中学の頃、俺には好きな人がいた。
彼女は俺のクラスの中心のような人で、
誰にでも面白い話をしてくれる。
決して優しかったわけではなかったが、
異性からも同性からも好かれる魅力があった。
多分顔が良かったから。
彼女に恋心を抱いていた人は、
きっと俺一人では無かっただろう。
彼女はかなりモテていた。
そんな日々が続いていたある日、
俺は彼女に告白していた。
恋心を抱いてから半年くらいだったかな。
でも返事は、無かった。
うんともすんとも返ってこなかった。
そして裏で、彼女が俺の陰口を言っていたことを知った。
キモイだとかウザイだとか。
まるで、騙されたような気分になった。
あぁ、そんな人だったんだなって。
それは、冷めるなんかよりも酷い気分だった。
絶望と、失望と、情けなさが入り交じって、今にも俺は崩れそうになった。
そこで俺は気づいたんだ。
夢を見ていたということに。
俺はずっと、その夢に遊ばれていた。
手のひらの上で転がされていたんだ。
好きな人が誰よりも輝いて見える魔法。
好きな人が少しでも自分に優しくしてくれた時の、もしかしたら脈アリなのではないかと思ってしまう魔法。
でもこれらは、魔法なんかじゃない。
病気だ。
恋の病だ。
恋の病にかかった者は、自我を捨て、好きな人に依存する。
それを美化する者のせいで、その病に気づけない者が多いのだ。
俺はその時から恋を嫌うようになった。
俺は俺を、
失いたくないから。
そう思ってからは簡単だった。
モテたいと思わなくなったし、
人の目を気にすることも無くなった。
俺は自由に生きることができるようになったんだ。
恋をしないこと。
俺にとっては素晴らしい事だった。
これを共感出来る者は、いなかったがな。
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