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電月ゆうあ💫
131
朝の教室は、いつもより少しだけ騒がしかった。
「らいと、おはよう!」
教室に入ったらいとへ、隣のクラスの男子・湊が手を振る。
「おはよう!」
らいとも笑顔で手を振り返した。
「昨日借りたノート、ありがとう!すごく助かった!」
「どういたしまして。また分からないところがあったら言ってね。」
二人は楽しそうに笑い合う。
その様子を、教室の後ろからロゼは黙って見ていた。
(……誰だ、あいつ。)
胸の奥が、ちくりと痛む。
らいとが笑うのは嬉しい。
だけど、その笑顔を向ける相手が自分じゃない。
それだけで、どうしようもなく落ち着かなくなる。
「ロゼ?」
友達に肩を叩かれ、我に返る。
「ぼーっとしてるぞ。」
「ああ……悪い。」
視線をそらそうとしても、自然とらいを探してし
まう。
(こんなの……ただの嫉妬じゃねぇか。)
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昼休み。
「らいと、一緒に食べよう!」
また湊がやって来た。
「今日は屋上で食べない?」
「いいね!」
らいとは少し考えたあと、ロゼの席へ近づく。
「ロゼ!」
「……ん?」
「今日は湊たちと食べてもいい?」
いつもなら、ロゼと二人で食べる昼休み。
少し申し訳なさそうに笑うらいとを見て、ロゼは胸が締めつけられた。
「好きにすれば。」
短く返す。
「え……?」
「別に俺が決めることじゃない。」
らいとは少しだけ寂しそうな顔をした。
「……ごめんね。」
そのまま屋上へ向かう背中を、ロゼは見送ることしかできなかった。
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屋上では、らいが楽しそうに笑っていた。
風に揺れる髪。
無邪気な笑顔。
その全部が眩しい。
「……楽しそう。」
ぽつりとこぼれた言葉は、誰にも届かない。
「ロゼ。」
後ろから声をかけられる。
振り向くと、クラスメイトが不思議そうな顔をしていた。
「らいとと喧嘩でもした?」
「してねぇ。」
「じゃあなんでそんな怖い顔してるんだ?」
「……。」
自分でも気づいていなかった。
無意識に眉間へしわが寄っていたことを。
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放課後。
「ロゼ!」
らいとが駆け寄ってくる。
「一緒に帰ろ!」
「悪い、今日は用事ある。」
嘘だった。
帰る方向は同じなのに。
ただ、今は隣を歩く自信がなかった。
「……そっか。」
らいとは少しだけ笑って、
「じゃあ、また明日。」
と、小さく手を振った。
その笑顔さえ、どこか無理をしているように見えた。
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翌日。
朝かららいとの元気がない。
「どうしたの?」
友達に聞かれても、
「なんでもないよ。」
と笑うだけ。
本当は分かっていた。
ロゼが避けている。
理由は分からない。
嫌われたのだろうか。
考えれば考えるほど、胸が苦しくなる。
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放課後。
誰もいなくなった廊下で、らいとは偶然ロゼと鉢合わせた。
「あ……。」
目が合う。
でもロゼは、そのまま通り過ぎようとした。
「待って!」
思わず制服の袖をつかむ。
ロゼの足が止まる。
「……なに。」
「俺、何かした?」
震える声だった。
「最近、避けてるよね……。」
その一言で、ロゼは目を閉じた。
(もう隠せない。)
大きく息を吐く。
「……あいつ。」
「え?」
「湊。」
らいとはきょとんとする。
「仲いいんだな。」
「ノートを貸しただけだよ?」
「楽しそうだった。」
「それは……。」
「俺じゃなくてもいいんだなって思った。」
その言葉を口にした瞬間、ロゼは少しだけ後悔した。
子どもみたいだ。
独占したいなんて、言える立場じゃない。
沈黙が流れる。
やがて、らいがくすっと笑った。
「……ロゼって。」
「?」
「嫉妬するんだ。」
「……。」
否定できない。
耳まで赤くなったロゼを見て、らいは嬉しそうに笑う。
「安心した。」
「何が。」
「俺だけじゃなかったんだ。」
「……え?」
らいとは少し照れながら視線をそらした。
「ロゼが他の人と話してると、俺も少しだけ寂しくなるから。」
その言葉に、ロゼは息をのむ。
同じだった。
苦しかったのは、自分だけじゃない。
夕焼けに染まる廊下。
二人はしばらく黙ったまま歩き出す。
肩と肩が触れそうで触れない距離。
それでも今日は、不思議と昨日より近く感じた。
恋人にはまだなれない。
だけど。
「明日も、一緒に帰ろう。」
ロゼが小さく言うと、らいとはぱっと笑顔になった。
「うん!」
その一言だけで、ロゼの胸の中の曇り空は、少しだけ晴れたのだった。
コメント
1件
うわぁ……嫉妬、すごくリアルで切なかったです🥺 ロゼの「俺じゃなくてもいいんだなって思った」って言葉、胸がぎゅってなりました。自分の気持ちを認めたくないけど抑えきれない感じ、すごく伝わってきた……。らいとが「俺だけじゃなかったんだ」って言ったとき、夕焼けのシーンと重なってじんわり温かくなりました。二人ともお互いのこと大事に思ってるんだなって伝わってきて、続きが気になります! 素敵なお話をありがとうございます🌙