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第四十話 君が見ている空
「空は一つしかない。だから、離れていてもつながっていられる。」
八月二十五日。
夏休みも、あと少し。
夜、湊のスマートフォンに
紬からメッセージが届いた。
《ねぇ、明日お願いがあるんだけど。》
《お願い?》
《日本時間の午後六時ちょうど。お互い同じ時間に空の写真を撮らない?》
湊は少し笑った。
《いいよ。》
《約束。》
《約束。》
たったそれだけのやり取りなのに、
明日が少し楽しみになった。
*
翌日。
午後五時五十分。
湊は近くの堤防へ向かった。
夏の終わりを感じさせる風が吹く。
空はゆっくりと夕焼けに染まり始めていた。
腕時計を見る。
17時59分。
あと一分。
カメラを構え、静かに空を見つめる。
*
一方その頃。
遠く離れた街で、紬も屋上へ上がっていた。
頬をなでる風。
少しずつ色を変えていく空。
同じ時間。
同じ約束。
離れていても、どこか隣にいるような気がした。
*
18時00分。
カシャッ。
二人は同じ瞬間にシャッターを切った。
*
数分後。
写真を送り合う。
《送るね。》
届いた二枚の写真を見て、湊は目を見開いた。
日本で撮った空。
海外で撮った空。
場所は違うのに、
夕焼けの色が驚くほどよく似ていた。
《すごい…。》
紬からも同じメッセージが届く。
《同じ空みたい。》
湊は写真を並べて見比べる。
雲の形は違う。
街並みも違う。
でも、
夕日に染まる優しい色だけは、どちらも同じだった。
*
その夜。
二人は久しぶりにビデオ通話をつないだ。
「今日の写真、びっくりしたね。」
「うん。」
「同じ空を見てたんだなって思った。」
紬は少し考えてから微笑む。
「離れてても、不思議と寂しくなかった。」
「私、神崎くんも同じ空を見てるって思えたから。」
湊は静かにうなずく。
「俺も。」
短い言葉だった。
でも、その一言だけで十分だった。
*
通話を終えたあと。
湊は机の上に今日の写真を並べる。
二枚の空。
違う場所で撮った、同じ時間の景色。
その下に、小さく日付を書き添えた。
『8月26日 18:00』
きっと何年経っても、
この写真を見れば今日のことを思い出せる。
そう思いながら、アルバムにそっと貼った。
📷 Photo.040『同じ空の下』
撮影日:8月26日 18:00
空は、
離れた二人をつなぐキャンバス。
見上げるたびに思い出す。
「君も、今この空を見ている。」
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コメント
4件
ならよかったです! なら相手になりましょうか?笑
ああ、これめっちゃ良かった…。離れてる二人が同じ時間に同じ空を見上げるっていう、それだけで成立する尊さがあるよな。写真の色が似てたってとこでグッときたわ。言葉少なだけど、湊の「俺も」の一言に全部詰まってる感じがする。最後のアルバムに貼るシーンで、このエピソードがずっと宝物になるんだろうなって思えた。なんか、自分も誰かとこんな約束したくなったわ。