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都会のオシャレな街並みにいろんなお店が立ち並ぶ。



朝の時間帯でも比較的ゆるやかに時が流れる穏やかな日常。



私は『杏』の正面の自動ドアから中に入った。



かなり広めで窓も多く、光もほどよく差し込んでいて明るい雰囲気。



店長の趣味なのか、オシャレな中にもほんのちょっとレトロな感じも取り入れて、とにかく素敵な店内。



店に入ると、右側にテイクアウト用のパンがたくさん並び、正面にレジがある。



左側はカフェになっていて、飲み物はもちろん、買ったパンを食べたり、少しだけパスタやグラタンなどの軽食も食べられるようになっている。



でも、やっぱり、ほとんどのお客様は焼き立てのパンを食べている。



店長は「一生をパンに捧げる!」って公言してるくらいの無類のパン好き。



いろんなお店を食べ歩き、研究して、30歳の時に『杏』をオープンさせた。



佐久間 杏子(さくま きょうこ)さん。



みんなは、親しみを込めてきょうこさんのことを『杏子』(あんこ)さんと呼んでいる。



何よりもあんパンが好きらしいから、そのあだ名をすごく気に入ってるみたい。



38歳、黒髪のショートカット。



昔、読者モデルをしてる時代があったらしく……かなりの美人。



パンに時間を費やしてるうちに結婚を逃したと本人は言ってるけど、実際、今でもあんこさん目当てでたくさんの男性が押し寄せている。



大阪から出てきて1人でお店を立ち上げて成功してるだけあって、しっかり者でみんなの相談役。



しかも話がすごくおもしろくて、たまに関西弁が飛び出すこともある。



そんなあんこさんの作るパンは絶品で、私がここに勤める理由ももちろんそこにある。



初めて食べた時の衝撃は今でも忘れられない。



落ち込んだ私の心に染み渡った、優しいパンの味。



どれを食べても泣けるくらい美味しかった。



嫌いな物がないくらい。



それでも特に好きなのは、ここの名物の「あんパン」と、私が昔から好きな「クロワッサン」、そして、シンプルだけど奥が深い「食パン」。



絶対に自分ではこの味は出せない。



美味しさの秘密、それは、あんこさんの腕と使う材料にあった。



何よりも粉にこだわり、1社との契約を頑なに守ってる。



『東堂製粉所』の北海道産の春まき小麦を使用した強力粉。



それはとても吸水性に優れていて、ふっくらとしたボリュームのあるパンに仕上がる。



しっとりモチモチな食感で、最高のパンが生まれるんだ。



なにを隠そう東堂製粉所の社長さんも、あんこさんの大ファン。



いつもは息子さんが店に配達してくれてて、たまに一緒に来た時は、必ずあんこさんに声をかけてデレデレしてる。



それがまた、社長さんは渋いイケメンのおじ様だから、美人のあんこさんとびっくりするくらいお似合いなんだ。




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