なのに、
鈍い痛みを腹に受けて呻き、
せめて早く気を失わせてくれと
目をぎゅっと閉じて願った瞬間。
急に周りから、うわっと慌てたような声が上がり、ガシャンとバイクが倒れたような大きな金属音がなり、
ライトが消え、辺りが暗くなった
何が起きたのかと怯えて
思わず目を開こうとした瞬間、
🐣「ひゃあっっ泣」
ふわりと大きな身体に覆いかぶさられて、
強く抱き寄せられた。
🐰「この馬鹿っっ
なにしてんのこんなとこでっ」
その怒ったような声だけで
間違いなく彼だと分かる。
今さっきまでこの人に対して感じていた怒りなど、たちまちどうでもよくなった。
身体中に満ち溢れた安堵で、
子猫を片手に抱いたまま、
大好きな人の首根に我を忘れてしがみつく。
忘れられるはずのなかった優しい香りに、
涙がこぼれた。
ふざけんなっ、と怒り狂った暴走族達が、
グクの背後を何度も力任せに蹴り飛ばしているが、
彼は痛みをいなすように小さく息を吐くだけで微動だにしない。
僕をただ壁に押し付けるように抱きしめて、
守ってくれている。
🐣「怖い、、怖いよっ、助けて、、
グガぁっ泣」
悲鳴のような声を上げてすがると、
グクはあの温かい大きな手で頭を撫でてくれた。
そしてそのまま、
僕の目を塞ぐように、
肩にぐっと顔を押し付させた。
🐰「ジミン、落ち着け。聞こえるか?
大丈夫、助けにきたから。
今だけでいいから俺のこと信じて。
警察も呼んだからね、大丈夫。
大丈夫だよ」
そんなこと言われなくても
グクなら信じられた。
一瞬揺らいでいた好きの気持ちも、
助けに来てくれたって分かった瞬間
この人が好きなんだと、自分にはやっぱりこの人なんだと、疑いようのない確信になる。
ぶっきらぼうな彼とも、
僕を拒絶した彼とも違う、
優しい口調でかけられた言葉に、
堪えていた涙が一気にこぼれる。
🐣「グガっ、、泣、、グガ、、ああっ泣
なんでっ、、泣なんで来てくれたのっ泣」
🐰「うん、頑張ったね、間に合ってよかった。
もう大丈夫。」
彼の言うとおり、
すぐにパトカーのサイレンが近づいて、
慌てたように
うるさいエンジンをかき鳴らして逃げていく、暴走族たち。
到着した警察官に事情を説明する間も、
ちょっとした書類を書かされる間も、
少しも躊躇うことなく、グクはずっと僕を抱き寄せていてくれた。
見ないふりをしていたらしいコンビニの店員までが、ようやく出てきてくれて、
その一連の騒ぎが納まったあと、
誰も居なくなって、
ようやく静かになった駐車場の隅で座り込み、
まだ僕は、しゃくり上げながらグクに抱きついていた。
🐰「お前、、、怪我は?
どこ殴られた?」
確かに蹴られた腹や、背中に違和感はあったけれど、
そんなことより体の震えが酷くて、
痛みを感じない。
🐣「お腹とか、、足とか、、あと頭も、、、
でもなんか、
あんま痛いとこ分かんない、、泣」
こんな曖昧では、
ちゃんと言えよ、と怒られると思ったが、
グクの答えは違った。
🐰「そっか、、こんな震えてるもんな、
大丈夫だよ、、、落ち着いて、、」
🐣「、どして、、」
言っていないのに分かってくれたことに驚いて、思わず声が漏れると、
グクはまた、優しく僕の頭を撫でた。
🐰「うん、どんな感じかだいたい分かるから。今はそれでいい。
でも早く冷やさないと
痛くなるだろうから急いだ方がいいな。」
まるで、怪我を見るのは慣れている、
そんな口ぶり。
夜の仕事は危ない仕事も多いのかな、
なんて勝手に思った。
🐣「グガは、、?
背中、、だいじょぶ、、?泣」
🐰「大したことないから、余計なこと気にするな。
あいつら人殺せない程度の所詮雑魚だったしさ、、警察のおかげですぐ離れてったから。
あの程度でよかったな、、俺はともかく、、
あんな風に囲まれて殴られて、お前は死んでたかもしれないんだから、、」
確かに、鈍器や刃物が出てきたっておかしくなかった。
だから、殴る蹴るしか脳がなかったあの人達は、グクの言うように、
ただ弱いものいじめをして憂さ晴らしをしたいだけの連中だったのだろう。
🐰「どう、、?
ちょっとは落ち着いた、、?」
こくんと頷くと、
そこでようやく、ずっとくっついていた身体を離される。
まだ僕を守るように
後ろの壁に手を着いたまま、
この体を、壁にもたせかけ、楽な姿勢に変えてくれた。
🐰「で、、こんなとこで何してた?
今何時か分かってんの?」
🐣「、、だって、、この子が、、泣」
その時初めて、僕が抱いていた仔猫に気がついたようで、
グクが息を飲んだ。
🐰「息してない、、?」
🐣「うん、、うん、、、、死んじゃった、、泣 ぼくっ、、僕が来てなかったからっ、、泣」
再び泣き出した僕を、少しも面倒な顔をせずに、もう一度頭を抱き寄せて撫でてくれる。
🐰「そんな、、お前のせいじゃないよ、、
それで泣いてたってこと、、?」
こくこくと頷いて、もう一度その首根に腕を回してすがりつく。
それをちゃんと受け入れて、
静かに髪を梳いてくれるグク。
拒絶された時のことなど、
その時の彼とは全く別人であることなど
もう考える余裕もなかった。
ただ、大好きな人の腕の中で、
疲れと悲しみと、
それに、震え上がった恐怖で、
めちゃくちゃに荒れ果ててしまった心を、
どうにか落ち着けたかった。
🐰「あんな殴られてたのに、
この猫のことずっと抱きしめてたの?」
こくんと頷く。
あの容赦ない蹴りや拳が、絶対にこの子にだけは当たらないように、
ぎゅっと腕に包んで離さなかった。
🐰「そんな大事に想ってたんだね、、、
死んじゃうの見るの初めてだった?」
グクは、こんな不安定な僕の気持ちを、
ちゃんと正面から真面目に受け止めようとしてくれているみたいだった。
そしてそれに僕は盛大に甘える。
🐣「うん、、なんにも飼ったことないから、、、」
🐰「そっか、、初めては泣いちゃうな、、
ちょっと猫見せて?
なんかライトつけられる?」
なにをするの分からなかったが、彼に仔猫を預けて、
コートの内ポケットに入っていた携帯を取り出し明かりをつけた。
もちろん離れたくないから、片手で彼の服をぎゅっと掴んだまま。
🐰「こいつの顔照らして、、」
言われた通りにすると、グクは指で猫の瞼をあげて、目を見てるようだった。
その後、もういいよ、と僕に明かりを消させてから、
手の中で仔猫の体を片手で抱いて、もう一方で後ろ足の付け根辺りを指で抑える。
🐰「猫の脈ってさ、こうやって測るの、
知ってた?」
🐣「ううん、、」
🐰「まぁ飼ってなきゃ知らないかㅎ
こいつ、ふわふわしてるし、
小さいから分かりにくいなぁ、、お?」
なにかに気づいたような声をあげたから、
グクの顔をまじまじと見つめる。
🐰「ここ、触ってみ?」
言われた通りに、指を当ててみると、
とく、、とく、、とゆっくりだけど微かに脈を感じた。
🐣「生きてる、、の?」
ぽかんとしてまたグクの顔を見あげると、
彼は口角を上げて微笑み、小さく頷いてみせた
🐰「お前が死んだって思った通りだいぶ弱ってるけど、まだ生きてるよ。
今から身体あたためて治療してやれば何とかなるかも。」
🐣「ほんと?!」
🐰「ほんとだよ。
そうだな、、なんか大きめのタオルとか、持ってる?」
聞かれて、慌ててカバンからハンドタオルを取り出して渡す。
🐰「あ、ちょうどいいじゃん、
使っていい?」
🐣「うん、」
グクは手際良く、子猫の身体をその中にそっとくるんだ。
🐰「ここじゃどうしようもないからさ、
俺の家帰ろ。おぶってやるから。」
そんなこと言われると思ってなくて、またぽかんとしてしまい、
数秒後に言われた意味を理解して慌てる。
🐣「ぼ、ぼく、、明日も仕事だよっ、、
自分の家帰んなきゃ、、」
🐰「そんな状態で家に帰らせられるわけないだろ。帰ってもひとりなんだろ?
今もう夜中の1時なの分かってる?
こっから帰って寝たって、メンタルやられてるし、1人じゃまともな手当もできないだろうし体壊す。
明日は俺の家で、お前とこの猫の、怪我の治療。仕事休め。」
そこまで有無を言わせないように言い切ると、
僕の手に、その大事に抱えていた猫を押し付け、
早く乗れ、とこちらに背中を向けた。
🐰「早く。」
🐣「でも、、」
🐰「お前軽そうだし、大丈夫。」
🐣「あ、、え、えと、、、じゃあ、、この子、、どうする、、?」
🐰「そのリュックに入れてやれない?
流石にやだ?」
死なないでと泣くほど大事な子なんだから、
嫌なわけが無い。
間違っても途中で潰れてしまわないように、
1番上にそっと入れて、
息ができるようにチャックは少し開けたままにしておいた
🐰「ちゃんと入ったか?
大丈夫そうなら早く乗れよ、」
🐣「ほんとに、、いいの?」
🐰「いいから、」
急かすようなその口調が、なんだかちょっと怒りそうな雰囲気を帯びていて、
慌ててその大きな背中におぶさる。
すぐに彼は難なく立ち上がって、
体がふわりと浮いた。
🐣「っ、、//」
🐰「なんか強張ってるけど、、
俺怒ってないから力抜け。 歩きにくい。」
言われて、素直に力を抜くと、
グクは1回背負い直すようにしてから歩き出す。
🐣「あの、、、重くない、、?」
🐰「全然。
てか、華奢なのは分かってたけど、、思ってた以上に軽い、、
そこら辺のミニスカ履いてる女より軽いんじゃねぇの?ちゃんと食ってる?」
ほんとに平気らしくて、
でも、背中の僕を気遣ってくれているのか、
ゆっくり歩いてくれている。
🐣「うん、、食べてるよ、今もご飯買ったとこだったし、、
あんま寝てないからかな、、」
🐰「じゃあ今日まだ食べてないの?
そんな忙しい?」
🐣「う、うん、、
最近はね、、残業ばっかりで、、
まぁその分お金もらってるからいいけど」
🐰「大変なんだな、、」
🐣「そんなことないよ、、」
彼が歩く度に心地よく揺れる振動と、
背中から伝わる、否応なしにこの人は信じていいと思える温かい体温に、
僕はすぐにうとうとしてきてしまっていた。
こてんと肩に頭を預けると、
🐰「やっぱ疲れたか、、ㅎ
いいよ、寝てて。」
🐣「ぁっ、、ごめん、、、、でも、、、」
🐰「15分くらいだし、
着いたら起こしてやるから。」
🐣「うん、、」
🐰「俺はなんもしないからな、
安心しろ。」
そんなことはもう言われなくても、
久しぶりのグクの温もりに心が満たされて安心しきっている。
まどろみ初めた僕がわかったのか、グクが黙り、静かな振動だけが身体を優しく揺する。
程なくして、僕は彼の背中で意識を手放した。
いっつも容赦ないレオの割には
期待を裏切らなかったのでは?😉(自分で言う)
夜の世界の事など知りませんし、猫も犬も飼ったことありません。
変な描写出てきてもそこはまあ、空想の世界ってことでお願いします😌
コメント
19件
もう最高です😭😭 グク来たんだ!ナイスだよ!🥺 グクが来てなかったらジミン… でも来てくれて良かった🥺😭 ジミン優しいね!🥺お母さん泣いちゃu((殴主さん神です!!
.˚‧º·(ฅдฅ。)‧º·˚..˚‧º·(ฅдฅ。)‧º·˚.Reo.さまー更新ありがとうございます~💜🐣も^. ̫.^姫も無事で良かったぁ😭🐰の過去、知りたいような(⚭-⚭ )知りたくないような(∩◉-◉∩)、、、
まってましたあっ!!めっちゃすきですこの物語っ!!続き待ってますっ