「ーーフーッ、フーッ……」
夜更け。
鬱蒼と生い茂った木々の間を縫うように、あやしげな人影がひとつ、通り抜ける
「はやく、みつけなきゃ」
ヒトの子にしては少々小柄で細身な体つき。
しかしそれは、少しの違和感を持っていた
「ニンゲンの、血を、」
だんだんと勢いをなくし、ついには力無く地面に座り込む
「はやく……」
迷い猫のような、弱々しい赤い瞳で虚空を見つめる
そして、か細い声でぽつりと独りごちた
「おなか、すいた……」
それは誰に届くこともなく、深い深い森の中へと溶けていった。
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