第2章〜教えてくれ。俺は何者なのか。〜
私はすぐに看護師に伝え院内を探し回った。
唯華「謙也!どこに行ったの!」
看護師「そんな遠くには行けないはずです。」
看護師総動員で探し回った。
この病院は大型なので広く色々なフロアがある。私は謙也の行きそうな場所を探した。記憶のない彼がいきそうな場所。
記憶を取り戻そうと行きそうな場所。
白杖を当てながら必死に走る。
今は深夜0時。外は暗く月で照らされていた。
私は夜空を見るとふと思い出した。
(謙也は空が好きだった。よく空を眺めていた。)もしかしたら。
私はもしかしたら。と思い、病院から外を眺めれるベランダのような場所に。
すると後ろからドアが閉まる音がした。
私は急いでそのドアを開けた。微かに謙也らしき声がした。目が見えないながら私は
謙也!と叫びながら、走り、謙也を抑えた。
謙也は抵抗をした。
謙也「やめろ。離せ!もう俺が何かわからないんだ!」
唯華「謙也。ごめんね。気づけなくて、1人で抱え込ませて。でも。おねがい。戻ろう?」
謙也「迷惑ばっかかけられない。俺なんて居なくて同然なんだ!」
唯華「そんな事ないよ!私もそうだった。でも謙也に助けて貰えた。私も何も出来なかった。でも今度は私が謙也を助ける!だから、戻ろう?」
謙也は泣きながらごめんと言っていた。
唯華「ごめん。追い込んで。元はといえば私があんなことしなければよかったの。あんなことしなければ、謙也の記憶が消えることもなかった。本当にごめんなさい。」
謙也はなんのことか分からないが泣いていた。自分が思い出せず、責めていた。
そこに看護師が来て謙也を車椅子に乗せて病室に戻した。私もあとをついていこうと立ち上がると謙也が何かを伝えようとしていた。
微かに聞こえた言葉はごめん。それより前。あとは聞こえなかった。
実は私はもうそろそろ目の手術をする。少しでも視覚が戻って、周りがみれるような。
謙也は昔、君の眼になる。って言ってくれた。
充分果たせたよ。でももうその必要はなくなりそう。今度は私が謙也を守るからね。そう心に決めた。
結局謙也に自分がなにか言うことが出来なかった。
私は謙也のいる部屋に向かった。
唯華「謙也。さっき自分が何者なんか教えてくれ。って言ったよね。」
謙也「言った。なんなんだ。」
唯華「あなたは私の彼氏で、私は視覚障害。あなたは私を中学生の頃いじめていた。でも高校になったら一番近くで寄り添って、私のことを第一に思って、私のために事故った。」
謙也「ごめん。何もわからない。」
唯華「大丈夫。ゆっくりと取り戻していこう。焦る必要はないの。」
謙也「そうだな。頑張る。」
唯華「そしてね。私は謙也の顔を見た事がない。でもね。あと少しで目の手術をするの。そしたら謙也の事をもっとまもれるし、謙也のことを持って知れる。だからもう少し我慢してね。」
謙也「目の手術。頑張ってね。」
唯華「ありがとう。頑張るよ。」
私は詳細は決まってないけど手術をすることは決まった。私は全盲。今度する手術は角膜移植。これをすれば改善される。と言っても、手術をしても1ヶ月くらいはかかる。ただ、目が少しでも見えるようになるならいいに越したことはない。謙也のリハビリにも専念できる。
謙也の情緒はだいぶ落ち着いて、いつもの謙也のようになった。
実は病院から私の家まで距離がある。だから私は毎日親に送って貰ってる。歩いていくにはリスクがあるからだ。私は過去に車に轢かれたり、して結構危ない。白杖も何度か壊してる。だから病院まで車で送って貰って、そこからは白杖を使いながら病院内を歩いている。最初の頃は看護師にリードされていたが今は謙也の道に行くまでなら覚えていて、おおよその病院も把握している。だから1人でも行けるようになった。たまに躓いたりすることもあるけど、だいぶ少なくなった。
今日は謙也には会いに行かずに角膜移植についての話を聞きに行った。
医者「角膜移植の成功率は90%と高いですが、見えるようになるまでには多少時間がかかります。個人差はありますがおよそ1ヶ月。遅くて半年くらいかかります。費用はだいたい20万くらいです。大丈夫でしょうか。」
唯華「大丈夫です。見えるようになる保証はあるんですか?」
医者「確実とは言えませんが。人によっては1.0まで回復する人もいれば0.1の人もいます。しかし、全盲と違って周りの景色は見えたりすることは出来ます。」
唯華「そうですか。手術の方お願いします。」
医者「わかりました。手術を行う日ですが。希望とかはありますか?」
唯華「来週の土曜日は可能ですか」
医者「大丈夫です。それでは来週の土曜日に手術を行わせて頂きます。術後は安静して入院となります。また、数週間から数ヶ月は目薬を投与して、メガネやサングラスをかけて目を保護してください。入院期間は1週間を目安にしています。」
私は来週の土曜日に手術をすることに決まった
私は早速次の日に謙也に伝えに行った。
唯華「謙也!来週の土曜日に手術するの。だから、1週間はお見舞い行けない。 」
謙也「そっか。わかった。がんばって。俺もリハビリ頑張る。唯華さんの視力戻ればいいね。」
唯華「そうだね。視力戻ればいいんだけどな〜!」
私は少し期待を抱きながらリハビリを見守った。あと少しで全力サポートできると思うと楽しみで仕方なかった。
時は経ち今日は手術をする日。
少し緊張はするものの楽しみだ。