それから10年が経って シンは高校3年生になっていた。
「香月!また告白されて断ったんだって? 」
話しかけてきたのは、同じクラスの英明日香だった。
「……」
「結構可愛い子だったって聞いたけど、もったいないなー」
「……」
「なぁ、お前のタイプ教えろよ!」
「……」
「無視?!」
「……」
「3年間同じクラスの仲じゃん。教えろよ〜お前のタイプ」
「話かけてくんなっ!」
シンは明日香を睨みながら離れた。
「顔と頭は良いのに…性格が…ね…」
シンの背中に向かってそう呟き、明日香は苦笑した。
シンが学校から帰ると隣の家を覗く。
それは今でもシンの日課のようになっていた。
居ないはずの湊をまだ探してしまう。
会いたいという気持ちは10年経った今も変わらなかった。
「居るわけないのに…」
そう呟きながら自宅に向かって歩きだそうとした時、1台のトラックが止まった。
慌ててトラックの荷台の方へ離れる。
助手席から降りて来た男性は
「ありがとうございました」
運転手に礼を言って荷台に近づいてきた。
「!!」
湊は驚いた顔をしてこっちを見ている高校生を不思議に思った。
自分より背の高いその高校生を湊は上から下までまじまじと見る。
(やばい…もろタイプ……)
「こ…こんにちは…」
湊は挨拶をした。
「……湊さん」
名前を呼ばれて湊は驚いた顔をする。
湊はシンを見ると
「えっ…と…ごめん誰?」
10年ぶりに会うシンの姿が湊にはわからなかった。
「慎太郎です…」
「…シン?!」
「お久しぶりです。湊さん…」
「お前こんなに大きくなったのか!あの頃はこんなに小さかったのに」
湊は腰下くらいに手をやる。
「そんなに小さくないですよ。笑」
顔を見合わせて笑う。
「どこのイケメンくんが立っているかと思った。笑」
「湊さんは変わらないですね」
「そうか?もうアラサーだぞ。笑」
「変わりません。あの頃のままです…」
「ありがとうな。シン。お世辞でも嬉しいよ。笑」
「お世辞なんかじゃ!」
「今日からまた、よろしくなシンちゃん」
「えっ!」
「なんだ。迷惑か?」
「迷惑なわけないじゃないですかっ!嬉しいです」
「そーゆ素直な所は昔と変わってねーな笑。」
「湊さん…窓越しに話しした事覚えてますか?」
「そういや、そんな事してたっけ。懐かしいな~」
「はい…」
「あっ、悪いシン。荷物運ばなきゃいけないから…またな」
そう言って湊は行ってしまう。
また湊に会えた喜びがシンの身体(なか)を駆け巡る。
再び溢れてくる感情をシンは抑えきれずにいた。
「よぅシン!」
庭で水やりをしていたシンに湊が声をかけてきた。
「湊さん!」
「お前今から時間ある?」
「あります!」
「庭でバーベキューするんだけど一緒にどう?」
「いいんですか?」
「じーちゃんが張り切って肉買いすぎたんだわ。食いきれないから…」
「行きます!」
「良かった。じゃ、待ってるわ 」
シンは急いで水やりを終わらせると湊の家に向った。
「シン!こっち!」
庭から湊が手招きする。
「慎太郎くん。いらっしゃい」
「お邪魔します…」
湊の祖父母に挨拶する。
「若いんだからいっぱい食べろよ!」
湊の祖父は既に出来上がっているのか上機嫌だった。
「じーちゃん飲み過ぎ…」
湊は呆れて笑う。
シンもつられて笑った。
しばらくすると、祖父母は疲れたからと家に入っていった。
「シン。まだ肉あるぞ!」
「もう、お腹いっぱいですよ」
「若けーのに。笑」
そう言うと、湊はシンの隣に座った。
「そういや、お前まだ水泳やってんの?」
「やめました。中学の時に腰を壊して…」
「そっか…」
「……」
「……」
「……」
「悪かったな…」
「えっ…」
「何も言わずに居なくなって…」
「……」
「俺も色々あったんだわ…」
「……色々…って聞いてもいいですか?」
黙って自分の前から居なくなった理由をシンはずっと気になっていた。
「お前は知らない方がいいよ。大人の事情ってやつ?笑」
「…大人の事情」
「しっかし、お前本当にイケメンくんになったな〜。彼女とか居ないの?」
「…いません」
「いつから?」
「いた事ないです」
「えっ!その顔で?」
「なんすかそれ…?笑」
「俺だったらお前と付き合いたいと思うけどな~…」
「えっ……」
「……えっ?」
「……」
「…冗談だよ!例えば俺が女だったら!の話だ。笑」
(心臓が止まるかと思った…)
シンは高鳴る胸の鼓動を抑えようとしたが…身体が勝手に動く。
シンは笑っている湊の腕を掴んだ。
「シン…?」
「湊さん。俺、あんたの事…」
シンは真剣な眼差しで湊を見つめる。
とっくに自分の気持ちに気がついていた。
好きだ…
そう言ってしまえばこの関係が崩れてしまう…
シンは口を噤んだ。
「シン…腕痛い…」
「あっ…すみません」
シンは湊の腕を離す。
「飲み物持ってくるわ…」
湊は家の中に入って行った。
玄関のドアを閉めると、湊はその場にへたり込む。
(なんだよこの胸のドキドキは…)
さっきのシンの真剣な眼差しが頭から離れない。
(一瞬告白されんのかと思った…)
「はっ…笑。んなわけねぇーだろ……」
湊は独り言のように呟いた。
(どストライク過ぎんだよ…あいつの顔…)
【あとがき】
すみません。手直ししてたら遅くなりました…
ここから始まります。
1話のあとがきでも書きましたが、毎週土曜日に投稿予定です。(あくまで予定です…笑)
それでは、次回作でお会いできますように…
月乃水萌
コメント
13件
最高です!😭👏🏻✨
もうだめです .... 尊すぎてタヒにます ... 私も月乃さんの作品もろタイプです !笑 続き楽しみすぎます ... ✨️