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第3章〜これが、新しい世界?〜
今日は手術当日
直前になるとやはり不安になってきた。
今まで体験してこなかった新しい世界が、見えるようになる。わくわく。不安50:50って感じ。
謙也は大人しくしていてくれるかな。
角膜移植は30分からものによっては3時間など。あんまり長くは無い。
この機会を逃さないように手術を頑張ろう。
私はオペ室に入り、手術が始まった。
目が見えなかった今まではいいこともあれば悪いこともあった。いい思い出に全てが美化される訳では無いけど、謙也と出逢えたことは良かったな。って思える。今の謙也は記憶がなくて、一から思い出作りになるけど、それはそれでいい気がした。セーブをし忘れたゲームのような。最初は悲しさもあったが次第に悲しさよりも頑張ろ!ていう気持ちが強くなった。
目が見えないことは不便で、白杖を常に持ち歩かないといけないし。遊園地で遊んだ時の観覧車も本当は景色を見たかった。
だから、目が見えるようになったらまた遊園地に行って素晴らしい景色を観覧車の上から眺めたい。もちろん謙也と一緒にね。謙也には謙也の人生がある。でも私が壊してしまった。謙也は励ましてくれた。最初の出会いはいいようすがなく、白杖を壊された記憶しかないけどね笑
そんなこんなで時間が経ち私は見事に成功した。すぐに目は見えなかったが、次第に見えていくとのこと。目のリハビリや、目薬、メガネやサングラスなどで目の保護は忘れないようにしないと。
1ヶ月後になったら見えるようになってるのかな。と考えるとワクワクが止まらなかった。
今までは光を浴びるのが痛かったが、目の手術をしたらこれも楽になれるのかな。
1週間の入院が終わり、私は退院した。今はまだ白杖を使っている。念の為ね。
私は謙也のいる病院に向かった。
それにしても外は久しぶり
唯華「んー!外の空気美味いなー」
大きく息を吸って。大きく息を吐いた。
唯華「全く歩いてなかったからカッチカッチだよ〜。また、ウォーキングしないとだなー」
そんなこんなで病院に着いた。
唯華「謙也〜お久しぶり〜」
謙也「唯華さん。お久しぶり。だいぶ歩けるようになりましたよ。退院も間近とのこと。」
唯華「そう!良かった〜。あ、で、なんか思い出せた?」
謙也「全くです。あ、ただ、自分については分かりました。原西謙也。中学校時代に、虐められた。夜空が好き。」
唯華「うんうん!」
謙也「でも、そこしか分からないです。いじめられた原因もあるんだろうなと思うけど、思い出せないし、あたふた。」
唯華「いいかんじ!ねぇ。謙也。そろそろ空見れるかも知れない!」
謙也「ほんとか?よかった。いつか、空、見に行きましょう。」
唯華「行こう!」
謙也は少しづつではあるが自分については分かってきたみたい。私は嬉しくなった。この調子でどんどん思い出して欲しいなー!という期待を寄せながら、目が見えることを待ち望んでいた。
来月私は誕生日。19歳。謙也はもう既に19歳。
初めてであったのは中1の頃。あの時からもう7年も経った。高校で再会して、高2で付き合って、花火を見て、1年記念日には遊園地。そんなこんなでもう2年目か。
目が見えるようになったら。謙也と夜景を見たりしたい。結婚だってしたい。ただ、それは謙也の記憶が戻らないと。全てじゃなくても、私との関係を。少しでも、少しでもわかってくれれば、それでいい。
1ヶ月が経ち、目が順調回復をし、うっすらだが、見えるようになった。
初めて目がみれるようなった時は、もう。美しかった。
唯華「これが。東京。これが、世界。。」
私は感動をした。目を潤ませた。
唯華「はぁ〜!これが。これが、私が求めてた。新しい世界!」
今まで何も見えなかった暗闇に包まれた、日本。白杖がなければ何も出来ない。私の日本は白黒だった。でも。でもでも、今は、ハッキリと、色がついた日本を。景色を見ることが出来た。白黒で見捨てられた音だけのラジオのような生活が。ペンキが塗られ、テレビのような。明るい。楽しい。そして、美しく眩しい世界が、広がっていた。
唯華「すごい。綺麗。私は、これで、もう。不便な生活をしなくても、いいんだ…」
自然と涙が出た。すぐに謙也に報告に行った。
唯華「謙也!け、けんや。」
謙也「どうした?」
唯華「みえる。」
謙也「え?」
唯華「謙也の顔が。見える。こんな、かっこいい。素顔が。見える。見える!」
謙也「まさか……」
唯華「そう!私。目が見える!」
謙也「おお!すごい!よかった!」
唯華「嬉しい。謙也!これからは全力でできる限りサポートするから!リハビリも、記憶の取戻しも頑張ろう!」
謙也「実は俺も、退院が決まりました!1ヶ月後にはもうこの調子なら退院!」
唯華「そう!よかった!おめでとう!」
私はそう言って、しばらく病院に残り、夜になると帰った。
これが夜空。星が、見える。こんなにも綺麗で広い世界なんだ。
今までは雑音だった車の音も。そこに車が見える。
今までは邪魔だった人の声も、そこには人が見える。
みんなにとって当たり前なこの生活、この景色、この光景が、私にとっては、初めての体験。初めての広い世界。初めての、人生。何事も初めてだらけ。これからの世界が。楽しくなりそう!