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時々、自分が分からなくなる。
父と母に愛されて、周りの人間に恵まれて成長し、何不自由のない人生。
はたから見たら、何も欠けていない。
全てが理想、なんて言葉は今まで何人に言われたことか。
何も疑わずに18年生きてきた。
でも、ここ最近おかしい。
何かが、足りていない気がする。
何かを忘れている気がする。
その”何か”が、人なのか、ものなのか。
それすら分からない。
でも、確かに言えること。その何かは、きっと、
俺の人生においてすごく大切だってこと
「……斗、…勇斗!」
「え?」
大きく体を揺さぶられた気がして、ビクリと体を震わせる。
目線をあげる。
学生が目の前で俺の顔をのぞき込んでいた。
自分の服に視線を落とすと、自分も制服を纏っている。
え、俺、なんで制服着てんだ?
あ、いや違う。
「さっきから話しかけてんじゃん、お前…、大丈夫か?、」
「おう、ごめん…」
午前8時30分。
そっか、俺、コイツらとたったさっき登校したばっかだ。
今教室か。
いや、制服着てるし。
当たり前だよな。
………やっぱ俺、おかしい。
いつもの光景のはずなのに、何か違う気がする。
……なんだろう。
まるで、この世界が嘘のような……
「ごめん、ちょっとぼーっとしてて、…えと、それで、何だっけ?」
「転校生、来るってよ。俺らのクラス」
「え?まじで?」
「おい、…コイツ全然話聞いてねーよー」
俺の机を囲んでいた仲間にからかうように告げる。
ごめんて、と笑いながら言うと、まあいいよ、と軽めに返される。
そのまま転校生の話で机の周りは盛り上がり始めた。
「転校生さ、男と女、どっちだと思う?」
「俺、女子がいいわ。可愛い女子だったら一番に話しかけに行くね」
「はあ?お前ずるっ!俺にもチャンスくれよ」
「まあ俺は足が長くて綺麗な子なら何でもいいや」
「うっっわ、!でたよ足フェチ。お前やめろって…!」
どんどん話がエスカレートする。
その頃には、先刻感じた異変はもう頭からすっかり抜けていた。
周りの女子がこちらに視線だけを向けながらコソコソと話し始める。
あからさまな嫌悪。
視線が刺さる。
そりゃあ、こんだけでかい声でこんな話してたらそうもなるわな。
「おい…ちょっとそのぐらいにしといたら?」
「はあ?勇斗、なーに今更いい子ぶってんだよ〜。まあでも勇斗君は女の子には困らないからいいよねー。この前はノリノリで乗っかってきたくせにさー」
「ちょっ…!やめろよっ、いつの話してんだよっ」
「うわー怒った〜」
男子高校生のノリが女子には苦痛なようで。
俺まで冷ややかな眼差しを向けられる。
……なんだよ
これが楽しいんだよ、このノリが。
いちいち女子の目なんて気にしてられないんだわ。
そうこうしているうちに、一日の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。
担任の小田先生がガラッと扉を開けて教室に入ってくると、さっきまで騒がしかった教室も静かになり、机に群がっていた奴らも皆各々の席へ散っていく。
「あれ?何か今日いつもより静かだなあ。…あ、もしかして、緊張してる?転校生来るから?」
先生がちょっとだけニヤッと口角を上げて微笑むと、皆から軽く歓声があがる。
「小田せんせー、ホームルームとかいいから、はやく転校生みたいでーす」
そうだそうだー、と賑わいを取り戻す教室。
「はいはい、分かったから。言われなくてもそのつもりですよ」
おおっ、と教室がどよめいた。
「では、入ってきてください」
そう、ドア付近に向かって呼びかける先生。
間もなくドアがガラリと開いた。
入ってきたのは____
すらっとした細身の長身。
多分、180はある。
長い足をズンズン進めて、あっという間に教団の前へ立つ。
そうして正面を向き、クラス全体を見渡した。
すっきりした輪郭。
少し焼けた小麦色の健康的な肌。
爽やかすぎる笑顔。
姿をはっきり確認した瞬間、稲妻に打たれたような電撃が走った。
「なんだー男かよ………」
さっきまではしゃいでいた奴らの落胆の声がぽつぽつ聞こえたけど。
そんなことはどうでも良かった。
にこにこと中心に立つ彼から目が離せなかった。
なんだ、この感じ。
俺がおかしいのか?
だって、俺は、
____思考が追いつくより先に、口と体が動いた。
「…舜太…!!」
だって俺は、こいつのことを知っているんだから。
コメント
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Haru様の新作、待ってました✨ 続きがめちゃくちゃ気になります…! 考察好きなのであれこれ予想していますが、どう物語が展開するのか楽しみにしております😊
開幕とても面白い展開でwakuwakuしています…😏