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また夢だ。あの続きを見ている。
「もう謝らないで。何も変わらないのだから」
「俺のせいだ。俺のせいなんだ……」
妹の代わりに私が生贄になると言った時、周りの大人たちはまず笑って、そして怒った。
「生娘じゃないといけないのは、お前も知っておろう。式は遅れたがもう婚約して四年になるではないか」
「はい。存じております。その上で申し上げているのです」
「……」
長老たちはひどく驚いていた。
そう、私は婚約者がいてもうすぐ二十五になるというのに、まだ生娘だったのだ。
私はその時を待っていたのだが、彼は喪が明けるまでと先延ばしにし、逃げていたのだ。私から。妹の慕情から。
彼は私を抱かなかったことを詫びているのだ。
私は恥ずかしくて早く消えてしまいたいと思った。
「家族をよろしくね。あの子を必ず幸せにして」
「約束する。君の家がずっと続くよう全力を尽くす」
「それが聞ければもう充分。さようならあなた」
私は後ろを向いてまた月を見上げる。もう月があんなに高くなった。もう日は跨いだだろう。今日私は龍神が住むという湖に沈むのだ。二十五歳となる今日に。
目が覚めてからもしばらく動くことができなかった。泣いていた。今日は会社がなくて良かった。
とにかく、前世の彼女の死亡したのが二十五歳だとはっきりとわかった。そして、私の二十五歳の誕生日は一月後だ。
来月からみんな普通に接してくれるようになるのだろうか。徐々に変わるのだろうか? 一気に冷たくなったりして。
それよりも変わらなかった場合どうすればいいのか。彼女の望みを叶える?妹さんは婚約者が幸せにしてくれたはず。
……愛する人に抱かれたかった、とか? でも、私も恋をしてそういうことになったことはちゃんとあった。それじゃダメだったの?
頭がぐるぐるのまま土曜日を潰してしまった。
その夜宝山君からメッセージがきた。
「明日デートしませんか?」
デートはなんか違うけど、一人でいたくなかったから私は行くことにした。そしたら遊園地へ行こうだって! 何年振りだろう。ストレス解消になりそう。
翌日、昼前に門の前の広場で集合した私たちは、入場してまずジェットコースターに乗った。
「いきなりですか?」
「そう! いきなり!」
「スッキリした〜! 次は宝山君の好きなものでいいよ」
その結果、乗り物に乗ったまま入るお化け屋敷に連れて行かれた。ギャーギャー叫んで、今日はもう終わりでもいいかもって状態になった。
休憩がてらお昼を取ることにした。レストランはそれなりに混んでいたけれどほとんど待たずに入れた。ラッキー。
すると、
「ラッキーっすね。僕、結構運がいい方だと思うんですよ」
と宝山君は言った。同じことを考えたことに少しだけときめいた。
「例えば何か、これは運が良かったなってことあった?」
「そうっすね、まずこの会社に入社できて、横山先輩にひっついて仕事してたら東京に帰ってこれて、可愛い岡島さんとデートできてます」
「そういうのはいいから、何か鉄板ネタっぽいのないの?」
「うーん、あ、そうだ。夢の中でいつも可愛い女の子と結婚してて幸せなんですよ。全然知らない世界なんだけど、すごくリアルで目が覚めるとガッカリするくらい」
「……」
「あ、やっぱりひきますよね。忘れてくださいっ!」
「ううん、違うの。私もよく夢を見るんだ。めっちゃリアルなやつ」
「へー、やっぱり幸せなんですか?」
「……そうだね。ねえ、私が周りの社員さんにやたらチヤホヤされてること知ってるよね。どう思う?」
「岡島先輩可愛いし、仕事も頑張ってるから当然じゃないですか? 誰かに意地悪されたら絶対僕に言ってくださいよ」
「ありがと」
「あ、でもさっきの夢の話なんですけど、起きるとちょっと罪悪感みたいなのを感じるんですよ。あれなんだろ。せっかくラブラブで幸せなのにな〜」
午後も適当に乗り物に乗ったりお茶をしたり、楽しんで夕方早めに解散することにした。飲んでいきましょうという宝山君に、疲れすぎて明日の仕事に響きそうだから今日はやめておくねと言って別れた。
本当はツクシちゃんのところに連れて行こうか悩んだ。もしかしたら宝山君の前世は婚約者だった人かもしれない。そんな偶然あるのか、いやむしろ必然?
そして、知ってどうするという気持ちもあった。もし彼が婚約者なら彼は幸せに結婚生活を送ったらしい。巻き込まずに夢のままにしておいた方がいいんじゃないかと思った。
また新しい週が始まる。女子会はまだ来週末。しっかり働くぞと気合を入れて、横山と今日の動きについてミーティングをする。
「じゃあ、今日も午後は外で調査にまわるとして……横山?」
ぼんやりしている横山に声をかけ直した。
「え? 悪い。うん、それでいいと思う」
「調子でも悪いの?」
「いや、大丈夫だ。よし、資料まとめるぞ」
そこからはいつも通りの横山だった。さすが仕事のできる男です。見習うところがいっぱい。
予定通りに仕事をこなして、夕方直帰の許可をもらった。
すると、横山が珍しいことを言った。
「ちょっと飲んでいかないか」
「全然いいけど、月曜日から? やっぱりなにかあったよね」
「どこか話しやすい店知ってる?」
「そうね。この近くに半個室みたいなお店があるよ」
私たちは周りの人の話が聞こえづらい席につき、とりあえずビールで乾杯した。
そして、横山が話し出すのを待った。