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第四十一話 それぞれの秋
「季節は変わる。でも、変わらない想いがある。」
九月。
朝の風は少しだけ涼しくなり、
蝉の声もいつの間にか聞こえなくなっていた。
夏休みが終わり、新学期が始まる。
校門をくぐる生徒たちは、
夏の思い出を楽しそうに話していた。
「おはよう。」
蓮が大きく手を振る。
「宿題、終わった?」
「……ギリギリ。」
湊が苦笑すると、美桜が笑い出した。
「結局みんな一緒じゃん。」
去年と変わらない朝。
だけど、去年とは少し違う自分たち。
*
放課後。
写真部では文化祭に向けた
展示作品の準備が始まっていた。
「今年のテーマは――」
顧問の先生が黒板に書く。
『つながる』
部員たちは顔を見合わせる。
「家族でも、友達でも。」
「景色でも、思い出でもいい。」
「一人ひとりが思う『つながる』を写真で表現してほしい。」
部室は静かになった。
テーマはシンプルなのに、
答えは人それぞれだった。
*
帰り道。
湊は先生の言葉を思い返していた。
『つながる。』
真っ先に思い浮かんだのは、
あの日撮った二枚の空。
そして、紬から届く写真。
距離があっても、写真が二人をつないでいた。
「これで撮ってみよう。」
湊はそうつぶやいた。
*
夜。
ビデオ通話の画面には、紬が映っていた。
「文化祭の展示?」
「うん。今年のテーマが『つながる』なんだ。」
紬は少し考えてから笑った。
「神崎くんにぴったりだね。」
「え?」
「だって、神崎くんの写真って、人と人をつないでる気がする。」
その言葉に、湊は少し照れた。
「そうかな。」
「うん。」
「私、神崎くんの写真を見ると、日本を思い出せるもん。」
その一言は、何より嬉しかった。
*
翌日の放課後。
写真部の活動を終えた帰り道。
信号待ちをしている親子がいた。
小さな男の子が、
お父さんの大きな手をぎゅっと握っている。
青信号になると、
二人は笑いながら横断歩道を渡っていった。
何気ない日常。
でも、その手と手は確かにつながっていた。
湊は静かにカメラを構える。
カシャッ。
写真を確認すると、
そこには言葉なんていらない温かさが写っていた。
「これかもしれない。」
文化祭のテーマ。
その答えが、少しだけ見えた気がした。
📷 Photo.041『つながる手』
撮影日:9月3日
手をつなぐことは、
離れない約束じゃない。
「大丈夫。」
その想いを、そっと伝えること。
コメント
4件
読み取ってくださりありがとうございます! はい!待っててください!
みぅです🖤 第41話「それぞれの秋」、読ませてもらいました。 季節が変わって、少しずつ空気が変わっていく九月の感じが、すごく丁寧に描かれていて、読んでて胸がじんわりしました。 写真部のテーマ『つながる』って、湊くんにとっては、紬ちゃんとの距離を越えた写真のやり取りそのものなんだろうなって思うと、すごく温かい気持ちになりました。 あと、最後の親子の手をつなぐシーン。あの「離れない約束じゃない」っていう言葉が、すごく深くて、好きです。 湊くんの写真が、誰かの「大丈夫」を届けるものになるのかなって、続きが楽しみです🌙