【幼馴染のアノ子は才媛】
[5話]
通学カバンに安西さんとお揃いで
つけていた鈴のキーホルダーを
外して勉強机の引き出しの中にしまう
縁を切ったからもうつける必要ないだろう.と
勉強机の引き出しの中にキーホルダーをしまうとそのまま席に座って
筆記用具と数学の問題集を机の上に出す
『ここは…確か…展開して…』
独り言を言いつつシャーペンを走らせ
数学の問題を解く.
内心では本当に安西さんと縁を切ってよかったのかな…なんて思っていたけれど
問題を解き進めていくに連れて
そんな考えは一瞬で消え去った
『ん~…”ッ…』
疲れが溜まった体を伸ばし
背中を反らす.
それと同時にスマホに着信音が鳴った
『…ん、』
知らない番号だったが
恐る恐る出ると親友のヒナの声が聞こえた
“もしもし楓?…夏帆が、倒れたの…!”
『え、?』
ヒナの焦るような声色が電話越しでも感じられる
安西さんはヒナと帰っていたが
いきなり夏帆が道端で倒れたようだ.
幸いにも通りすがった見知らぬ男性が
救急車を呼んでくれたみたいで
ヒナは私に電話をかけてきたのだ.
“病院の名前教えるから来てくれない?”
『ごめん、私は行けない…勉強中でさ、』
“…、そっか。わかった.”
ヒナはその一言を放つと電話を切った
安西さんには申し訳ないけれど
縁を切ったからには私が見舞いに行く権利なんてちっともないはずだ __
でも、気づけば体が勝手に動いていて
〈楓!どこ行くの?!〉
『ごめん、ちょっと用事!!』
玄関からリビングまで聞こえるほどの声で
母親に伝えてすぐに病院までの道を走る
足を止めずに、走り続けた。
『っは、っは…、夏帆!!』
病院に着けば
息を切らしながら安西さん…いや、夏帆の病室のドアを勢いよく開けた
「…、楓…」
『なんで急に倒れたの…??』
「、大丈夫。ただの貧血みたいだったの」
不自然な笑みで私を安心させようと
〝ただの貧血〟と夏帆は言った
『うそだ 、!…ねぇ、悪性の癌なんだよね、?夏帆.…』
「あーあ、楓にはやっぱり隠せないか、」
『っ、』
なんでこんなに平然に居られるのか
私には理解ができなかった.
「ねえ、楓」
『っ、なに、?』
「吹奏楽部のコンクール…私の分も出てよ」
『…うん、もちろん。』
「楓は泣き虫さんだね〜…」
夏帆は手を伸ばして私の頭を優しく撫で下ろす
暖かくて優しくて.
『ごめん…、私…っ』
「…楓のせいじゃないよ。楓は頑張り屋さんだから無理しすぎないでね?」
『うん、』
「、楓」
『…なあに、?』
夏帆は今までより素敵な笑みを浮かべた
「だいすきだよ」
『…、っ、』
『私も、夏帆のことだーいすき.』
〝これからは2人で人生を歩もうね.夏帆〟
心の中でそう呟くと泣きながら
私も夏帆にむけて微笑んだ
(end)
コメント
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最初の入り方好き。 そして感動。 なんかライバル関係的なことまじでリアルっぽくて(?)好き。