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side.若
涼ちゃんが手術室に入った後、近くの椅子に座って元貴を抱きなおす。また向かい合いで膝に乗せて、俺の肩に頭を預けさせる。背中を一定のリズムでトントンすると、小さな震えが止まっていった。元貴は、こうするとよく眠れるもんね。
しばらくすると、スタッフさん達が来た。
スタ「若井さん!…あ、大森さんは…」
若井「しーっ、元貴は大丈夫だと思います。涼ちゃんはそこの中です」
スタ「そうですか…藤澤さん、本当にすいません」
若井「いえ、誰も悪くないですから。あの、ファンの皆さんに連絡と、ライブ放って来てしまったので…」
スタ「そちらのほうはお任せ下さい。この後、若井さん、大森さんはどうされますか?」
若井「できれば3人にしていただけたら嬉しいです。必ず連絡はしますから」
スタ「了解です。連絡だけ、お願いします」
そう言うと、スタッフさん達は心配そうな顔で事務所に戻って行った。彼らがいなければ涼ちゃんはもっと大変なことになっていただろう。本当に感謝しかない。
元貴はぐっすり眠ったままで、たまに小さな声で呻いていた。ぼーっと白い壁を眺めていると、さっきまでの事がフラッシュバックしてきた。
涼ちゃんが倒れる大きな音、走り回るスタッフさん達、泣きながら眠る元貴。
本当に怖かった。
また涙が溢れてきて、元貴をあやす手がガタガタと震える。だめだ、元貴が起きるだろ。俺がしっかりしなきゃいけないのに、涙も震えも止まらない。元貴の小さくて暖かい体が、優しい匂いが俺を包んでくれて、目の前が見えなくなってくる。
お医者さんも言ってたじゃん。「大丈夫」って。
元貴を起こさないように声を抑えながら号泣する。こんなに泣いたのは久しぶりだった。
手術室のランプが消えて、ドアが開いた。勢いよく立ちそうになったけど、元貴がいたのでゆっくり立ち上がる。緊張して、上手く話せない。泣きながら、涼ちゃんの容態を聞く。
若井「あ、の、りょ、ちゃ」
医者「大丈夫ですよ。詳しいことはまたお話しますが、もう大丈夫です」
若井「っ…良がっだ…」
医者「今は麻酔で眠られています。少ししたら起きられると思いますよ」
若井「ありがと、ござ、ます…」
医者「起きられましたら、ナースコールお願いしますね」
若井「ひぐっ…ぅ、はぃ…」
元貴を縦に抱きあげて、お医者さんの後をついていく。すごく安心してしまって、前が見えにくいぐらい涙が溢れる。元貴は俺の服をぎゅっと掴んで少し速い呼吸で眠っている。
お医者さんに案内された病室のドアを開ける。
ここは涼ちゃん専用部屋にしてくれてるらしい。お医者さんにお礼を言って、ベッドの傍に駆け寄る。
涼ちゃんが寝ているベッドの隣に、元貴を抱いて座る。涼ちゃんは頭に包帯を巻いているけど、顔色は良くて、すやすや眠っているように見えた。
若井「涼ちゃん…痛かった、よねぇ…ごめんね…」
俺なんかが分かるわけない痛みだったんだろう。だってあんな大きい音がした。顔色が悪いって感じた時、なんで止めなかったのかな。
涼ちゃん、早く起きてよ。
どんどん大ごとになっていく…あれれ?