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8歳の時
変わった色の魚を見つけた。
ほんの好奇心では済まされない程、一目見て欲しくなった。
真っ白な鱗に黄色いエラと目の魚見るだけで惹き込まれるほど美しかった
資産家の父にねだって買ってもらい
デザイナーの母に魚をイメージした物を作ってもらい
家の使用人に大きな水槽と上等な餌を用意して貰った
魚は餌をよく食べる食いしん坊ようだ
いつもくるくる回って泳いでいるから健康体だ
この魚は買った所の人間から聞くには性別は成長過程で決まるらしい
「早く大きくなってね 」
そう言いながら水槽に餌をまいた
「大きくなりすぎだよ…」
そしてそれから10年後、今も僕は魚の面倒を見ている
「ごはん〜」
「わかったよ、今あげるから」
魚だと思ったのは魚では無かったようだ。
「おれーに、うったて、あげう」
「そっか、ありがとう」
言葉の発達は遅いが会話も少しはできている
歌うのが好きでそれ以外能がないような所もあるけれど
まぁ、僕にとってはこれくらい馬鹿なのが話し相手で丁度いいな。
「…お前が馬鹿で助かるよ」
「?」
「なんでもない。」
聞こえてなかった、又は意味が理解できて居なかったのか
どちらでも良い
そう思いながら餌を持っていき、魚の目の前に持ってきた
「ごはん」
そう言うと餌の魚にかぶりついた。
食いしん坊なのは昔から変わっていないな、そう思いつつ食べている姿を見つめる
もしゃもしゃと食べる姿は…こう言うのは少し癪だが
絵画の様に美しく神聖なものだった
うねり一つない黄色のメッシュの入った白髪に目尻が上がった金色の瞳。
中性的でこの世のものとは思えない程美しい。
厚い黒縁メガネと癖毛のボサボサな黒髪と黒目の僕とはつくづく正反対だ
「おかあり」
「おかわりな、了解」
今日も僕は
箱庭の様な豪華な屋敷で満たされないまま
この魚…「サナ」の面倒を見ている
自己満足で済ませるだけの無意味な時間
こんな事をするくらいなら勉強をした方が良いのだろうか
だけど何故だろう
此奴と一緒とだと周りからの重圧から解放されている気がする
自分はこれでも女だが
自分が一体何なのか、何をしたいのか分からない。
ノロマで愚図で命令された事しか出来ない出来損ない
跡取りとしても役足らずな存在。
だけど何となくこの時は心が____
「ゆぅー?」
サナが不機嫌そうにヒレを動かしながら僕の名前を呼んでいる
あぁ、早くおかわりの魚を持ってこないとな
だから今日も僕は『 』の面倒を見ている