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 彼女を知ってからちょうど1年が経った頃、SNSにてこんな書き込みがあった。

「今日の歌枠は重大発表があります。あんまり悪いお知らせじゃないから、楽しみにしててね♡。」

 重大発表、なんだろう?もうすぐあの人の誕生日だから、あの有名なvtuberの事務所と同じように、グッズ販売でも行うのだろうか。

 配信十分前、少しドキドキしながらパソコンの置いてある机に向かう。僕は彼女の話し声も歌も笑顔も大好きだ。だから、仮に僕にとってはあまり興味のないことでも、彼女が重大発表だというのならば気になるし、あとそもそも重大発表なんてなくとも彼女と話したい。

 少し経ってから、彼女の配信が始まった。いつも通りの聞き慣れたあいさつ。でもなんだか、いつもより少し声のトーンが高いような。

「この度、なんとわたくし古城カレンは、正式にアイドルデビューすることになりました〜。パチパチパチパチ。」

 わざわざ口で擬音を言いながら拍手をする彼女はやっぱり嬉しそうだ。僕も嬉しい。ただ一つ気になることがある。僕は少し急いでパソコンのキーボードを叩く、

「vtuber活動は続けるんですか?」

 少しドキドキする。もちろん彼女の夢が叶うのは嬉しいが、話せなくなるのは寂しい。ネットはやはり少し、ラグというのだろうか?送ってから届くのに数秒かかる。彼女が僕のコメントを拾うより先に他のコメントが目に入った。

「おめでとう🎉」

と書いてある。しまったと思った。祝ってから聞けばよかったのに、先に気になることを聞いていた。これで彼女が気にしないといいのだが。そんな事を考えているうちに配信画面に僕の質問が表示された。

「『vtuber活動は続けるんですか?。』あ、そうそうそれなんだけど~」

 ゴクリと唾を飲み込む。いわゆるリアコをすることの悪いところの一つは、好きになった人の存在があまりにも遠い事だ。実際、僕も彼女とはリアルで対面したことはない。本名も、顔も、互いに知らないのだ。

「ちょっと配信頻度は減ると思うんだけど、事務所の意向ではOKだって。今度私のデビュー記念ライブをするから、楽しみにしててね!」

 配信終了後、僕はスマホで「トランスジェンダー アイドルデビュー」と検索した。どうやら彼女は過去に配信で話した通り、トランスジェンダーと公表した上で、ソロアイドルデビューしたらしい。ある芸能事務所のホームページを開いて、「古城カレン」と検索すると、顔写真が載っているプロフィールを見つけた。

陽だまりのような、とても優しい笑顔だった。

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