テラーノベル
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🦈 「……っ、はくしゅん!」
朝。
リビングに大きなくしゃみが響いた。
ソファで編集作業をしていたこさめは、鼻をすすりながらパソコンへ向き直る。
🦈「うー……」
頭が重い。
喉も少し痛い。
でも。
🦈「今日中に終わらせなきゃ……」
動画編集が三本。
切り抜き確認が二本。
さらに明日の配信準備。
なかなかの量が溜まっている。
すると後ろから声がした。
🌸「こさめ」
🦈「ん?」
キッチンにいたらんがマグカップを持って近づいてくる。
🌸「熱測った?」
🦈「測ってない!」
🌸「なんで?」
🦈「元気だから!」
にこっ。
いつもの笑顔。
でもらんは全然騙されない。
🌸「そう?」
🦈「そう!」
🌸「顔赤いけど」
🦈「照れてる」
🌸「誰に」
🦈「らんくん」
🌸「はいはい」
それから二時間後。
こさめはまだ編集していた。
しかし。
🦈「……」
マウスを持つ手が重い。
文字も少し見づらい。
それでも止まれない。
🦈「あとちょっと……」
その時。
ふわっと額に手が当てられた。
🦈「ひゃっ」
🌸「やっぱり熱い」
らんだった。
いつの間にか後ろに立っている。
🦈「らんくん〜」
🌸「体温計持ってくるね」
🦈「いらない〜」
🌸「持ってくるね」
にこにこ。
声は優しい。
でも拒否権はなさそうだった。
数分後。
体温計を渡される。
🦈「やだ〜」
🌸「お願い」
🦈「絶対熱あるもん」
🌸「だから測ろう」
🦈「やだ〜」
🌸「こさめ」
🦈「う」
これは‥逆らえない。
結局大人しく測る。
ぴぴぴっ。
表示。
38.8℃。
沈黙。
🌸「……」
🦈「……」
🌸「こさめ」
🦈「はい」
🌸「元気?」
🦈「‥元気じゃないかも」
🌸「そうだね」
らんは苦笑した。
するとこさめは慌ててパソコンへ向き直る。
🦈「でも編集終わってないし!」
🌸「うん」
🦈「今日出したい動画あるし!」
🌸「うん」
🦈「だから——」
ぱたん。
ノートパソコンが閉じられた。
🦈「らんくん!?」
🌸「今日はおしまい」
🦈「えええ!?」
🌸「無理だよ」
🦈「でも!」
🌸「明日やろう?」
🦈「間に合わない〜!」
こさめは毛布にくるまりながら抗議する。
しかしらんは怒らない。
ただ困ったように笑うだけ。
🦈「動画一本遅れるのと、こさめが悪化するのだったらどっちが困る?」
🌸「……後者」
🦈「だよね」
🌸「でもぉ……」
🦈「大丈夫」
らんはぽんぽんと頭を撫でた。
🌸「リスナーさんも逃げないよ」
🦈「ほんと?」
🌸「うん」
🦈「編集……」
🌸「俺も手伝うから」
その一言でこさめが顔を上げる。
🦈「ほんと!?」
🌸「ほんと」
🦈「神じゃん」
🌸「熱ある時だけね」
🦈「けち」
🌸「病人は寝る」
結局。
こさめはソファから移動させられた。
寝室。
毛布。
スポーツドリンク。
完璧な看病体制。
🦈「らんくん〜」
🌸「ん?」
🦈「暇」
🌸「さっきまで編集してたのに?」
🦈「寝るの飽きた」
🌸「五分しか経ってないよ」
🦈「えっ」
🌸「えっ?」
らんは思わず笑った。
熱のせいか、こさめはいつもより甘えん坊だ。
毛布の中から手だけ出してくる。
🦈「らんくん」
🌸「うん」
🦈「ここいて」
🌸「いるよ」
🦈「ずっと」
🌸「いる」
🦈「ほんと?」
🌸「ほんと」
らんはベッドの横へ座った。
するとこさめが安心したように目を細める。
🦈「……ごめんね」
🌸「ん?」
🦈「心配かけた」
小さな声だった。
らんは少しだけ目を丸くする。
それから優しく笑った。
🌸「心配するのは当たり前だから」
🦈「でも」
🌸「隠さないでね」
🦈「……うん」
🌸「しんどい時は言って」
そう言いながら前髪を撫でる。
熱で少し汗ばんだ髪。
🌸「こさめが思ってるより、俺は頼られるの好きだよ」
🦈「……」
🌸「だから一人で頑張りすぎなくていい」
その声はどこまでも優しかった。
怒るわけでもなく。
責めるわけでもなく。
ただ心配そうに。
大事なものを扱うみたいに。
🦈「らんくん」
🌸「うん」
🦈「すき」
🌸「俺も」
即答だった。
こさめが少し笑う。
その様子を見て、らんも安心したように笑った。
🌸「ほら、寝よっか」
🦈「編集……」
🌸「起きてから」
🦈「配信準備……」
🌸「起きてから」
🦈「動画……」
🌸「起きてから」
🦈「らんくん……」
🌸「それも起きてから」
🦈「それは今がいい〜」
くすくす。
らんが笑う。
🌸「元気あるじゃん」
🦈「ちょっとだけ」
🌸「じゃあ、そのちょっとを寝るために使おう」
そう言って手を握る。
こさめはその手を握り返しながら、ゆっくり目を閉じた。
眠る直前まで聞こえていたのは、キーボードの音ではなく。
隣にいるらんの、声だった。
リクエストありがとうございましたぁぁぁぁぁぁ
後でここにもリク箱作ります!
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コメント
1件
ああ、この話……じんわり沁みました。無理して編集を続けようとするこさめと、怒らず「頼られるの好きだよ」って言えるらんの距離感が本当に良い。38.8℃という具体的な数字と、五分しか経ってないのに「寝るの飽きた」って甘えるギャップに思わず苦笑しました。一人で頑張りすぎないでいいんだよ、って伝わる関係性、素敵です。