テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「……降ってきちゃった。」
ホームルームが終わった途端、空が泣き出した。
ザーッという音が校舎中に響き渡る。
「うわ、傘忘れた……。」
らいとは昇降口で立ち止まり、小さくため息をつく。
今日は朝から晴れていた。
天気予報なんて見ていなかった自分を少しだけ恨む。
「らいと。」
聞き慣れた声に振り返ると、ロゼが黒い傘を持って立っていた。
「帰らないのか?」
「傘なくて。」
「あー……。」
ロゼは少し考え込むように視線を泳がせる。
そして、照れくさそうに頭をかいた。
「……入る?」
「え?」
「傘。」
「でも、一本しか……。」
「二人なら入れる。」
その一言だけで、らいとの胸はどきりと鳴った。
「じゃ、じゃあ……お願い。」
二人で傘を開く。
思っていたより狭い。
肩と肩が何度も触れ合う。
「ご、ごめん!」
「いや、大丈夫。」
謝るたびに少し笑うロゼ。
その笑顔を見るたび、らいとは自分の鼓動が速くなるのを感じた。
(近い……。)
雨音が二人の沈黙を包み込む。
「寒くない?」
ロゼがぽつりと聞く。
「平気。」
「ほんとか?」
そう言いながら、自分の制服の上着をそっとらいの肩へ掛けた。
「えっ!?」
「風邪ひくなよ。」
「でもロゼが……。」
「俺は平気。」
平気なわけがない。
ロゼの腕は少し冷えていた。
それでも笑っている。
(優しすぎるよ……。)
らいは胸が苦しくなった。
こんなに優しくされたら、勘違いしてしまう。
「ありがとう。」
#ご本人様には関係ありません
𝒔𝒑𝒊𝒌𝒂
6,104
小さく笑うと、ロゼは少しだけ目をそらした。
「礼なんかいい。」
実はロゼのほうも余裕なんてなかった。
(近い。)
肩越しにふわっと香るシャンプーの匂い。
雨で少し濡れた前髪。
無防備な横顔。
全部が愛しく見えてしまう。
(こんなの、反則だろ。)
思わず見つめてしまう。
「……ロゼ?」
「っ!」
目が合った。
あわてて前を向く。
「なんでもない。」
「変なの。」
らいとはくすっと笑った。
その笑顔だけで、ロゼの胸はいっぱいになる。
このまま時間が止まればいい。
そう思ってしまう。
帰り道の途中、小さな水たまりがあった。
らいとは気づかずに踏み出そうとする。
「危ない。」
とっさにロゼが腕をつかんだ。
「わっ……!」
勢いで、らいとはロゼの胸にぶつかる。
二人とも動けなかった。
雨だけが静かに降り続いている。
「ご、ごめん!」
らいとは真っ赤になって離れようとする。
でもロゼの手は、無意識のままらいの手首を握っていた。
「あ……。」
慌てて離す。
「悪い。」
「ううん……。」
また沈黙。
耳まで熱い。
雨音だけがやけに大きく聞こえた。
やがて家の分かれ道に着く。
「じゃあ、また明日。」
「うん。」
らいは数歩歩いてから振り返った。
ロゼはまだそこに立っている。
目が合う。
照れくさそうに手を振るロゼ。
らいも笑って手を振り返した。
家へ帰ってから、らいは制服のポケットに手を入
れた。
そこには、返し忘れたロゼの上着のボタンが引っ
掛かっていた。
「……明日返さなきゃ。」
そうつぶやきながら、自然と笑みがこぼれる。
一方その頃。
自宅へ戻ったロゼは、ベッドに倒れ込んだ。
「……近すぎた。」
天井を見上げ、片腕で目を隠す。
今日だけで何回、心臓が跳ねただろう。
『危ない。』
そう言って腕をつかんだ瞬間。
本当は、もう少しだけ触れていたかった。
そんな自分に苦笑する。
「……好きなんだよな。」
誰にも聞こえない小さな告白は、雨上がりの夜に静かに消えていった。
コメント
1件
ああ〜〜〜もうこれだよこれ!!😭💕 雨の日の相合い傘とか反則すぎるでしょ!!肩が触れたり、上着掛けてもらったり、水たまりで腕つかまれて密着しちゃったり…もうエモポイント詰め込みすぎて呼吸困難になりそうなんだけど!!?? ロゼの「寒くない?」からの上着のくだり、ズルすぎて何回も読み返しちゃったよ…優しさが滲み出てて、こっちまで胸がキュッてなる🥺 最後のロゼの「好きなんだよな」の独り言も、雨上がりの夜に溶けていく感じがすごく良くて、心臓持ってかれたわ…!! 彩葉さん、尊すぎます✨ 続きめっちゃ気になる!!次はどんな距離感になるのか楽しみすぎる〜〜⋆♡