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今日の横山は変だった。何か悩みがあるなら、同僚として、友人として、そして前世仲間として力になりたいと思った。
「何系の話でも聞くよ。話して」
「そうだな。ありがとう」
「……」
「……夢を見たんだ」
おっと、二日続けて人の夢の話を聞くことになるとは。自分のも入れれば三日連続だな。
「うん。どうだった?」
「完全に日本じゃなかった。俺は将軍的なポジションだったらしい。王族が頭悪くて隣国を攻めようとして待ち伏せされてほぼ完敗だった。自国まで撤退させられながら、俺は自分の死地を探していた。どこかで自害するつもりだったようだ」
「何歳くらいかわかる?」
「割と若かったよ。恋人がいたんだ、まだ二十そこそこの。だから、おれも二十五くらいかなと。で、国に入ったら城は燃えてるし隣国の奴らが国中の女を何台もの荷車に詰め込んでいたんだ。その中には十代の王女たちもいた。そして、俺の恋人も。彼女たちがその後どんな目に遭うかは想像がついた」
「うん」
「だから俺は、自分の生き残った部下たちに全てを託して、荷車の周りにいる敵を倒して回ったんだ。女性たちを守る人間が必要だから、部下たちには手を出さないように言い聞かせて、一人でやりまくったんだ。俺は、結構強かったらしい」
横山がやっと笑った。
「そっか、きっと成功したんだね」
「敵国の助っ人が来る前に、反対側の同盟国へ逃すことができたんだと思う。最期に見たのは逃げていく恋人の泣き顔だったな」
「すごいね。それを一度に見たの?」
「金土日一話ずつ。だから週末休んだ気持ちになれなかった」
「それは大変だったね。今週有給取っちゃったら? 実はね、私も金曜日に最終章って感じのを見たんだ」
「どんなだった?」
「私はね、婚約者に愛されていなかった。ううん、全然ってわけじゃなくて大切にはされていた。でも私の妹と両思いだったらしくてね」
「じゃあ生贄は無理やりとか?」
「ううん。自らだよ。二十五になっても婚約者に抱いてもらえないことに絶望したのかも。あ、そうそう。私が死んだのは二十五歳の誕生日。ちなみに私の誕生日は来月末なの」
「じゃあ、来月過ぎたら普通になんのかな」
「そうだといいんだけど」
「横山も二十五くらいで亡くなったんでしょ。横山はもう誕生日来てるの?」
「いや、実は俺も来月生まれだよ」
「えっ、何日? 私28日」
「俺27日。お先に失礼」
「後一ヶ月でモテ人生にもさよならだね。よし乾杯しよう」
「はい、乾杯」
ツクシちゃんのところには、現実に何かが変わったら行こうということになり、この日はこれでお開きとなった。まだ月曜日だしね。
それから二週間働いた働いた。今夜は待ちに待った女子会。メッセージのやり取りでおおまかなことは報告しあっているけど、みんなそれぞれ肝心な部分はぼかしている。私も、私と横山、宝山君の夢の話まではしていない。
まずは居酒屋で飲んで食べて、ツクシちゃんのところへ行く予定となっている。楽しみだ。
三人集合して、まずは乾杯。
「かんぱーい! さて、まず誰からいく?」
「では……コトリさん! お願いします!」
「はい。ご指名いただきました。コトリ、報告しまぁす」
コトリはプロポーズをしてくれた彼とみっちり話し合ったらしい。元々真面目で緻密な作業が得意な彼は、細かい計画を練りすぎるとよく母親に注意されていたらしい。大雑把なお母様のいうことを聞いて自分の計画と混ぜ合わせて、今回のプロポーズに至ったらしい。
「えっ、待って。あまり意味わかんない」
「だよね。ごめん、説明難しいんだけど、向こうのご家族にもお会いしたんだ」
「おおう、急展開」
向こうのご家族はご両親と妹さんがいて、全員おおらかなタイプでしっかり者のコトリは歓待を受けたらしい。ハンカチがピシッとしているのはお父様が自分のワイシャツのついでにアイロンをかけてくれるから。「お母様とお買い物」は単に荷物持ちを命じられていただけ。
お母様は軽く、
「好きな人がいるなら夜景でも見に行って告白したらー? パパもそうだったものね」
と言っただけらしい。
「うちの息子は、いろいろ考えすぎるところがあるから、放っておくとどこまでも自分の世界にいっちゃうの。ビシッとしめてくれる女の子がいたら助かるわぁ」
とコトリに期待を寄せているらしい。
で、とりあえずお付き合いを始めるということになったと。
「おめでとう!」
「おめでとう! ツクシちゃんの言ってた母親がキーパーソンってそういうことだったんだね」
思う存分尻にしけそうな彼ができてよかったね、コトリ。
「じゃっ、次。サアヤさん、お願いします!」
私は自分の番が来ないようにサアヤにふった。
「あ、私? えへへ。こないだの出版社の彼はやめました!」
「えっ」
「えっ」
予想外の明るい破局宣言に私とコトリは思わず声が揃ってしまった。
「『幼稚園の先生って大切な仕事だとは思うけど、生産性に欠けるんじゃない?』って、転職を勧められたの」
「はぁ?」
「はぁぁ?」
今回は私の方が力強めに怒ったわ。
「で? 何か言い返したの?」
「ううん」
「うそでしょ」
「ビール頭からゆっくりとぶっかけて、クリーニング代と割り勘代置いて帰ったよ」
「あー良かった」
「それでこそサアヤだ」
相手は人の仕事をリスペクトできないダメ男だったかぁ。
「で、奴が怒って立ち上がって向かってきそうだったんだけど、間にさっと立ち塞がってくれた人がいてね。それが、テレビでもたまにインタビューとかされる新進気鋭の作家さんとやらで」
聞くと私でも名前は聞いたことのある人だった。本は読んだことないけど。
「出版社の人間が作家に喧嘩売るわけにいかないし、他のお客さんもあんたが悪いとか色々庇ってくれてね。彼にも話が聞こえてたらしくて、幼稚園の先生、素晴らしい仕事だと思いますって言ってくれて」
「うんうん」
「今度取材させてくれって」
「ズコー」
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