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カチャンッ 少しでも身じろぐと、頭上から固く冷たい金属音が響く。俺が今いる部屋は、ほとんど家具もなくただ白い壁とフローリング、小さなテーブルとポツンと置かれたベッドがあるのみの殺風景な部屋だった。
ユラユラと揺れる分厚い遮光カーテンの隙間からは、ほんのりと青白い光が入ってきていて、今が夜だと教えてくれていた。そんな部屋の中で俺は、両手を手錠で繋がれており、それが天井まで続く鎖で固定されている状態だった。
「アイツ…何考えとんねん……」
部屋に響く虚しい俺の声に、誰かが答えることも無くただ時間が過ぎていく。何故こんなことになったのか…俺自身にもよく分からない。ただ、昨日は仲間と楽しく酒を飲んで、上手い肉を食べて……それだけだったはずだった……。ただ酒を飲みすぎて、動けなくなってしまったことを除けば、いつもと変わらない夜だった。
飲みすぎる……それも不可解だった。俺はそもそも酒に強くないので、ちゃんとギリギリ帰れるラインを見極めて飲むようにしている。だから、昨夜のように足腰が立たなくなって、誰かに担がれるようにして帰るなんてことはほとんど記憶にない。
「なんであんなに酔ってもうたんやろ……」
「……理由……知りたい?」
「っ……お前!!」
いきなり聞こえてきた声に、俺は視線を向けて強く睨んだ。部屋の入口には、ドアに背中を預けて腕を組んでい立っている、クソ生意気なガキが立っていた。実際には年齢がそこまで違う訳では無いが、言動が子供っぽくて実年齢よりも幼く見えるソイツは、ここの家の主で俺をこんな風に吊るした張本人でもあった。
「お前な……とりあえずこれ外せや」
「ダメだよー取ったらせんせー逃げちゃうじゃん」
「逃げるってお前……何考えとん!」
「何考えてるか……ね」
意味深に呟いたりぃちょは、おもむろに俺の目の前に移動すると、ソッと顎を持ち上げてきてゆっくりと顔をかたむけた。
チュッ……チュクックチュクチュレロレロ
突然口付けられて、目を閉じるのも忘れている俺の目の前には、幼さの残るりぃちょの顔があった。その瞼はうっとりと閉じられ、時折まつ毛を震わせていた。しっかりと深く合わせられた口は、容赦なく舌で蹂躙され、執拗なまでに口内を愛撫されていた。苦しくて少し舌を出すと、ソレを優しく甘噛みされ、甘い痺れが腰の辺りに集まっていくのを感じた。どのくらいそうしていたかは分からないが、体感としてはかなり長いあいだ唾液を交換し合うような口付けをして、名残惜しそうに水音を立てながら離れていった。
「せんせーとこういうこと……したいなって」
「っ……どういうことやねん!!!」
「だから……せんせーといやらしい事…したいんだよね」
「はぁ?ふざけんのも大概に……って……なっ」
りぃちょの言葉に反論しようとすると、急に真剣な顔になったりぃちょに、着ていたシャツのボタンを外されはだけさせられてしまった。そして、抵抗をすることも出来ずにいる俺を嘲笑うかのように口元を歪めて、ゆっくりとなぞるように体に指を這わせられていった。その、ゾクゾクするような感覚に、先程の口付けで少しだけ熱を持ち始めていた俺の身体は、俺の意思とは関係なく徐々に反応を見せてしまう……。りぃちょがそれを見逃してくれるわけがなかった。
クスッと小さく笑うと、じっと俺の目を見つめて聞いたことがないほど甘く掠れた声で囁くように話しかけてきた。
「せんせ?感じてるの?」
「なっ……そんなわけないやろ!」
「でもほら……ココ……硬くなってる……」
「っ……ぁっ……」
服の上からツーっとなぞるように熱く存在を主張し始めていた俺自身を触られ、ビクンっと全身を震わせて反応してしまった。抵抗したいのに、いまだに拘束されたままの両腕は動かす度に金属音を立てているだけで、なんの抵抗にもならない。悔しくて唇を噛んでいると、それに気づいたりぃちょに、優しく下唇を舐められた。驚いてりぃちょを見ると、クスッと困ったように笑って耳元で甘く囁かれた。
「ダメだよ……傷ついちゃう」
「誰のせいやと……!」
「せんせーは素直に身を任せてくれたらいいから……」
「なっ……やめっ、……」
俺の返事を待たずに、慣れた手つきでスルスルと俺の身体から身にまとっていた衣類を剥がしていく。上に着ていたものは、手首の拘束を片方ずつ外しながら脱がしていく。片方だけ自由になった瞬間に抵抗を試みたりもしたが、その可愛らしい顔からは想像できないくらい強い力で掴まれ、ビクともしなかった。
あっという間に一糸まとわぬ姿にされ、恥ずかしくても隠すことも許されずただ俯くことしか出来ない。何よりもこの非日常的な状況に、頭が追いついていなかった。目の前にいるりぃちょは、いつも仕事を共にする仲間のはずなのに、知らない男のような顔をしていて少しだけ恐怖を感じた。
「あぁ……ほんとに綺麗なカラダしてるよね……」
「んっ……変な……触り方やめっ……ぁっ」
「このくらいで騒がないでよ……これからもっと凄いことするんだから……」
「お前……まさかっ……ぁっ」
「クスクス……せんせーだって期待してココ硬くして…」
「ゃっ……んっ」
「クスクス……かわいい……」
クチュッ……チュポチュポチュポ……クチュクチュクチュク
「んぁっ……んんっ……ぁん……」
「クスクス……先走りでグチャグチャだね……」
「だまれっ……ぁ……ん……」
「可愛い声……もっと聞かせて……」
硬く天井を指していたソコを手のひらや指で弄ばれ、自分のものとは思えないほど甘い声が漏れていく。それに満足そうな笑みを浮かべるりぃちょは、楽しそうに手の動きを早めていく。それに合わせるように、自然と腰が揺れて快感を追ってしまう。そんな自分に少し嫌悪感を抱きながら、一気に上り詰めるような感覚に身を任せて行った。
あと少し……という所で、キュッと根元を抑えられ行き場を失った熱が全身を駆け巡るように逆流してくる。その感覚に身体を震わせながら、自然と溢れてくる涙を拭うことも出来ぬままりぃちょを睨みつける。何故そこで止めるのかという不完全燃焼のような怒りと、このような状態にさせている事への怒り。色んな感情がないまぜになって溢れ出てくる。りぃちょはそれを知ってか知らずか、小さく笑って頬を流れていた涙を舌で拭うように舐めとっていった。
「ほんと可愛い……ねぇ……せんせ?」
「お前……ほんと何がしたいんや……」
「俺?俺はせんせーを俺のにしたいだけだよ?」
「はぁ?」
思いもしなかった答えに、間抜けな声が出た。目を見開いて驚きを隠せない俺に、りぃちょは困ったような照れた顔をした。その年相応な幼さの残る表情に、一瞬絆されかけて我に返る。そもそもこの状況に理解が出来ていないから……。そこの説明を求めることにした。
「そもそも、なんで俺はこんなことになっとんねん!」
「んー?昨日、せんせーのお酒に少しだけ眠くなるお薬入れて、お持ち帰りしたから……かな?」
「はぁ?お持ち帰りって……俺は女とちゃうぞ」
「そんなの分かってるよwww」
俺の返答に、ほんとうに楽しそうに笑うりぃちょはいつもの無邪気なりぃちょで、一瞬安心してしまった。しかし、今の自分の置かれている状況を思い出して冷静になる。コイツの本心がいまいち掴めていない状態で、気を緩めるのはダメな気がした。ちゃんと確認せねば……そう思って気を取り直し、キッとりぃちょを睨みつけた。
「何がしたいねん」
「だぁかぁらぁ……せんせーとエッチなことしたいの」
「いやいや……男やぞ?」
「知ってるよ?でも好きになっちゃったんだもん」
「だもんってお前……嘘やろ?」
「嘘や冗談でこんなこと出来ると思う?」
そう言って、ゆっくりと全身を撫で回される。そのもどかしさに、少しおさまりかけていた熱が一気に戻ってくる。再び頭をもたげはじめた俺自身を見て、りぃちょは満足そうに微笑んで、俺の目をじっと見つめてきた。そしてニッコリと優しく微笑むと、低く掠れた声で話し始めた。
「俺ね、せんせーのこと好きなんだよね」
「はぁ?冗談やろ?」
「だから……冗談じゃないってば」
「いやだって……」
「ほら……せんせーの見てるだけで俺のこんなよ?」
そう言って、腰の辺りに押し付けられたりぃちょ自身の硬さに身じろいだ。あまりにも熱く、硬くなっていたソコは、ゴリゴリと俺の身体に押し付けられ、ビクビクと反応しているのが布越しにもハッキリと伝わってきていた。
「え?……お前……マジか……」
「マジだよ?ずっとこうやって……可愛がりたかった」
「いや……でもお前、この前も女と……」
「あー……あれは、ガス抜き……」
困ったように笑って答えるりぃちょに、俺は理解が追いつかず混乱していた。ずっと女好きだと思っていたやつが、俺で反応しているという事実。実際に薬を盛ってまでも、俺を連れ帰り拘束して思い通りにしようとしている現状。全てが信じ難かったが、今自身に起こっていることなので否定できない。
混乱している俺に、りぃちょはさらに続けて話し始めた。
「たまに女で発散しないと、せんせー襲っちゃいそうで」
「はぁ?」
「だからガス抜きしてたんだけど……我慢できなくて…」
「いやいや……」
「お持ち帰りしちゃった」
「しちゃった……じゃなくてやな……」
呆れてものもいえなくなった俺に、りぃちょはニッコリと笑って優しく抱きしめてきた。その胸は思っていたよりも広く逞しくて驚いた。そして、皮膚越しに伝わってくるりぃちょの鼓動が、思いの外早くてりぃちょの想いが本当なのだと分からせられてしまう。
やってることはなかなかアウトではあるが、暴走してしまうほどの気持ちを向けられているのかと思うと、なぜだかコチラもドギマギとしてしまう。こんなに真っ直ぐに気持ちを伝えられたのはいつ以来だろうか……。真剣な恋愛から遠ざかって数年が過ぎ、おかしくなりそうな程の恋愛などやり方すら忘れてしまっている俺には、りぃちょの気持ちは眩しいほど輝いてみてえていた。
「せんせ?ほんとに好きなんだ……」
「……ホントなんやってのは伝わった」
「ならよかった♡じゃあ、好きにしてもいいよね?」
「なんでそうなる!!ちょっ……やめっ……」
俺に想いが通じたと思ったのか、ニッコリといい笑顔になったりぃちょは嬉々として俺の身体をまさぐり始めた。その手つきはまるで大切な宝物でも扱うかのような優しくゆったりとしたもので、とはいえ的確に敏感なところを攻めてくる。決して強くは無い刺激なのに、しっかりと昂らされていく。
俺の気持ちとは裏腹に昂り快感を追おうとする身体に、戸惑っていると、エアコンの風でカーテンが揺れて暗い部屋に月明かりが差し込んだ。それに照らされるりぃちょは、やさしく微笑んでいるのにどこか妖艶で、その表情だけでゾクリと何かが背筋を走り抜ける気がした。
「んぁっ……」
「せんせ……いっぱい感じて?」
「やめっ……んん」
甘い声と優しい愛撫に身を任せてしまいそうになるが、身をよじる度に「カチャリ」と響く金属音で現実に引き戻される。手錠に擦れるところがヒリヒリと痛んで、これが現実だと教えてくれる。
好きだと甘く囁きながら、拘束を解いてくれるわけでもなく、俺の意思などほとんど無視な状態で行為を進めていくりぃちょ。俺の気持ちを確認するでもなく、たらだ己の欲望のままに俺を抱こうとしている。身体はどんどん熱くなっていくのに、それと反比例して頭のなかは冷めていく……。不思議なことに嫌悪感はなく、触られるところは気持ちがいいし、自分でも触ったことの無い所もどんどん解されて、受け入れ準備を整えさせられていく。
「せんせー可愛い…前もこんなに溢れさせて……」
「んんっ……ぁぁぁ」
「後ろもほら……ヒクヒクし始めた……」
「はぁ……んんん」
室内には、みだらな水音とどちらのか区別がつかない荒い息遣いだけが響いていた。そこに時折混ざる、甘い喘ぎ声が自分のものだとは信じられない。自分がこんなに甘えた声を出せるだなんて知らなかった……などと、頭の中では冷静に考えていたりする。
そうこうしている間に、りぃちょはすっかりと挿入の準備を済ませてしまったらしく、入口に自分のソレをあてがいながら、溶けてしまいそうな程に熱っぽい瞳で俺を見つめてきた。
「せんせ……いくよ」
「ちょっ……まっ……んぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「っ……はぁ……きっつ……」
「り……ちょ……ぁっあっ……むり……」
「すぐ慣れるから……まって……」
少しだけ俺の身体を持ち上げて、一気に最奥まで貫いてきたりぃちょは、眉を寄せながらゆっくりと腰を前後に動かし始めた。いわゆる対面座位の体勢での挿入は、自分の体重も相まって信じられないほど奥まで暴かれている。初めての感覚に息の仕方すら忘れて浅い呼吸を繰り返す。
「はっ……ぁっ……ぁっ……」
「あー可愛い……チュッ」
「っ……」
熱に浮かされたように呟くりぃちょは、時折首筋や鎖骨の辺りを強く吸って所有の証を刻んでいく。そこがジンワリと熱を持って疼いていく。強すぎる快感と痛み、非現実的な現状……色んなものが入り交じり、俺の目からは堪えきれなかった涙が溢れだしていた。
そんな俺を恍惚とした表情で見つめるりぃちょは、もはや俺の知っているりぃちょではなくなっている気がして、少しの恐怖を覚えた。でも腕を拘束され深く貫かれた状態では逃げることも出来ず、ただただ終わるのを待つしかできなかった。
「んんっ……ぁぁぁぁぁぁ」
「もっと鳴いて……声聞かせて……」
「も……嫌や……」
部屋中に響くイヤらしい水音に、耳を通して脳の中まで犯されていく……。腰を進められる度に、ありえないほど奥まで穿たれ抑えきれない声が漏れる。
「んっ……あっ……やだぁぁぁぁぁぁ」
「イきそう?……いいよ…一緒に……」
「くっ……ぁっ……はっんんんんんんっ」
俺が達すると同時に、奥の方でじんわりと熱が広がるのを感じた。中に出されたというショックよりも、好き勝手にされたという屈辱の方が大きくて、俺はそのまま意識を手放した。
勢いのまませんせーを抱いてふと我に返ると、せんせーがぐったりと意識を失っていた。まるで童貞のように無我夢中で行為に及んでいたため、気遣う余裕など皆無だった。逃げないようにと付けていた手錠も外すのを忘れてしまっていた。鍵を差し込むと、カチャリと軽い音を立てて拘束が解ける。同時に目に入ってきたのは、痛々しく血が滲んだせんせーの手首だった。きっと手錠が擦れていたんだろう。そんなことにも気づけなかった自分に嫌気がさした。
「あ……ごめん……」
意識を失っていて聞こえるはずがないのに、思わず口をついて出た謝罪の言葉は、動揺で揺れていた。ソッと壊れ物を扱うようにせんせーを抱えて、身体をきよめる為に風呂場へと向かった。
「……こんなもんかな?跡残らないといいけど……」
風呂を終えて、テキトーに服を着せると、先程の傷の手当をした。普段ほとんどこんなことをしないから、何が正しいのかは分からない。でも、消毒はしたしがーぜでほごもした……。これくらいしかできない。
まだ起きる気配のないせんせーをベッドに寝かせて、俺もその隣に体を滑り込ませた。そっと頭を持ち上げて、腕まくらの体勢になって愛しいその温もりをやさしく抱きしめる。思いがちゃんと伝わっているのかは分からない……でも、もう逃してはあげられなさそうだ。