side.若
ライブ最終日。始まる前から、涼ちゃんの顔色が悪いことに気づいていた。
でも、興奮のおかげで涼ちゃん自身は元気もりもりで、元貴と、いけるって判断した。倒れたりしちゃわないように、気を付けて見ておこうと言ってはいたけど…
藤澤「ぁ、え」
涼ちゃんの声、そのあとに続いたガコンという大きな音。元貴を支えたまま、後ろをすぐに振り返ると、倒れた涼ちゃん。
大森「涼ちゃん!どうしたの…⁈涼ちゃん!」
若井「階段から落ちた…⁈涼ちゃん、涼ちゃん!」
スタ「頭打ったみたいです!救急セットお願いします!」
スタ「救急車連絡しました!意識ありますか⁈」
スタ「ない!救急車あと何分⁈」
スタッフさん達が走り回っている。涼ちゃんの顔は真っ青で、頭から血を流して倒れている。呼吸もなくて、死んじゃうって本気で思った。
はっとして元貴を見ると、目を見開いて涼ちゃんを見つめて、過呼吸を起こしている。
涼ちゃんは、スタッフさんのほうが早く対処できる。俺は、元貴を、何とかしなくちゃ。
大森「かは、ひゅ、りょ、ぢゃ、ひゅぅ」
若井「大丈夫。元貴、目、塞ぐね」
大森「かひゅぅ、ひゅ、は」
若井「ゆっくり、俺に、合わせて、呼吸してね。大丈夫だから」
大森「は、ひゅ、わか、ぃ、かひゅ」
若井「うん。ここに、いるよ。大丈夫。はい、吸って、すぅ~」
大森「かひゅぅ、すぅ、ふ、ひゅ」
若井「上手。大丈夫。俺が、いるから。はい、吐いて、はぁ~」
何回か深呼吸を繰り返すと、咳が混じり始めて、最後にはゆっくり呼吸ができるようになった。その後、元貴は気絶したように眠ってしまった。急に過呼吸になって、パニックにもなっただろうし、何よりこの状況で、疲れきってしまったんだろう。
涼ちゃんを見ると、頭から血が流れたまま、医療スタッフさんに処置をされているところだった。
救急車が来たので、元貴を縦抱きして、涼ちゃんの隣に乗り込む。
ぐっすり眠った元貴を向かい合いで膝の上に乗せて、片手で抱きしめる。
もう片手は涼ちゃんの手を握ったけど、びっくりするぐらい冷たくて、腕がガタガタと震えた。
若井「涼ちゃ、やだ…涼ちゃん、」
救急隊「大丈夫ですよ、もうすぐ着きますからね」
救急隊の方が俺のほうを向いて、力強く言ってくれた。「大丈夫」って。それを聞いたら、体から力が抜けた。元貴を起こさないように、声を抑えて号泣する。こんなに泣いたのは久しぶりだった。
涼ちゃんの手を握りしめて、元貴の背中をさすっていたら、病院に着いた。涼ちゃんの顔色は変わらないけど、もう頭の血は流れていなくて、それ以外はよく分からないから、とりあえずお医者さんを信じるしかなかった。
担架に乗せられて運ばれていく涼ちゃんの隣を、元貴を抱いて必死で歩く。涼ちゃんはそのまま、お医者さんたちと一緒に手術室に入っていった。
こんな大ごとにするつもりはなかったのですが…。どうなることやら…
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