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マフィシャンカフェ×エイプリるむふぉ(Ares愛され)
「こんばんわ〜!」
語尾にハートがつきそうな元気というか、陽気な声で店に入ってきたのは、明らかにマフィアの風格の金髪の男の人と、紫髪の男の人。紫髪の人は、見覚えがあるわ。確か、諜報員をしていた頃に情報屋として耳にしたことがある。まぁ私が情報屋を頼ることはなかったけどね。
「あら、初めてのお客さんよね?初めまして〜」
それでも、お客さんなことに変わりはないのだから、いつも通りに接客しますけどね。
「”Ares”という男を知っているか」
そういい、写真を見せてくるマフィアの人。この人は見たことないわね。最近マフィアになった人なのかしら?
「あ、セイラさん。洗濯物終わりましt___」
そういい、店の裏口から入ってきたのは、その写真に写っている、紛れもない”Ares”だった。
数年前。
私の暗殺を命じられた暗殺者・Ares。
学生時代、諜報員として暮らしてきたけれど、好きな自分でいたくって足抜けをして、この小さなバーで生計を立てているの。流石に、情報の塊である私を処分したいのか暗殺の依頼が出てるなんて知らなかったわ。
そして私を殺しにきたのは、まだ幼い、男の子。服もみすぼらしくて、つい、『足抜けしない?お姉さんと一緒に暮らしましょう?』と声をかけてしまった。あまりにもその姿が、昔の自分に似ていたから__。
そして、今ではAresに家事を手伝ってもらったりして、なるべく外に出さないように生きてるの。スーパーとかには変装して連れて行ってるけどね。
「なぁんだ。ここにいたんですね♪ボス。連れていきましょ!」
「っ!!」
”渡会雲雀”が言い放ったその言葉に私は驚いた。
成長したとはいえ、まだ幼き子供。表の世界だったら高校生にもなっていないのにっ。でも、これが当たり前な、裏社会。私はそんな世界が嫌いで足抜けしたのにっ。私と、いいえ、それ以上の苦しみをこの子は味わうことになるの?
「あぁ、そうだな」
”渡会雲雀”の言葉にボスと呼ばれてた人が否定するのを願っていたけれど、それは叶わないみたい。
「あ、え?」
Aresは戸惑っているみたい。裏口のカーテンから体を全て出して、その二人を見つめている。
「ごめんだけど、勝手に決めつけないでちょうだい。数年間この子をほったらかしにして、いきなり連れ出すってどういうことよ」
私はボスと呼ばれていた人の胸ぐらを掴む。簡単にAresは渡さないわよ。
「お前!!」
「いや、雲雀黙ってろ」
そういい、”渡会雲雀”を阻止するその人。今思えば見覚えがあるわ。
マフィア一家の嫡男・”風楽奏斗”長らく顔を見ていなかったから気づかなかった。
「なぁ、お前。裏社会出身なんだって?四季凪家の長男だったろ。こっちの世界でもたまに話題にあがってるんだ。『情報の塊・四季凪アキラをどう、始末するかってね」
私のことを知ってるのね。脅しでもしたいのかしら?
「そこでだ。俺は2つのとこから依頼が来てる。そして2つのとこは敵同士なんだ」
私の”風楽奏斗”の胸ぐらを掴む手が緩くなる。
「1つのとこからは、”Ares”を連れてきてくれ。とのこと。2つ目のとこからは、”四季凪アキラ”の暗殺」
そういうこと。
「賢いあんたなら言ってる意味がわかるだろ?どっちか選べ」
”Ares”が連れていかれるか。私が殺されるか。本来なら”Ares”が連れていかれる方が合理的よね。連れていかれるだけで、殺されるとは言われてない。数年間放置されてるのも重ねると殺される可能性は低いと思われるわ。でも、私の場合、暗殺。死ぬ以外の選択肢が存在しない。
「ええ、そうね。しかし、簡単にはやられないわ。交渉と行きましょう?」
「内容によっては乗ってやるよ」
”Ares”のことも、私自身のことも、簡単には渡さない。諜報員時代の知識・情報をフル活用して、”Ares”も私のことも守ってやるわ。
「乗った」
”風楽奏斗”がその言葉を発したのは、交渉を持ち掛けてから数分経った時だった。
その数分で気づいたことがある。
それはこの二人は自分の組織をデカくしたいがためにここにきたということ。そのためなら手段はそこまで気にしてないようだった。
そして、肝心な交渉内容は相手にほとんど利がある交渉だった。
「じゃあ、もう一度交渉内容を確認するわね」
「あぁ」
カウンターに座る二人。
二人と少し離れた席に”Ares”は座って、ジュースを飲んでいる。
「私はあなた方に情報を提供するわ。その情報は新たに仕入れたもの、つまりあなた方が望んだ情報を好きなだけ提供する。いわゆるあなた。”渡会雲雀”がやっているような情報屋と同じよ」
「へぇ、俺のこと知ってんだ?」
頬杖をつき、久しぶりに声を聞いたわね、とか思う。
「諜報員時代に何度か聞いたことがあったわ。腕は確かな情報屋、ってね。私が頼る機会はなかったけれど」
「そこは良いから話をしろ」
「はいはい」
”風楽奏斗”は無駄を嫌ってるようにも思えた。今の態度からも読み取れるように。
「情報屋と言っても、私は情報を売らないわ。その代わり」
「”四季凪アキラ”と”Ares”の依頼はなしにしろってことだろ?」
「えぇ、わかってるじゃないの」
元がつくとはいえ諜報員として育てられた時の知識は簡単になくせるものではない。
「そして、さらにいうと私たちの安全も守ってほしいわ。あなたのところに来た私たち関連の依頼は断って。近くに私たちの安全を及ぼすような依頼があったら蹴散らしてほしいのよ」
「そこまでするほどの対価をお前は支払えるのか」
”風楽奏斗”のいうことはごもっともだと思うでしょう。
「私は無償で情報を提供する。で十分でしょう?あなた方は私の命の灯火が消え去るその時まで情報を無償で仕入れられる。私が亡くなった時はそれでこの契約は無しにしちゃって大丈夫よ」
チッ。と舌打ちをする”風楽奏斗”。私が諜報員だったことを忘れているのかしら。そんな簡単な罠に引っかかるほどボケてないわ。
「それにしても、亡くなったら亡くなったらでそれで放置かい?あんなに守ろうとしてたってのに」
さっきまでずっと黙ってた”渡会雲雀”が口を出してきた。
「それまでに交渉に使えそうなものは教えていくつもりよ。残念だけど早死にするつもりはないの」
ちらっとAresの方を見たらストローでジュースをゆっくり飲んでいるようだった。
「わかった。それで行こう。情報が欲しい時はこの店に来る。情報は何時間で仕入れられる」
「仕入れたい情報にもよるけれど、小さいものだったら1時間くらいかしら?大きいものだったら何日間かでやってみせるわ」
「わかった。では」
”渡会雲雀”を連れて、バーを出て行った”風楽奏斗”。確か私と同年齢の二人は、どこかしら夢を諦めてる様子がした。
「セイラさん。良かったんですか?」
「何がよ」
Aresが申し訳なさそうな顔でこちらを見る。
「俺がここを出ていけば、セイラさんは今まで通りに暮らしていけたのに、俺を庇ったせいd__」
「あんたはばか?」
私はAresのおでこにデコピンを喰らわせた。
「あんたがいなくなったらいつも通りじゃないじゃない。ここ数年間はあなたがいて、当たり前だったのに」
そういうことじゃない、と言いたげな表情でこちらを見つめるが、黙らせる。
「これは私の自己満よ。あんたが出る幕なんてないのよ」
そう言って、バーの台所に戻る。
「はい」
そう小さく返事をしたAresに胸が暖かくなる。
「ん〜!!一仕事終えた気分ね!どう?店も閉店して、お酒飲んじゃわない!?」
そういい、私は扉の前のランプを消す。
「え、俺未成年」
「あ、そういやそうだったわね。じゃあ私だけ飲んじゃうわね!あなたはジュースでも飲んでなさい!」
どのお酒飲もうかな〜。と家の冷蔵庫を漁りに行こうとした時、
「セイラさん。お酒は程々にしてくださいね。介護が大変です」
「あ!あんた〜。大丈夫よ!程々にするから!」
自分の気持ちを言うようになってきたとはいえ、そんな言葉初めて聞いたもんだから、頭の髪の毛をわしゃわしゃしてしまった。この子は絶対に私が守ってやるんだから!!
1年後〜〜
「セイラ。仕事だ」
そう言ってお店の扉を開けてきたのは奏斗と雲雀。
「ねぇ、店の扉から来ないでって言ってるでしょ?前も常連さんに『借金でもしてる?』って言われたのよ。評判悪くなるからやめてちょうだい」
はぁ、と大きなため息をついて私は忠告した。最初の頃は大人しく聞いてくれてたのに。
「えぇ〜、でもこっちから来ないとAresと遊べないんだけどぉ」
認めたくないけれど!!認めてないけれど!なぜかこの二人はAresを気に入っているのよ!ちなみにAresは店に来た時に比べてすごくすごく成長して、今では私も追い越して、180cm越えになってるの。それでも性格は前までのAresだから可愛いんだけれど。
「あ、奏斗さん、雲雀さん。また来たの?」
「仕事だ、仕事」
「Aresと遊びに来たよ〜!!」
素っ気なく返す奏斗とデレデレな雲雀。足して2で割ったらちょうど良かったでしょうに。
「で、今回はどこのよ」
「ん」
そう言われて渡されたのは二枚くらいの書類。
「あ〜ね、じゃやってくるわ」
そう言って私は仕事をしに店を出た。その時にはすでにAresは雲雀たちと遊んでいた。私だって遊びたいのに!!
「Ares〜、飴ちゃんあげる♪」
「あ、ありがと」
雲雀さんは俺にThe・飴ちゃんな飴を渡してくれた。奏斗さんと雲雀さんに挟まれてカウンター席に座っていて、いつものことだけど奏斗さんは不機嫌に頬杖をついている。出会って一年だけど、ずっと奏斗さんは不機嫌で、いつもこんな感じ。
「なぁなぁ、Ares♡俺と結婚してくれよ♪」
そして出会って数ヶ月後から雲雀さんはずっと求婚してくる。俺を揶揄ってるんだろうけど、飽きずに求婚してくるからちょっと迷惑してる。
「何度も言ってますけど、俺未成年です」
「んなの関係ないって〜♡」
未成年だと言うことを何度言っても口説いてくる。迷惑である。
「雲雀。迷惑はかけるな」
「チェ、はぁいボス」
それでも奏斗さんの言うことは必ずらしい。即でやめてくれた。次来たときもまた口説いてくるんだろうけど。
「Ares、なんか不満はあるか?」
「え、まぁ、ない、ですけど」
「そうか」
そっけない質問に、そっけない返事。何が聞きたいんだろう、と疑問に思う日々はいくつもあった。今日だけではない。
「ボス〜、素直に言ったほうがいいんじゃないですかぁ?」
「雲雀、黙ってろ」
犬みたいに垂れ耳が見える雲雀さん。奏斗さんからは冷たいオーラが見える。本音は怖い。普通に怖い。
それから沈黙が流れる。いつも会話の中心の雲雀さんは奏斗さんに「黙ってろ」と言われて黙ってるし、奏斗さんはいつも通り黙ってる。そして俺は相槌が仕事だったから沈黙が流れている。
「雲雀、話していいぞ」
「!!」
ここ1年間でこの二人の関係性はわかっている。
飼い主と犬だ。しかも大型犬。その証拠にさっきまで垂れていた耳はパァと立ち上がって、尻尾まで振っている。大型犬。
「なぁなぁAresは将来何になりたいん?セイラさんの跡継ぐのか?それとも俺と一緒に情報屋やる?ボスと一緒にマフィアなんてのもいいなぁ。普通に企業立ち上げてもいいと思うで!」
俺は普通に生きる。と言う選択肢はないんか。俺は、セイラさんに恩返しができれば、それでいいんだけど。
「セイラさんに、恩返しできるなら、どれでもいい。俺がここにいるのは、セイラさんが俺を救ってくれたからだから」
「そっか!Aresは優しいなぁ」
そう言って、雲雀さんは俺の頭を撫でる。と思ったらぐしゃぐしゃに髪を乱していった。
「Ares。セイラが一番喜ぶこと、教えてやろうか?」
さっきまで黙ってた奏斗さんが口を開いた。セイラさんが、一番喜びそうな、こと?
「お、教えて!」
俺を救ってくれたセイラさんに恩返しをしたい、から。
「いいぞ」
そうやって教えてくれたのは、確かにセイラさんが喜びそうなことで、セイラさんが一番幸せになれる方法だった。俺は迷った。でも、決断した。
「聞いてみる、セイラさんに」
セイラさんが幸せなら、俺はどうなってもいいから。
「なぁに?話って」
「椅子に座ろ」
奏斗たちが帰って、店を閉じようとしたとき、Aresが珍しく話がしたい、と言ってきた。なんだろう、って思いつつ、カウンター席に座らせた。Aresにオレンジジュースを出し、カウンターに私も座る。
「俺がここで不自由なく、幸せに生きていけてるのって、セイラさんがあの日俺を救ってくれたからなんだ。あの時セイラさんが助けてくれなかったらいつまでも暗闇の中だったんだと思う」
あ、大事な話なんだ。そう思った。Aresが昔の話を切り出すのは一年に一回あるかないかくらい。だから、大切なことなんちでなろうなってすぐに思える。
「で、俺セイラさんに恩返ししたいの。セイラさんが、一番喜んで、一番幸せになれる方法」
そしてこちらを振り向くAres。若干手が震えてるように見えた。
「俺ね、奏斗さんと雲雀さんと交渉したの、一年前セイラさんがしてたみたいに」
いやな予感がする、それ以上言わないで。ねぇ!
「Ares___」
ニコッと不器用に微笑むAres。
「俺が裏社会に戻る代わりに、セイラさんをいなかったことにする交渉。セイラさん、今までありがとう」
オレンジジュースをテーブルに置き、席を立とうとするAresを引き止めた。
「Ares!どういう、ことよ」
Aresはこちらを見てくれなかった。
「そのまんまの意味。俺は裏社会に戻る、奏斗さんや、雲雀さんのところに行く。その代わり、セイラさんは死んだことになる。”四季凪アキラ”は死亡した、って戸籍に残る」
「え?」
理解できない、いや、したくない。
「戸籍も俺が用意する、四季凪セイラ。出生は普通の家庭、裏社会とは無関係になるんだよ。奏斗さんたちと結んでる交渉も破談。だってあなたはもうセイラというただの普通の一般人だから。これで、好きなように生きられるでしょ?」
その声は、泣いている時の声だってくらい、私にもわかるのよ。
「なんで、奏斗と交渉を結んだかわかってるの?Ares、あなたを守るためよ。昔と同じ苦しみを味らわせないためよ。わからないの?」
私も涙が出ちゃうわ。なんで、行こうとするの。
「でも、セイラさんは足抜けしたのに、諜報員としての仕事してるでしょ。俺はなんもしてないのにっ」
私は初めて、その時Aresにビンタをした。あまりにもわかっていない、私の気持ちを。
「私の一番の幸せは!!あなたの幸せよ!あなたが幸せじゃないのなら、私は幸せじゃないの!あのねぇ、私も人間なのよ。人の不幸と引き換えに手に入る幸せなんて、嬉しくもないわ!」
そして、Aresは泣いた。その時の涙はあまりにも綺麗だった。子どもらしかった。今年で16歳を迎えるAresは今までも妙に大人らしかったのに、子どもじみた泣き方をしていた。裏社会で生きてきた彼にとって、泣くということは本当の幼少期以外存在していなかったのだろう。長い、長い時間泣いていた。それでいいと思う。それでこそ子どもだと思う。
「いい?私の幸せはあなたの幸せ。あなたと一緒にいれば、私は幸せだから。でも1つだけお願い。勝手に消えようとしないで。勝手に死のうとしないで。私はあなたをいつでも必要としてるからね」
そうして抱きしめてあげた。愛おしいAresを。この世界で一番愛しているAresを__。
「奏斗!!雲雀!!!」
扉を開けるとすぐにセイラの怒鳴り声が聞こえる。
「なんだ、セイラ」
「なんだって!!Aresにいったのあなたでしょう!?!?」
あー、あの件か。
「そうだけど」
「!!!!」
最初に出会った時みたいに胸ぐらを掴んでくる。
「あんたねぇ!!Aresがどれだけ震えて私に話してきたか知ってるの!?そりゃあもう震えて今にも泣き出してしまいそうな勢いだったのよ!」
ってことはダメだったってわけか。せっかくAresを引き入れそうだったってのに。
「あ、セイラさん、その辺にしといてあげて、」
「も〜、Aresが言うならいいけど」
はいと言って胸ぐらを掴む手を離したセイラ。
「じゃ、今日はこの情報頼む」
「げ、多いじゃないの。明日この時間に来てちょうだい」
「はいはい」
と言って、いつも通り部屋に閉じこもるセイラ。
「Ares〜、明日もまたくるからな♡」
いつの間にかAresの手には飴が握られてあった。
「Ares、俺のとこに来たくなったらいつでも来いよ」
そうして、俺もAresの手にあるものを握らせた。
「じゃあな」
「じゃあね〜♡」
そうして、扉を閉めた。明日来たときどんなふうに接してくれるか楽しみだ。
「なんだろ」
と思って握らされた小さな正方形の箱を開ける。するとそこには、
「え!?」
ダイヤモンドらしき宝石が乗っけられた指輪。試しに嵌めてみるとなんとピッタリ。
「何で俺の指のサイズ知ってるんだよ」
うーん、これどうしようか。と思い、明日来た時返そう。と言う結果になった。
続編描こうか。どしよ☆
奏斗
Aresのことが大好き。結婚したいし、自分のものにしたい。独占欲・支配欲高め。20歳。
雲雀
Aresのことが大好き。ヤンデレ。自分のことだけ見ててほしい。20歳。
セイラ
Aresのことが大好き。結婚したい、と言うよりかは息子として養いたい。20歳。
Ares
セイラのことが大好き。セイラと結婚したい、と思ったこともある。奏斗と雲雀には恋愛感情はない。15歳。