぶり」
語尾が少しだけ硬い。
春香は気づいたような、気づいていないような笑顔でうなずく。
南は、ひろの様子を見て、少しだけ首をかしげる。
でも、何も言わずにそのまま立ち上がる。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!