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クラピカによって心臓にジャッジメントチェーンの鎖を心臓に刺されたクロロは当分の間、幻影旅団の仲間達に会うことを禁じられていた ヒソカに除念師を探し出すことを頼み、ようやく心臓の鎖を外すことができたクロロは仲間に会いに行けると早速アジトに集合をかけた
除念が終わったクロロは幻影旅団の団長として再び仲間である団員達の元に戻ってきたのだ
久しぶりの再会を祝い、缶ビールを飲んだ。
そしてクロロが団長として仲間の元に戻ってきて数日後、クロロはあることを団員達に告げた
「お前達に会えない間、ずっと考えていたことなのだが……。ようやく決心がついた。これから俺が言うことには反対する者もいるかもしれないが覚悟して聞いて欲しい」
クロロが真剣な表情で団員達に重大なことを言おうとしていた。
「なんだ一体? 何を言うっていうんだ?」
「あの団長がこんなにかしこまっているなんて」
これは普通ではない、よほど重大なことを伝えようとしているのだろうと団員達は身構えた。
「俺は心臓に鎖野郎の念の鎖を刺され、念能力の仕様が一切禁じられた。お前らに会うこともできなかった。しかもあいつはウボォーとパクの命を奪った。だからあいつのことは許せないと思う者もいるだろう」
クラピカのやったことはそれだけ幻影旅団にとっては憎むべきことだった。
「しかし、俺もしばらくお前達と離れて一人で考えていたことがある。実は……俺は鎖野郎を仲間にしようと思う」
クロロは突然そう言い出した。
「は、何言って……?」
薄暗いアジトの中、団員達はざわめいた。その発言に団員達は信じられなかった。
「正気かよ団長!あいつはウボォーとパクを殺したやつなんだぞ!」
幻影旅団の大事な仲間の仇。そのはずなのに、そのリーダーであるクロロがそんな拍子抜けなことを言うのだ。
「俺達が昔からどれだけあの二人との絆が大事だったか知っているはずなのに、あいつらを殺したそんな奴を仲間にしようってのか!?」
「あたしは反対だよ!あいつは絶対許せない!」
団員達は猛反対した。子供の頃からの付き合いのある仲間が殺されたのだ。
ヨークシンシティでウボォーギンが行方不明になったあの頃、団員達はその鎖野郎を探していた
さらにそれだけではない、そのクラピカはウボォーだけでなく、同じく団員であるパクノダの命までもを奪ったのだ
「考えてみろよ。あいつはあのウボォーを倒すくらいに強かったやつなんだぞ。それはそれだけの強さを持つ奴ってことだ。俺にとってはまさに理想的な奴だ。あいつには素質があるそして……俺はあいつの能力が欲しい」
強靭な肉体を持つウボォーギンを倒すほどの力。クラピカには相当な戦闘力があると目を付けたのだ。
「けれど、頭のいいあいつのことだ、きっと俺のスキルハンターで盗むだなんて無理だろう。だから手っ取り早くあいつそのものを仲間にしようというわけだ」
「意味わかんねえよ……。俺達があいつに手出しできなかったのは許して見逃していたわけじゃねえのに」
パクノダが殺されてからクラピカを殺しに行くことができなかったのはクロロの心臓に刺さった念の鎖がクラピカが死ぬことによって死後強まる念でクロロの命が危険になることを恐れたからだ。団長の命がかかっているのだから迂闊な真似はできなかった。
だから団員達はクラピカに手出しすることができなかっただけで二人の命を奪ったことを許していたわけではない。
今すぐにでも大事な仲間を殺した仇をこの手で始末してやりたいくらいだった。
「だから最初に覚悟して聞いて欲しいって言っただろ。当然反対するやつもいるとわかってて俺も覚悟をしていた。だけど俺はこう決めた。あいつが欲しい」
「マジかよ……」
フィンクスとノブナガは納得がいかなかった。
「俺はいいと思う。確かにあの鎖野郎は素質があると思うし。真っ暗になったホテルで団長を攫うことができたしそれだけの知性と体力があるってことは凄腕であることは間違いないし。俺達の仲間になれば役に立ちそう」
頭脳明晰であるシャルナークはそう言った。仲間を殺した恨みよりも有能さを優先したいと。
「シャル!あいつは俺達の仲間を殺したんだぞ」
「そのことは憎いけど、なるべく旅団には一人でも俺達に使える人材なら欲しいよ。今後の活動の為にさ」
シャルナークは自分の感情よりも素質がどうかを考える。
「ワタシはどちでもいいね。どうせ飽きれば殺すだけ。その役はワタシにさせてほしいね」
フェイタンはどうでもよさそうにそう言った。
「あたしもいいと思います。役に立つ人材がいるなら、それは旅団にとってもいいと思います」
「僕も反対はしないかな」
シズクとカルトはそう言った
「ふざけんなよ!お前らはウボォーとパクの思い出がねえからそんなこと言ってんのかもしれねえけど、俺達にとっては大事な仲間だったんだぞ!」
シズクとカルトは旅団結成時からいたメンバーではない。
幻影旅団に入団してからそんなに月日が経っていない二人はウボォーギンとパクノダが死亡してから入団したのだ。
なので子供の頃からの長い付き合いの絆がないのだ。
「ふむ。賛成のやつもいればやはり反対のやつもいるか。当然だな。団長である俺の言っていることも急な話だった」
「そりゃそうだろ!一体どうしちまったんだよ!戻ってきたばかりだっていうのにそんなことを言うだなんて」
「お前達としばらく会うことができなかったからこそ、その間に俺の考えることも変わったということだ」
何を言っても考えを曲げようとしないクロロに団員達は理不尽で仕方なかった
「もういい!俺はそんな考えに反対だ!」
「行こうぜ」
団長であるクロロの言い出したことに納得がいかず、団員達はそれぞれ部屋から出て行った
団員達はクロロのいる場所から離れてノブナガとフィンクスは愚痴を言い合った。
「全く、一体どうしちまったってんだよ。あんなことを言うなんていかれてるぜ」
「もしかしてその鎖野郎にでも操られているんじゃねえのか?それとも何かの念能力による精神操作か?」
「でもあの団長がそんな能力に操られるなんてへまはしねえとは思わねえぜ。洗脳されるだなんてありえねえ。やっぱりあれは正気なのか?」
何を考えているのか全くわからないクロロに、二人は苛ついていた
「団長の心臓に鎖が刺さってなきゃすぐにでもあいつを殺したいと思ってた。やっと徐念できたからその復讐の時が来たと思ったのに、まさか団長があんな発想になるなんて思いもしなかった」
これまで旅団がクラピカに手を出すことができなかったのは死後強まる念によりクロロの心臓に刺さった鎖が発動することを恐れてだった。しかし、念能力による心臓の鎖が外れた今、その問題はなくなった
だからこそ、今はそんなことを考える必要はなくなったはずだった
「団長はあんな奴のどこに惹かれたっていうんだ?それにクルタ族は全滅したと思っていたのに生き残りがいたとは厄介だ。あいつは俺達幻影旅団に仲間の仇だって復讐しようって考えてるかもしれねえのに。だからウボォーとパクを殺したんだろ。争いの芽は潰すべきだと思うぜ」
クラピカの念能力は旅団にしか発動できない、旅団以外の者に使えば死ぬ。そのくらいにクラピカは幻影旅団を殺そうと決心をしていたほどだ
だからこそ、クラピカがあの鎖の能力を発動させればその対象である旅団は殺される
実際にあの強靭な体格のウボォーギンを殺したくらいだ。クラピカの能力は旅団にとっては脅威でしかない
ならば早めに芽を潰すべきだと思っていたのに、当の団長であるクロロが仲間にしたいと言い出したのだ。
「でも、団長が欲しいのはあの鎖野郎そのものじゃなくてあくまでもあの念能力じゃないの?」
ヨークシンシティでもマチは考えていた。ウボォーギンがいなくなった時、幻影旅団はクラピカを探していた。
あの時『団長はおそらくそいつを仲間にしたがってる』とマチは推測した。
クロロはスキルハンターの使い手で複数の能力を奪えば自分の物として使用することができる
その一つのうちに役立つ能力が欲しいのだろう、と
「そんなもん、いつぞやの梟とかいうやつみてえに攫って拷問してでも奪っちまえばいいだろ。なんであいつそのものを欲しいんだ」
「それはわからないけど……」
「はぁー昔からの付き合いだっていうのに、今回ばかりは団長の言ってることは賛同できねえぜ。
まあ、あいつは確かに強かった。あのウボォーをやるくらいだし。だけど、だからこそ厄介な相手だってのにな」
団員達はクロロの考えに不服だった
それからしばらくして、マチはクロロの部屋に行った
鎖野郎を仲間にするというクロロの発言に、いまいち納得がいってなかったからだ。それを伝えようとしに来たのだ
「団長、なんであんなやつ仲間にしたいと思ったのさ。フェイタンはどうでもよさそうだったけど、フィンクスとノブナガは怒ってたでしょ。ありえないよ。あの鎖野郎はあたし達の大事なものを奪ったのに」
マチはクロロにそう詰め寄った
「それに……あいつはクルタ族の生き残り。あたし達を仇だと思ってるんだよ。何をしてくるかわからない。この後に及んであいつへの償いとでもいうわけ?」
マチがそう言うと、クロロは「そうだ」と言った。
「だからこそだよ。俺達があいつにしたことを考えてみろ、あいつに憎まれるのは俺達の方だ。俺達が緋の眼欲しさにやったことが、あいつの恨む元だろう」
これまで人を殺すことに抵抗がなかったクロロがそう言っている。これは違和感しかない。
「そんなことを言うなんて団長らしくない。盗賊のあたし達がそんなこと気にしてどうするのさ。本当に意味わかんない」
「そうか、では理由を話そう」
質問攻めにされ、クロロは理由を話し始めた。
「実は……あいつは女だってことがわかってしまったんだ」
「は……?」
突然の衝撃的な告白、マチは固まった
「あいつが……女?」
信じられなかった。団長であるクロロを一瞬で攫うほどの知能と身体能力に優れているあの人物は男性だとばかり思っていた
ところが、クロロははっきりと『女』だと言ったのだ。
「連れ去られた時、俺はあいつに車に乗せられて、そこで『鎖野郎が女性だとは思わなかった』と言った時、あいつは『私がそう言ったか?』と言った。女性じゃないという意味にもとれるが曖昧にしてるようにも取れる」
あの時のクラピカは受付嬢の服装で女装をしていたし、クロロはそのまま思ったことを口にした。ところが返ってきた言葉はそうだったのだ
「あの後、あいつのことをじっと見てたんだ。あいつはあの受付嬢の服からあの民族衣装に着替えていた。その時。少しだけあいつのさらしが見えた」
クラピカは鎖でクロロを拘束していて常にその鎖を掴んでいた。その間に着替えたのだから、クロロは必然的にクラピカの身体を見てしまっていたのだ
服を脱いだ時に、さらしが見えてしまっていたのである。そこにかすかな胸の膨らみがあった。
「俺はあいつのことを男だと思っていた。だが、あいつは女だった。そして俺はあいつの強さを見た。仲間のことを想う気持ち。意思の強さ、そして精神力。何よりもあの時に間近で見た緋の眼が美しかった。だから俺のものにしたいと思った」
そう語るクロロはやけに表情が笑みを浮かべていた。
「クルタ族に生き残りがいるなんて知らなかった。てっきりあいつらは全員死んだと思っていた。だけど、生き残りがいたんだ。貴重な生きた緋の眼だ。なんとしてもその生き残りを自分の手元に置いておきたい。俺はあの緋の眼を気に入っていた。お前もよく知っているだろう。あいつを最後の一人にしてしまったのは俺達なんだ」
「何それ……あいつに同情でもしたっていうの?」
「同情……か。それは俺にもわからない。ただ、俺はなぜかあいつのことを気に入ってしまった。こんな感情は初めてだ。自分でもなんなのかわからない。あいつのばかりつい考えてしまうんだ。また会いたい、と」
なんということだろうか。これは普通の感情ではない。
クロロは正体が女性であったクラピカに情を持ってしまったというのだ。
これはただごとではない。
「マチ、同じ女のお前ならわかるだろう。あいつの感じた仲間を失った悲しさ、俺達だってそういうこともあっただろう」
「……」
クロロのその言葉に、マチは過去を思い出し、何も言えなかった
「すまない。わかってくれ。理不尽なことを言っているのはわかっている。どうしてもあいつを殺したいと思っているのなら、その時は俺も一緒に殺してくれ。そのくらいに俺は本気だ」
「そんな……!」
異常なまでにクロロは本気だった。
あの人物を殺すぐらいならば自分も一緒に殺してくれ、とまるで命を捧げているかのような口ぶりだ
幻影旅団にとってのクラピカは昔からの付き合いのある大事な仲間を殺した憎むべき相手。見つけたらただでおくつもりはなかった
殺してやるか、あるいは死よりももっと重い罰を与えてやろうかと団員達は思っていた
しかし、クロロは連れ去られた時にクラピカのその瞳の美しさと信念に惹かれたというのだ
「俺達幻影旅団がクルタ族の緋の眼を奪った。あいつはそう思っている。だから、それについてはけしてあいつが許すわけがない。だけど、どうしても俺はあいつに会いに行きたい。無理なことを言ってるのはわかっている。だが……わかってくれ。これは団長命令だと思ってくれ」
「おかしいよ……なんでそこまでして……」
「ああ、自分でも不思議だ。でも、俺の信念を変えることはできない。昔からの付き合いのお前ならわかってくれるだろう?」
クロロの本音を聞いてしまい、マチはそれ以上何も言うことができなかった
つまり、クロロはあの鎖野郎に本気で『惚れて』しまったのだと。
「来週にでも俺はあいつとの交渉に行ってくる。あいつがこんな話に乗るかはわからないが、俺はそれをやらなきゃ気が済まない。急でお前らには悪かったと思っている。仇を仲間にしたいなんて異常だってこともわかっている。でも……俺は諦められない。団長命令と思ってくれ」
これ以上クロロは止めても無駄だ。
団長命令とまで言われてしまえばもう逆らうことはできない
現にクロロ自身が自分の命を捧げる覚悟をしてまで言ってるのだ。
「わかったよ……。でも、あたしは納得してないからね」
マチはクロロとこれ以上話がしたくないと部屋から出て言った。
いつも会議に使っているアジトの部屋に入ると、団員達が武器の手入れや本を読んでいたり各自好きなことをやっていた
「お、マチ。なんだその顔は。団長に何か言われたか?」
マチの深刻な表情を見て、ノブナガはそう聞いた
「団長、本気なんだってさ。どうしてもあの鎖野郎を仲間にしたいって。みんながあいつを殺したいなら、自分も一緒に殺してくれって言ったの」
その発言に団員達は驚きを隠せなかった
「なんだあ!?そんなにも本気なのかよ!」
「ふざけてるぜ!たった一人に、しかも大事な仲間を奪ったようなやつに命を捧げるつもりなのかよ?」
団員達がそれぞれ文句を言い出した
「もうダメだよ。ああなったらもう止められない。これは団長命令だってまで言われた」
団長命令に逆らうことはできない。それは団員達がよくなかっていることだ。
「なんなんだよその頑固な性格は。これじゃウボォーとパクが報われねえ」
「マチ、なんで止めねえんだよ。お前だってあの時は反対してただろう」
マチは理由を話すことにした。
「団長が本気だってわかったからだよ。あの鎖野郎にかなり惚れてる。あいつのことばかり考えちゃうんだってさ」
「惚れてるだあ?団長は同性愛趣味でもあったのかよ」
「違う、あの鎖野郎は女だったんだって」
「何!?」
やはり、団員達もそれには驚きを隠せなかった。
「じ、じゃあ団長はあいつに異性として恋をしちまったっていうのか?なんでよりによってそいつなんかに……」
「団長がまさか異性に惚れるだなんて。そういうのはないと思っていた。でも、さすがにそいつはねえぜ」
「だからびっくりだよ。団長がたった一人の女にそんなに惚れるなんて思わなかったからさ。団長のあの目、本気だった。団長は本気で鎖野郎に惚れてるみたい」
クロロが異性に、しかも仇に恋をしてしまった。
団員達には理不尽でしかなかった。
団長は自分が仇に恋をしてしまったから、自分の命を捧げてもいいというほどなのだ。
「あいつを殺したらあたし達が何をされるのかわからない。もう、今は誰にも団長を止められないよ」
「くそっ!俺達には何もできねえっていうのか!」
納得がいかないとばかりにノブナガはどん、と壁を殴った
こうして団員達は不満を抱えながら日々を過ごしていくことになった
一週間が経ち、クロロがクラピカに会いに行く日を迎えた
「じゃあ、行ってくるからな」
これからクラピカの自宅へ行くというクロロを、団員達は複雑な目で見送ろうとしていた
「すまないな。俺のワガママに振り回される形になってしまって」
クロロとしても、自分の勝手な考えを団員に押し付けてしまったことには申し訳ないと思っていた。
「……俺達はもう反対はしねえ。だけど、その鎖野郎と仲良くするつもりもねえ。本当は殺したいくらいだしな。仇には変わりねえんだ。だが……団長命令は絶対だ。俺達は団長の意思を尊重するしかない。だだし、あくまでも団長命令だからだ。納得したわけじゃねえんだぜ」
「ああ、わかっている。当然だ、俺の勝手なことだったんだ。じゃあ、行ってくる」
団員達に見送られながら、クロロはアジトを出て行った
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